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2023年の富士山登山を振り返る|混雑・規制・登山者数の記録

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富士登山

2023年の富士山では22万1322人の登山者が確認され、週末の混雑、弾丸登山、下山中の遭難が大きな課題となりました。

登山者数はコロナ禍前の2019年の93.9%まで回復し、前年の2022年から約38%増加しました。なかでも吉田ルートに全体の約62%が集中し、危険時の進行規制から翌年の人数管理へ移る転換点となったシーズンです。

2023年の富士山登山者数は何人だったのか?

2023年の富士山登山者数は、4ルート合計で22万1322人でした。

環境省が2023年9月19日に公表した「2023年夏期の富士山登山者数について」によると、各登山道の開山日から9月10日までに、八合目付近のカウンターを通過した登山者は次のとおりです。

登山ルート 2023年登山者数 全体に占める割合 2019年比
吉田ルート 137,236人 約62.0% 91.5%
須走ルート 19,062人 約8.6% 94.3%
御殿場ルート 15,479人 約7.0% 126.6%
富士宮ルート 49,545人 約22.4% 93.1%
合計 221,322人 100% 93.9%

コロナ禍前の2019年は23万5646人、前年の2022年は16万145人でした。

つまり2023年は、2019年より約1万4300人少ない一方、2022年からは約6万1200人、率にして約38%増えたことになります。

開山日は、山梨県側の吉田ルートが2023年7月1日、静岡県側の須走・御殿場・富士宮ルートが7月10日でした。集計終了日は、いずれも9月10日です。

環境省は各ルートの八合目付近に赤外線カウンターを設置し、上りと下りを識別しながら通過人数を計測しています。

2023年の設置地点は次の4か所でした。

  • 吉田ルート:太子舘付近
  • 須走ルート:見晴館付近
  • 御殿場ルート:砂走館付近
  • 富士宮ルート:池田館付近

2023年は4ルートとも調査期間中の欠測がありませんでした。

ただし、22万1322人は、富士山を訪れた観光客全体の人数ではありません。

五合目を観光しただけの人、八合目まで到達せずに引き返した人、カウンター設置地点を通過しなかった人は、この数字にそのまま含まれない可能性があります。

また、御殿場ルートは2019年比126.6%となっていますが、2019年には須走ルートと御殿場ルートで数日間の欠測がありました。単純に「人気が約1.27倍になった」と断定せず、測定条件の違いを含む参考値として読む必要があります。

僕は山梨県富士吉田市で富士山を見ながら育ち、大学では地理学と火山について学びました。その経験からも、登山統計を見るときは人数だけでなく、どこで、いつ、どのように計測した数字なのかを確認することが欠かせないと考えています。


2023年の富士山で混雑した日はいつだったのか?

2023年の混雑は、吉田ルートと土日祝日に強く集中していました。

4ルートを合計した1日当たりの平均登山者数は、平日が2657人、土日祝日が4494人でした。

休日の平均は平日の169%で、1日当たり約1800人多く登っていた計算です。

ルート別の平日平均と休日平均は、次のようになっています。

  • 吉田ルート:平日1615人、休日2487人
  • 須走ルート:平日278人、休日398人
  • 御殿場ルート:平日168人、休日412人
  • 富士宮ルート:平日596人、休日1197人

御殿場ルートでは、休日平均が平日平均の約2.45倍に達しました。富士宮ルートも、休日には平日のほぼ2倍となっています。

1日当たりの登山者数が多かった上位5日は、すべて土曜日か日曜日でした。

順位 日付 曜日 4ルート合計
1 2023年7月16日 日曜日 7,221人
2 2023年8月12日 土曜日 6,405人
3 2023年7月29日 土曜日 6,301人
4 2023年9月2日 土曜日 5,885人
5 2023年8月5日 土曜日 5,638人

最多となった7月16日は、吉田ルートで3974人、須走ルートで599人、富士宮ルートで1860人が確認され、それぞれのルートでもシーズン最多でした。

御殿場ルートの最多日は8月6日の日曜日で、1011人です。

年間の利用者が最も少ない御殿場ルートでも、特定日には平日平均の約6倍が通過していました。登山者の総数が少ないルートであっても、日にちを選ばなければ混雑を避けられるとは限りません。

吉田ルートには、4ルート合計の約62%に当たる13万7236人が集中しました。

富士山全体の登山者数が2019年を下回っていても、一つの登山道へ人が偏れば、狭い岩場や山小屋前では強い滞留が発生します。

2023年の問題を端的に表すのは、「22万人」という総数だけではありません。

  • 約62%が吉田ルートを利用した
  • 休日平均は平日の1.69倍だった
  • 混雑上位5日がすべて週末だった
  • 八合目付近では時間帯による集中も確認された

環境省の時間帯別データでは、吉田ルートの八合目付近で16時台に大きな通過の山があり、23時台にも人数が増えていました。

ただし、この時間は五合目を出発した時刻ではなく、八合目付近のカウンターを通過した時刻です。

23時台に通過した人の全員が弾丸登山者だったとは判断できません。山小屋で休息した後に出発した人や、余裕を持った計画で夜間に移動していた人が含まれる可能性もあります。

2023年の混雑は「年間何人登ったか」よりも、同じ場所、同じ日、同じ時間へどれだけ集中したかによって危険度が高まったと見るべきでしょう。


2023年に問題となった弾丸登山とは?

