富士山は5月・6月に山頂へ登れません。2026年も全4ルートは開山前で、初心者が選ぶ時期ではありません。
五合目へ向かう道路が開いていても、山頂登山道の開通とは別です。残雪、凍結、強風に加え、山小屋や救護所を利用できない可能性まで考えなければなりません。
富士山は5月・6月に登れる?2026年の結論
2026年の5月・6月は、富士山頂へ向かう一般登山シーズンではありません。
まず、検索している人が知りたい結論を4点に整理します。
- 5月は吉田・須走・御殿場・富士宮の山頂登山道がすべて開山前
- 6月も原則として全ルートの山頂方向が閉鎖中
- 富士宮ルートは6月23日午前9時に五合目から六合目だけ開通
- 初心者や夏山経験が中心の登山者は、正式な開山後に計画する
2026年の富士山は、吉田ルートと須走ルートが7月1日から、御殿場ルートと富士宮ルートが7月10日から開山しました。
したがって、6月下旬に一部区間を歩ける場合があっても、山頂まで登れるという意味ではありません。
2026年の富士山4ルート開山期間
登山ルート 2026年の開山期間 5月・6月の扱い
吉田ルート 7月1日~9月10日 6月30日まで山頂方向へ通行不可
須走ルート 7月1日~9月10日 6月30日まで開山前
御殿場ルート 7月10日~9月10日 7月9日まで開山前
富士宮ルート 7月10日~9月10日 六合目以上は7月9日まで開山前
富士宮ルート五合目~六合目 6月23日午前9時~11月上旬予定 山頂へは進めない部分開通
開山日は、直前の残雪、登山道の損傷、除雪状況、悪天候によって変更される場合があります。予定日だけで判断せず、実際に通行止めが解除されたことを公式情報で確認する必要があります。
出典:山梨県「令和8年度の富士登山について」、静岡県「富士山の登山ルート情報」、富士登山オフィシャルサイト「富士山登山規制について(2026)」。確認日:2026年8月2日。
ここで注意したいのが、道路と登山道の違いです。
静岡県は2026年5月11日の時点で、富士宮口、御殿場口、須走口の五合目へ向かう県道3ルートを通行可能と案内していました。しかし、その時点では山頂登山道は開山していません。
つまり、次の三つはそれぞれ別の情報です。
- 五合目へ向かう道路が通れるか
- 五合目周辺の散策路が歩けるか
- 山頂へ向かう登山道が開いているか
車やバスで五合目へ到着できると、目の前の山頂にも進めるような感覚になります。
しかし、五合目への到達は富士登山の許可証ではありません。道路のアスファルトが雪から現れても、その上に続く山はまだ冬を抱えています。
開山前の富士山は通行止め?規制とガイドラインの違い
富士登山オフィシャルサイトは、安全上の理由から、開山期間外の五合目から山頂までの登山道を道路法第46条に基づく通行禁止として案内しています。
違反した場合には、道路法上の罰則が適用される可能性も示されています。閉鎖用のフェンスやロープの横を通り抜けられる状態であっても、正式に通行できることにはなりません。
一方で、「開山前は富士山全体に一歩も立ち入れない」と理解するのも正確ではありません。
五合目周辺、御中道、宝永山方面などには、山頂登山道とは別に管理されている区間があります。道路や遊歩道が正式に開放されていれば、開通区間内での散策を検討できる場合があります。
大切なのは、開いている区間と閉じている区間を自分の都合でつなげないことです。
富士山には、夏山期間外の登山に関する安全確保ガイドラインもあります。
ガイドラインでは、夏山期間外に十分な知識や技術を持たない登山者の登山を禁止するとともに、登山計画書の作成・提出、携帯トイレの携行、自己完結できる装備などを求めています。
ただし、このガイドラインは閉鎖された登山道を突破するための許可証ではありません。
道路管理者による通行止めと、登山者が守るべき安全ガイドラインは役割が異なります。登山計画書を提出したからといって、閉鎖区間へ自由に入れるわけではないのです。
この違いは、残雪期の富士山を調べるうえで最も誤解されやすい点だと僕は考えています。
「登山届を出せば登れる」「経験者なら通行止めは関係ない」といった単純な解釈をせず、その日の正式な規制情報を確認してください。
