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富士山噴火グッズとトイレットペーパー|備蓄で優先するもの

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富士山の降灰に備え、保存水、非常用トイレ、防じんマスク、密閉型ゴーグル、トイレットペーパーを優先順に並べた家庭用備蓄 自然と科学

富士山噴火への備えは、水、非常用トイレ、防じん用品が先で、トイレットペーパーは買い占めず備蓄します。

2026年3月、内閣府と東京都は首都圏の広域降灰対策を具体化する協議を開始しました。富士山噴火では、灰の量が少ない地域でも交通や物流が止まり、生活用品が一時的に入手しにくくなる可能性があります。

富士山噴火の広域降灰対策で何が発表された?

内閣府と東京都は2026年3月25日、富士山噴火による首都圏の降灰被害を具体的に検討する「首都圏における広域降灰対策具体化協議会」の第1回会合を開きました。

協議会には、関係省庁の地方支分部局、東京都の関係部局、埼玉県、千葉県、神奈川県、千代田区、町田市、ライフライン・インフラ関係機関などが参加しています。

検討するのは、東京都をモデルとした降灰分布や影響のシミュレーション、地域の実情に応じた対策、行政や交通・通信・電力などの関係機関が連携する方法です。

今後の協議は、2025年3月に内閣府が公表した「首都圏における広域降灰対策ガイドライン」の改定や、東京都地域防災計画の見直しにもつなげる方針とされています。

また、東京都小平市は2025年12月8日、「富士山の噴火・降灰に備えましょう」という市民向け案内を更新しました。

小平市は、富士山の山頂火口から離れているため溶岩流や火砕流の被害は想定されない一方、市内全域に2~10センチ程度の火山灰が積もる可能性を示しています。ただし、実際の降灰範囲や厚さは、噴火規模や風向きによって変わります。

この発表と更新が意味するのは、富士山噴火を山梨県や静岡県だけの問題として扱えないということです。

首都圏では、火山灰による直接的な健康影響だけでなく、鉄道の運休、道路渋滞、停電、断水、通信障害、店舗への配送停止が同時に起こり得ます。家庭の備蓄も、この都市型降灰を前提に組み直す必要があります。

宝永噴火の「17億立方メートル」は何の量?

1707年12月16日に始まった宝永噴火は、富士山で確認されている最後の大規模噴火です。気象庁によると、南東山腹の宝永火口から軽石やスコリアが噴出し、その日のうちに江戸でも多量の降灰が確認されました。

噴火は同年12月末まで断続的に続きました。内閣府の2026年3月25日の協議会資料では、降灰が16日間継続し、火山灰の総量は約17億立方メートルと説明されています。

一方、気象庁の「富士山 有史以降の火山活動」は、宝永噴火のマグマ噴出量を0.7 DRE立方キロメートルとしています。DREとは、噴出物を元のマグマと同じ密度に換算した体積です。

約17億立方メートルという火山灰の見かけの体積と、0.7 DRE立方キロメートルというマグマ換算量は、測っているものが異なります。数字だけを並べて比較することはできません。

大切なのは、単位の大きさに驚くことではなく、噴火と降灰が一日で終わるとは限らないと理解することです。小平市が食料などを最低3日分、推奨1週間分とし、可能なら過去の噴火継続期間を考慮してそれ以上の備蓄を勧めているのも、そのためです。


富士山噴火でトイレットペーパーは不足する?

一時的な品薄は起こり得ます。ただし、原因は製紙工場の被災だけではなく、買い急ぎ、交通停止、配送遅延が重なることです。

2005年1月1日発行の調査報告書では、当時、富士市で生産される再生古紙トイレットペーパーが全国シェアの65%を占めるとされていました。

この調査は、神奈川県、山梨県、静岡県に本社または事業所を置く製造業の防災管理者を対象に、2003年2月に郵送で実施されたものです。回収票は768社、回収率は38%でした。

ただし、65%は約20年前の特定分野に関する数字であり、現在の富士市におけるトイレットペーパー全体の全国シェアではありません。現在値のように扱うのは不適切です。

より新しい公的情報として、経済産業省の公式広報は2022年9月1日、国内で生産されるトイレットペーパーの約4割を静岡県が生産していると説明しました。

富士市が2025年7月3日に更新した「紙のまち 富士市」でも、衛生用紙は国内屈指のシェアを持ち、市内の製造品出荷額等に占めるパルプ・紙・紙加工品関連の割合は約3割とされています。

一方、富士市単独の最新の全国シェアについて、これらの公的ページは具体的な数値を示していません。そのため、この記事では古い65%を現在の根拠には使わず、静岡県と富士市に製紙関連産業が集積している事実までを確認可能な範囲とします。