弾丸登山とは、十分な休息を取らず、山小屋に宿泊しないまま夜通しで山頂を目指すような登山行動を指します。

法律上の一律な定義ではありませんが、富士山の行政機関や安全啓発では、休息や高度順応が不十分なまま夜間に登る行為を説明する言葉として使われています。

五合目へ到着した直後から登り始め、深夜から未明に八合目以上へ進み、御来光に間に合わせようとする行程が代表的です。

弾丸登山が問題視される主な理由は、次の三つです。

  • 標高に身体を慣らす時間が不足しやすい
  • 睡眠不足や疲労によって転倒しやすくなる
  • 夜間の低温、強風、雨にさらされる可能性がある

一方で、2023年の環境省資料には、弾丸登山を行った人の確定人数は掲載されていません。

23時台や未明に八合目を通過した人数は確認できますが、カウンターだけでは山小屋に宿泊したか、何時間休息したか、何時に五合目を出発したかまでは分からないからです。

したがって、「2023年には弾丸登山者が何人いた」と正確な人数を断定することはできません。

確認できるのは、夜間に登山道を移動する人が一定数存在し、山梨県が週末やお盆の夜間に巡回指導員を配置していたことです。

山梨県の2023年度の安全対策資料では、弾丸登山者などへの指導を目的として、週末やお盆の夜間に五合目以上へ巡回指導員2人を配置しました。特に登山者が増えるお盆の日中には、富士山レンジャーを含む巡回指導員2人を追加しています。

御来光前の渋滞対策として、未明から朝にかけて八合目以上へ安全誘導員を3~5人配置しました。

さらに、吉田口と須走口へ分かれる下山道の分岐点にも安全誘導員を置き、道迷いの防止を図っています。

この事実から分かるのは、2023年の弾丸登山が単なる「登山者のマナー問題」ではなく、夜間の人流、救護体制、山小屋の収容力を含む受け入れ側の課題になっていたことです。

山小屋の予約が取れなければ、登山日を変更する、別ルートを検討する、登頂を見送るという判断が必要です。

宿泊場所がないまま「せっかく来たから」と夜通し登る計画へ変えることは、登山者本人だけでなく、救護所や山小屋、ほかの登山者にも負担を広げます。


2023年の富士山ではどのような登山規制が行われたのか?

2023年の吉田ルートには危険時の進行規制がありましたが、一律の人数上限や義務的な通行料はありませんでした。

山梨県は2023年8月10日、「富士山吉田口登山道の登山規制について」を公表しました。対象期間は8月11日から9月10日までです。

登山道に多数の人が滞留し、転倒や落石によって登山者の安全が脅かされる危険性が認められた場合、登山者の進行を一時的に規制する方針が示されました。

現地の安全誘導員などから得た情報を基に山梨県が危険性を判断し、県警へ要請したうえで、現場での広報や進行調整を行う仕組みです。

登山そのものを一律に中止させる制度ではなく、著しい混雑によって具体的な危険が生じた場合に発動する安全措置でした。

そのため、2023年について次のように表現するのは、いずれも正確ではありません。

  • 「2023年には登山規制がまったくなかった」
  • 「2023年から1日4000人の上限があった」
  • 「2023年には全員が通行料を支払った」

2023年に設けられたのは、危険な滞留が生じた場合の条件付き進行規制です。

一方、1日4000人の上限や時間帯規制、義務的な通行料は、2024年シーズンへ向けて具体化された制度でした。

山梨県は2023年12月20日の知事会見で、吉田ルート五合目へのゲート設置、人数上限、時間帯規制、通行料などを含む安全対策の骨子案を示しました。会見では、2023年度に六合目の通過者が4000人を超えた日が5回あったことも説明されています。

その後、関係機関が2024年3月28日に示した「富士登山オーバーツーリズム対策パッケージ」では、吉田ルートに次の対策を導入する方針が示されました。

  • 1日当たり4000人の登山者上限
  • 午後4時から翌日午前3時までの通行規制
  • 1人当たり2000円の通行料
  • 五合目登山道入口へのゲート設置

2023年は、現地判断による一時的な進行規制から、ゲートを使った制度的な人流管理へ移行するきっかけになった年です。

僕はこの変化を、富士山の受け入れが「注意を呼びかける段階」から「入山する人数と時間を管理する段階」へ移ったものと見ています。


2023年の富士山では遭難が何件発生したのか?