富士山の5月と6月は何が違う?残雪と危険を比較
5月と6月では雪解けの進み方が異なりますが、どちらも一般的な夏山登山の感覚で山頂を目指せる時期ではありません。
違いを簡潔に整理すると、次のようになります。
時期 山の状態 特に注意する危険
5月 上部に広い雪面が残りやすい 凍結斜面、滑落、低温、強風
6月上旬 下部で雪解けが進んでも上部は残雪期 夏道の消失、雪と岩の混在
6月中旬 八合目以上などに急な雪渓が残る場合がある アイゼン歩行、滑落、装備判断
6月下旬 一部区間が開く場合がある 部分開通の誤認、山頂方向への進入
積雪量は、冬の降雪、春の気温、雨、斜面の向き、風による雪の移動で毎年変わります。
前年の写真や個人の登山記録は、危険の種類を学ぶ資料にはなります。しかし、現在の斜面が安全であることを保証するものではありません。
5月の富士山は麓と山頂で季節が違う
5月の富士山麓では新緑が広がり、日中には暖かさを感じる日もあります。
そのため、五合目の駐車場から雪の少ない斜面を見ると、「今年はもう登れそうだ」と感じるかもしれません。
しかし、高度を上げるほど雪面が現れ、朝は硬く凍結し、日中は緩むことがあります。
富士山には転倒を止めてくれる樹木がほとんどない斜面も多く、一度滑り始めると長距離の滑落につながる危険があります。
2026年5月16日、ライターの宗像充さんは御殿場口の太郎坊駐車場を午前3時に出発し、残雪期の富士山を登りました。
下部では砂礫地を歩き、雪が現れた地点からアイゼンを装着。午前10時ごろに山頂へ着くと、富士宮ルート方面から来た登山者や山岳スキーヤーなどが集まり、宗像さんの推定では50人近くが山頂周辺にいたとされています。
ただし、この山行を一般登山者が再現できる事例として読むべきではありません。
宗像さんは大学山岳部で登山を学び、冬季登山や冬の御殿場ルートも経験していました。早朝に出発し、長い御殿場ルートを行動できる体力と、残雪状況を判断する経験を持つ登山者です。
出典:山と溪谷オンライン、宗像充「開山前の富士山は登れないのか? 5月の残雪期に実際に登って考えた」、2026年5月24日公開。確認日:2026年8月2日。
「経験者が登頂した」という結果だけを切り取ると、危険度を読み違えます。
重要なのは、どの装備を持ち、どのような経験があり、何時に出発し、どの条件なら撤退するつもりだったのかです。
6月でも八合目から山頂には雪が残る
6月になると五合目付近では雪解けが進み、夏道が見える場所が増えます。
しかし、富士山は標高差が大きいため、五合目と山頂付近を同じ季節として考えられません。
石井スポーツ大宮店が2017年6月15日に富士宮ルートを歩いた記録では、出発時の五合目は5度、新七合目付近は2度、八合目では0度でした。
八合目の池田館付近から雪が現れ、登山者は残雪期対応の登山靴、前爪付き12本爪アイゼン、ピッケル、ヘルメットなどを使用しています。
九合五勺から山頂へ向かう区間には急な雪渓があり、山頂付近では岩と雪が混在していました。午前7時10分ごろに到着した剣ヶ峰も0度でした。
しかも、この日は晴天で、山頂付近の風も弱い好条件でした。
登頂できた事実より、6月中旬でも冬山装備が使われ、天候に恵まれたから行動できたという点に注目する必要があります。
出典:石井スポーツ公式サイト「【大宮店】山開き前(6月)の富士山に登ってきました(2017/6/15 富士宮ルート)」、2017年6月16日公開。確認日:2026年8月2日。
雪と岩が混在する斜面では、アイゼンを着けたまま岩へ乗ってバランスを崩す危険があります。
反対に、雪が途切れたと判断してアイゼンを外した直後、硬い雪面や凍結箇所が現れることもあります。
装備を持っているだけでは不十分です。
雪質、斜度、岩の露出、疲労、風、下山時刻を見ながら、どこで装備を着脱するか判断する経験が求められます。
僕は残雪期の高所を歩くとき、登りより下りを重く見ます。
登頂時には気持ちが高揚していますが、下山時には脚が疲れ、雪も変化しています。登れた斜面を安全に下れるとは限りません。
開山前の富士山で利用できない施設は?