品薄は工場停止だけで起きるわけではない

トイレットペーパーが店頭から消えるまでには、いくつもの経路があります。

  • 降灰や鉄道運休で従業員が出勤できない
  • 停電や断水によって製造設備を動かせない
  • 火山灰の混入を避けるため、生産を一時停止する
  • 原料や包装資材が工場へ届かない
  • 道路規制や渋滞で完成品を出荷できない
  • 消費者の買い急ぎで、通常より早く店頭在庫がなくなる
  • 配送が遅れ、次の商品が棚へ補充されない

小平市が参考にしている中央防災会議の2020年4月の報告では、鉄道は微量の降灰でも地上路線の運行が止まる可能性があると想定されています。

道路では、二輪駆動車が乾燥時10センチ以上、降雨時3センチ以上の降灰で通行不能になる可能性があります。それより薄くても、視界不良、スリップ、渋滞、鉄道停止に伴う交通量の増加が生じ得ます。

つまり、遠方の地域で店舗の棚が空いたとしても、「静岡県の製紙工場がすべて止まった」とは限りません。通常より少し多い需要と、数日間の配送遅延が重なるだけでも品薄は発生します。

僕が警戒すべきだと考えるのは、火山灰そのものより先に広がる不安です。誰かが大量に買ったという情報が拡散すると、必要量を確認しないまま店へ向かう人が増え、実際の供給力以上に不足感が強まります。

だからこそ、噴火後の大量購入ではなく、平時の備蓄が重要です。トイレットペーパーは必要な生活用品ですが、命や排泄環境を直接支える水、常用薬、非常用トイレより優先順位は下がります。

※画像はAIによるイメージ

富士山噴火グッズの優先順位と必要量は?

最初にそろえるのは、飲料水、常用薬、非常用トイレです。次に食料、防じんマスク、ゴーグル、電源・照明、衛生用品を加えます。

家庭用備蓄は、珍しい噴火専用品を探すところから始める必要はありません。地震や台風への備蓄を土台に、火山灰から目と呼吸器を守る用品を加えると整理しやすくなります。

優先度 備蓄品 基本的な目安・目的
最優先 飲料水 1人1日3リットルを目安に最低3日、推奨7日分
最優先 常用薬・医療用品 処方日数や受診困難を考慮し、医師・薬剤師にも相談
最優先 携帯・簡易トイレ 1人1日5回、7日分なら1人35回分
高 調理不要の食品 最低3日、推奨7日分。食事制限にも対応
高 防じんマスク 顔に密着し、火山灰の吸入を減らす
高 密閉性の高いゴーグル 目への火山灰の侵入を抑える
高 ライト・ラジオ・電池 停電時の照明と情報収集に使う
高 モバイルバッテリー 通信手段を維持する
中 トイレットペーパー 平常時の消費量を基準に1~2週間分
中 ポリ袋・手袋・衛生用品 排泄物処理と水を使わない衛生管理
中 ほうき・スコップ・丈夫な袋 降灰終了後、自治体の指示に従って除灰する

水は家族人数で計算する

飲料水を1人1日3リットルとすると、大人2人では3日分で18リットル、7日分で42リットルです。4人家族なら7日分で84リットルになります。

この量には、調理に使う水や生活用水が十分に含まれていない場合があります。乳児のミルク、服薬、介護、ペットの飲み水が必要な家庭は、それぞれの使用量を追加してください。

水は重く、場所も取ります。僕は山で、一滴の水が行動範囲と判断力を左右する場面を何度も見てきました。

家庭備蓄でも同じです。見栄えのよい防災用品を先に買い、水を後回しにするのではなく、まず必要量と保管場所を確保してください。

非常用トイレは1人35回分が1週間の目安

内閣府広報誌に掲載された経済産業省製造産業局生活製品課の案内では、成人の平均排泄回数を1日5回として、非常用トイレを1人当たり1週間35回分備蓄することが推奨されています。

人数別に計算すると、次の数量になります。

  • 1人で7日間:35回分
  • 2人で7日間:70回分
  • 3人で7日間:105回分
  • 4人で7日間:140回分

これは単純な目安です。頻尿の人、妊婦、乳幼児、高齢者、服薬によって排泄回数が増える人がいる家庭では、余裕を持たせてください。

購入時は「何箱あるか」ではなく、何回分入っているかを確認します。1箱の入り数は製品によって異なるためです。

また、凝固剤だけでは使用できません。便器にかぶせる袋、汚物を密封する袋、使い捨て手袋、消臭用品、保管場所までを一つの仕組みとして考えます。

実際の使用時に戸惑いやすいのは、袋を取り付ける順番です。便器内の水に排泄物が触れないよう、便器を保護する袋と排泄用の袋を分ける方法がありますが、製品ごとに手順が異なります。

平時に家族で説明書を読み、一度だけ組み立て方を確認してください。便器の大きさに合うか、袋が滑らないか、凝固剤をいつ入れるのか、使用済み袋をどこへ置くのかまで決めておくと、停電した夜にも迷いにくくなります。

トイレットペーパーは何ロール必要?