5月・6月の富士山が危険なのは、雪や強風だけが理由ではありません。
一般登山シーズンに登山者を支える施設や人員が、開山前には整っていない可能性があります。
項目 開山期間中 5月・6月の開山前
山頂登山道 整備・開通後に利用 原則として通行止め
山小屋 ルートごとに営業 多くが営業前
売店・飲料 購入できる場所がある 補給を期待できない
トイレ 山小屋などで利用 閉鎖中の場所が多い
救護所 定められた期間に開設 原則として未開設
案内所 登山者への案内を実施 開設前の場合がある
道標 夏道に沿って確認しやすい 雪に隠れる可能性
避難場所 山小屋などが利用可能 建物があっても入れない
富士登山オフィシャルサイトも、開山期間外は山小屋や救護所が閉鎖され、強風や吹雪などの厳しい気象条件にさらされると注意を促しています。
閉まった山小屋は、そこに建っているだけです。
悪天候になったからといって、扉が開くとは限りません。水、食料、休憩場所、トイレ、医療支援を最初から期待しない計画が必要になります。
自己完結するためには、少なくとも次のような準備が増えます。
- 十分な飲料水と行動食
- 非常食
- 防寒着と予備の手袋
- ヘッドライトと予備電池
- 救急用品
- 携帯トイレ
- 紙の地図とコンパス
- 低温対策をした通信機器と予備電源
ただし、荷物を増やせば安全が完成するわけではありません。
荷物が重くなるほど行動速度は落ち、疲労が増えます。予定より遅れれば、雪が緩む時間帯や午後の天候悪化、日没に近づきます。
携帯電話や登山アプリにも限界があります。
積雪で夏道が消えている場合、画面上のルート線をなぞっても、安全な斜面を選べるとは限りません。現在地が分かることと、そこから安全に進めることは別の能力です。
低温ではバッテリーの消耗も早まります。
スマートフォンは重要な道具ですが、雪山技術、地形判断、撤退判断の代わりにはなりません。
5月・6月に富士山を楽しむ初心者向けの代替案
初心者が5月・6月に富士山を訪れたい場合、山頂にこだわる必要はありません。
正式に開放されている道路、遊歩道、ハイキングコースの範囲で、富士山の季節を感じる方法があります。
候補になるのは、次のような過ごし方です。
- 道路の開通を確認して五合目を訪れる
- 開放済みの五合目周辺を散策する
- 御中道など、その日に通行可能な区間を歩く
- 宝永山方面の正式な開通を待って計画する
- 富士山麓の樹林帯や自然歩道を歩く
- 山麓から残雪の変化を観察する
- 開山後の富士登山に向けて低山で体力をつける
富士宮ルートでは2026年6月23日午前9時に五合目から六合目が開通しましたが、六合目から山頂までは7月10日午前9時まで通行止めでした。
このような部分開通の日には、六合目まで歩けることがかえって誤解を生むことがあります。
「ここまで来られたのだから、少し先も大丈夫だろう」という判断は禁物です。開通区間の終点は、体力に余裕がある人のための目安ではなく、管理上の境界です。
宝永山や御中道も、常に安全な初心者コースというわけではありません。
残雪、落石、濃霧、強風、道路規制によって状況は変わります。出発当日に、道路と歩道の両方について公式情報を確認してください。
山頂へ行かなくても、富士山には十分に触れられます。
五合目では、麓より遅れて訪れる春や、高度によって植生が変わる様子を観察できます。遠くから一つの円すい形に見える富士山が、実際には複数の気候帯を抱えていることにも気づくでしょう。
筆者としては、初めて残雪期の富士山を訪れる人ほど、「どこまで登れるか」ではなく「どこまで正式に歩けるか」を基準にしてほしいと考えています。
その視点があれば、山頂へ行けない一日も失敗にはなりません。
5月・6月の開山前登山をどう考える?
僕は10代から富士山に登り、大学では地理学を専攻して火山地形を学びました。
その後も国内外の高所や残雪の山を歩いてきましたが、装備を持つことと、安全に登れることの間には大きな距離があると感じています。
今回の記事では、2026年8月2日に富士登山オフィシャルサイト、山梨県、静岡県の公表資料を確認し、残雪期の具体例として山と溪谷オンラインと石井スポーツの公開記録を照合しました。
そのうえでの私見は明確です。
5月・6月の富士山頂登山を、夏の混雑を避けるための代替案にしてはいけません。
残雪期登山は、夏山登山の時期を少し早めたものではありません。
雪上歩行、滑落停止、耐風姿勢、積雪下の地形判断、長時間行動、装備破損への対応など、別の技術体系を必要とする登山です。
富士山には、雪上訓練や山岳スキーなどに取り組んできた登山文化があります。
しかし、熟練者が残雪期に活動していることと、一般登山者が閉鎖中の登山道へ入ってよいことは同じではありません。
経験者であっても、道路管理者の通行止め、現地表示、登山計画、気象条件、救助隊への負担を無視することはできません。
今後、無計画な入山を減らすには、規制を強くするだけでなく、情報の見せ方も改善する必要があると僕は考えます。
特に登山口では、次の情報を一つの案内にまとめることが有効です。
- 五合目までの道路状況
- 歩行可能な区間
- 通行止め区間の開始地点
- 雪や凍結など現在の危険
- 営業中の施設
- 緊急連絡先
- 多言語での禁止理由
「道路は開いているが山頂登山道は閉じている」という状態は、初めて富士山を訪れる人には分かりにくいものです。
日本語で「閉山中」とだけ表示しても、山全体への立入り禁止なのか、山小屋の営業期間外なのか、特定の道路が通れないのかを判断できない人がいます。
禁止の強さだけでなく、境界を明確に伝えることが事故防止につながります。
登山者側に求められるのは、山頂直前でも引き返せる判断です。
富士山は山頂が見えやすいため、「あと少し」という感情が強く働きます。しかし、雪面の硬化、装備の不具合、風、体力低下、時刻の遅れが一つでもあれば、残りの距離に関係なく撤退すべきです。
霧に隠れる富士は、人の心の迷いに似ています。
見えない山頂を追いかけるより、自分の力量と帰路を見失わないこと。その判断こそが、富士山と長く付き合うための礼儀だと僕は考えています。
まとめ
富士山は、2026年の5月・6月には山頂登山道が開山前でした。
吉田ルートと須走ルートは7月1日、御殿場ルートと富士宮ルートは7月10日に開山しています。富士宮ルートの五合目から六合目だけは6月23日午前9時に開通しましたが、山頂へは進めませんでした。
五合目への道路が通行可能でも、山頂登山道が開いているとは限りません。
5月の上部には広い雪面が残りやすく、6月中旬でも八合目以上に急な雪渓や凍結箇所が残る場合があります。滑落、強風、低体温症、道迷いに加え、山小屋、救護所、トイレ、売店を利用できない可能性もあります。
初心者や夏山経験が中心の登山者は、5月・6月の山頂登山を避け、正式な開山後に計画してください。
富士山の山頂は逃げません。
登頂できる日を急ぐより、無事に帰れる条件を選ぶこと。引き返した足跡は敗北ではなく、次の山へ命をつなぐ道です。
よくある質問
富士山は5月に登れますか?
2026年の5月は、4つの主要ルートすべてで山頂登山道が開山前でした。高所には残雪や凍結があり、一般登山者や初心者が山頂を目指す時期ではありません。
富士山は6月なら雪がありませんか?
6月でも八合目以上や山頂直下に雪が残ることがあります。2017年6月15日の富士宮ルートでは、八合目から雪が現れ、12本爪アイゼンとピッケルが使われました。
2026年の富士山はいつ開山しましたか?
吉田ルートと須走ルートは7月1日、御殿場ルートと富士宮ルートは7月10日です。いずれも閉山日は9月10日ですが、悪天候などにより一時閉鎖される場合があります。
6月に富士宮口五合目から六合目まで歩けますか?
2026年は6月23日午前9時に、富士宮ルートの五合目から六合目が開通しました。ただし、六合目から山頂までは7月10日午前9時まで通行止めでした。
五合目まで車で行ければ山頂へ登れますか?
いいえ。五合目へ向かう道路の開通と、山頂登山道の開通は別です。道路、遊歩道、山頂登山道の情報をそれぞれ確認してください。
初心者が富士山に登りやすい時期はいつですか?
筆者としては、登山道や山小屋が開き、計画を立てやすい開山期間中を勧めます。梅雨、混雑、雷、台風、山小屋の予約状況などがあるため、特定の時期を一律に安全とは断定できません。
執筆:神楽 岳志(登山エッセイスト|富士山研究家|自然体験ストーリーテラー)


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