トイレットペーパーは、家族が普段使う量を基準に1~2週間分を切らさない方法が現実的です。

たとえば家族全体で3日に1ロールを使うなら、1週間分は約3ロール、2週間分は約5ロールです。2日に1ロールなら、2週間分は7ロールになります。

交換した日を芯の内側やスマートフォンのメモに記録すると、家庭の消費量を簡単に把握できます。ダブルかシングルか、在宅時間、乳幼児や介護の有無でも消費量は変わるため、人数だけで一律に決めないほうが確実です。

トイレットペーパーだけを大量に備えても、断水時には水洗トイレを普段どおり使えない可能性があります。先に非常用トイレを人数分確保し、その後で紙を補充するのが正しい順番です。


防じんマスクとゴーグルはどう選ぶ?

マスクは性能表示だけでなく顔への密着性、ゴーグルは火山灰が入りにくい隙間の少なさを確認します。

火山灰は、木や紙が燃えた後の柔らかな灰とは異なります。マグマが細かく砕けた鉱物や火山ガラスの粒子を含み、硬く、とがった形をしていることがあります。

小平市は、火山灰が目に入ると異物感が生じ、こすることで目の表面を傷つける可能性があると説明しています。外出時はゴーグルまたは眼鏡を使用し、コンタクトレンズは外すよう案内しています。

呼吸器についても、大量の火山灰を吸い込むことで鼻やのどに異常が出たり、呼吸器疾患が悪化したりするおそれがあります。ぜんそくなどの持病がある人は、一般的な備蓄一覧だけで判断せず、主治医へ事前に相談してください。

マスクのフィット確認で起きやすい失敗

防じん性能が示されたマスクでも、鼻や頬に隙間があれば、そこから火山灰を含む空気が入ります。

装着時は次を確認してください。

  • 鼻からあごまで覆えている
  • ノーズ部分が鼻の形に沿っている
  • 頬とマスクの間に大きな隙間がない
  • ひもが緩んでいない
  • 息を吸ったとき、マスクが顔側へわずかに引き寄せられる
  • 顔を上下左右に動かしても位置がずれない
  • 無理なく呼吸を続けられる

起こりやすい失敗は、鼻の金具を片手で強く折り曲げることです。中央に鋭い山ができ、鼻の両側に隙間が残ることがあります。両手の指で鼻筋に沿わせるように整えると密着させやすくなります。

成人用をそのまま子どもへ使うと、顔の大きさが合わない場合があります。家族全員を同じ製品でそろえるのではなく、一人ずつ装着して確認することが大切です。

商品名や価格だけで選ぶ必要はありません。規格、使用期限、保管状態、顔への適合を確認し、最新の製品情報はメーカーの公式表示で確かめてください。

ゴーグルは通気口と眼鏡の併用を確認する

ゴーグルは、細かい火山灰が入りにくい密閉性の高いものが適しています。大きな通気口があるタイプは曇りにくい反面、火山灰が入り込む可能性があります。

普段眼鏡を使う人は、眼鏡の上から装着できるかを確認してください。ゴーグルと眼鏡がぶつかる、つるの部分に隙間ができる、長時間で痛みが出るといった問題は、実際に着けなければ分かりません。

ただし、マスクやゴーグルを備えたからといって、降灰中に外へ出てよいわけではありません。東京都の案内では、火山灰が降っている間は、できる限り外出せず自宅にとどまることが基本とされています。

窓やドアを閉め、火山灰が入りやすい隙間を確認し、自治体や気象庁の情報を待ちます。家屋の損壊や火災など別の危険が迫っている場合は、在宅避難に固執せず、自治体の避難情報を優先してください。

※画像はAIによるイメージ

買い占めずに備蓄を完成させるには?

家にある物を数え、不足する最優先品を毎回の買い物で少しずつ追加するローリングストックが有効です。

最初に購入するのではなく、まず在庫を確認します。水や食品だけでなく、非常用トイレの回数、薬の日数、電池の種類、モバイルバッテリーの状態まで書き出してください。

実行手順は次のとおりです。

1. 家族人数と7日分の必要量を計算する
2. 自宅にある備蓄品と数量を数える
3. 水、常用薬、非常用トイレの不足から補う
4. 食料、照明、防じん用品、衛生用品を追加する
5. 古い物を手前、新しい物を奥へ置く
6. 使った分だけ日常の買い物で補充する
7. 半年に一度、期限、サイズ、電池残量を点検する
8. 家族で非常用トイレとマスクの使い方を確認する

収納場所にも優先順位があります。水やトイレットペーパーが避難経路を塞いではいけません。

床下浸水の可能性がある住宅では、すべてを低い場所へ置かないようにします。家具の転倒で取り出せなくなることも考え、水、トイレ、衛生用品を複数の安全な場所へ分けると安心です。

トイレットペーパーは湿気と火気を避けて保管します。かさばるため、必要以上に積み上げると、水や非常用トイレを置く場所がなくなります。

食料は、特別な非常食だけに限定する必要はありません。缶詰、レトルト食品、常温保存できる総菜、普段食べている米や乾麺などを循環させます。

ただし、断水時には調理や食器洗いの水も不足します。最初の数日分には、そのまま食べられる食品や、少量の水で準備できる食品を含めてください。

僕が考える「備蓄の順番」の意味

僕は、備蓄を商品のコレクションにしないことが重要だと考えています。

必要なのは、「断水したら何ができなくなるか」「鉄道と道路が止まったら何日買い物へ行けないか」「家族の薬が切れたらどうなるか」という生活の動きを想像することです。

特に注目したいのは、降灰の厚さと暮らしへの影響が単純には比例しない点です。

小平市が示す想定では、降雨時に3ミリ以上の降灰があると、電線などを支える碍子の絶縁性能が低下し、停電が発生する可能性があります。わずか数ミリでも、鉄道、電気、通信、配送が連鎖的に影響を受けるのです。

灰が薄い地域では、家屋が無事であるため「自分は被災していない」と感じるかもしれません。しかし、都市型降灰で先に止まるのは、人と物の流れです。

そのとき、トイレットペーパーの不足は災害の本体ではなく、供給網が詰まっていることを示す一つの表情として現れます。紙の棚だけを見るのではなく、水、排泄、薬、食事、電源という生活全体を見る必要があります。

富士は、晴れた日だけ私たちの前にある山ではありません。雲に隠れている日にもそこにあるように、噴火リスクも平穏な暮らしの向こう側に静かに存在しています。

だからこそ、不安に押されて買い占めるのではなく、今日使った一つを明日補う。その小さな循環こそが、家庭にも地域にも負担の少ない備えだと僕は考えます。

まとめ

富士山噴火グッズは、飲料水・常用薬、非常用トイレ、食料、防じんマスク・ゴーグル、電源・照明、衛生用品の順で考えるのが基本です。

非常用トイレは、1人1日5回として7日分なら35回分が目安です。トイレットペーパーは、家庭の実際の消費量を測り、1~2週間分をローリングストックします。

富士山噴火でトイレットペーパーが品薄になる可能性はありますが、古い富士市の全国シェア65%を現在値として使うことはできません。

経済産業省の2022年の広報では静岡県が国内生産の約4割を担うとされ、富士市も2025年時点で衛生用紙を国内屈指のシェアを持つ産業と説明しています。工場への降灰だけでなく、交通停止、停電、断水、配送遅延、買い急ぎが重なることを想定すべきです。

参考にした公的資料

  • 内閣府・東京都「首都圏における広域降灰対策具体化協議会 第1回資料1」(2026年3月25日)
  • 小平市総務部防災危機管理課「富士山の噴火・降灰に備えましょう」(2025年12月8日更新)
  • 内閣府「首都圏における広域降灰対策検討会 報告書」(2025年3月21日公表)
  • 中央防災会議「大規模噴火時の広域降灰対策について―首都圏における降灰の影響と対策―」(2020年4月7日公表)
  • 気象庁「富士山 有史以降の火山活動」
  • 富士市「紙のまち 富士市」(2025年7月3日更新)
  • 経済産業省公式広報「9月1日は防災の日 トイレットペーパーを備蓄しましょう!」(2022年9月1日)
  • 内閣府広報誌「ぼうさい」第111号「トイレ備蓄忘れていませんか?」

よくある質問

富士山噴火に備えてトイレットペーパーは何ロール必要ですか?

家族が普段1~2週間で使う量を実際に測り、その数量を切らさないよう補充してください。家族全体で3日に1ロール使う場合、2週間分は約5ロールです。

トイレットペーパーと非常用トイレはどちらが先ですか?

非常用トイレが先です。1週間分は1人35回分を目安とし、処理袋、凝固剤、手袋、消臭用品も一緒に準備します。

富士山噴火用のマスクは普通のマスクでもよいですか?

火山灰対策では、防じん性能が確認でき、顔との隙間が少ないマスクが適しています。性能表示だけで決めず、鼻、頬、あごに密着するかを平時に試してください。

執筆:神楽 岳志(登山エッセイスト|富士山研究家|自然体験ストーリーテラー)

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