静岡県側の富士山では、2023年の1年間に75件、85人の山岳遭難が記録されました。

環境省は2023年9月19日の資料で、夏山シーズンに低体温症、高山病、けがなどが頻発し、例年と同様に多くの救助要請があったと報告しています。

ただし、この資料には富士山全体の救助要請件数は掲載されていません。

富士山は山梨県と静岡県にまたがり、警察、消防、救護所、山小屋など複数の機関が対応しています。「山岳遭難」「救助要請」「傷病者」では集計対象も異なるため、別の資料にある数字を単純に合計することはできません。

具体的な統計として確認できるのが、静岡県警察本部が2024年2月に公表した「令和5年中における山岳遭難の概況」です。

この統計は夏山期間だけではなく、2023年1月から12月までの1年間に、静岡県側で警察が取り扱った山岳遭難を対象としています。

項目 2023年の静岡県側富士山
発生件数 75件
遭難者数 85人
死亡 5人
行方不明 0人
重傷 9人
軽傷 15人
無事救助 56人

前年と比べると、発生件数は19件、遭難者数は26人増加しました。

遭難者85人の主な態様は、病気28人、転倒21人、道迷い15人、疲労12人、滑落3人、転落1人、その他5人です。

特に注目したいのが、下山中の事故です。

富士山で転倒した21人のうち18人、約85.7%が下山中でした。疲労による遭難12人も、全員が下山中に発生しています。

静岡県警察は、登りで体力を使い切り、下山時に足へ力が入らなくなって転倒したり、行動不能になったりする事例が目立ったと分析しています。

また、静岡県内で2023年に確認された低体温症と高山病の遭難者17人は、全員が富士山で発生していました。

富士山五合目は、吉田ルートで標高約2300メートル、富士宮ルートで約2400メートルに位置します。車やバスで短時間に高度を上げた後、休息せずに登れば、高度へ身体が慣れる時間を取りにくくなります。

頭痛、吐き気、強い倦怠感などが出た場合は、山頂を優先せず、それ以上高度を上げない判断が重要です。

夏であっても、富士山の高所では雨と強風によって体温が奪われます。森林限界を超えると雨風を避けられる場所が限られるため、上下に分かれた雨具、防寒着、予備の衣類が必要です。

静岡県警察は、遭難防止に必要な装備としてレインウェア上下、予備の飲食物、ヘッドライト、携帯電話と予備電池などを挙げています。登山計画を家族と共有し、警察や登山届を扱うサービスへ提出することも推奨しています。

※画像はAIによるイメージ

2023年の富士山登山が転換点となった理由

筆者としては、2023年は登山者数の回復よりも、登山者の集中を従来の方法では管理しきれなくなった点が重要だったと考えます。

4ルート合計の人数は、2019年より約1万4300人少ない22万1322人でした。

それでも強い混雑が問題となったのは、登山者が吉田ルート、週末、御来光前後の時間帯へ偏ったからです。

富士山の受け入れ能力は、単純な登山者数だけでは判断できません。

僕は、少なくとも次の三つを分けて考える必要があると思います。

第一は、登山道が安全に通過させられる人数です。

狭い岩場や山小屋前で列が止まると、無理な追い越しや接触、落石、転倒の危険が高まります。同じ人数でも、時間を分散できれば負担は変わります。

第二は、山小屋、救護所、安全誘導員が支えられる人数です。

登山者だけが増え、宿泊枠や救護体制が追いつかなければ、山小屋を予約できなかった人が無理な夜間登山を選ぶ可能性があります。

第三は、登山計画に残された余裕です。

天候の悪化や渋滞で予定が遅れたとき、登頂を諦めて引き返せるか。下山用の体力や水、防寒着を残しているか。こうした余白が安全を左右します。

2023年までの対策は、安全指導、巡回、現地での進行調整など、登山者の判断と現場対応に依存する部分が大きいものでした。

しかし、登山者数の急回復と局地的な混雑を受け、2024年にはゲート、人数上限、夜間規制、通行料が導入されることになります。

この流れを見ると、2023年は「人が戻った年」というより、富士登山を自由な人流のまま受け入れることの限界が明確になった年と評価できます。

ただし、人数上限を設けるだけですべての問題が解決するわけではありません。

4000人未満でも、同じ時間帯に多数の登山者が八合目へ集中すれば渋滞は起こります。安全性を高めるには、日別だけでなく、ルート別、時間帯別の混雑予測を登山者へ分かりやすく伝えることが必要です。

登山者側にも選択肢があります。

  • 土日やお盆を避けて平日に登る
  • 吉田ルート以外の特徴を調べる
  • 山小屋を確保してから交通手段を予約する
  • 五合目で休息し、体調を確認する
  • 悪天候や体調不良時は登頂を見送る
  • 山頂到着時に下山用の体力を残す

富士山では、山頂へたどり着くことだけが成功ではありません。

僕が何度も登る中で強く感じてきたのは、登頂の喜びより、下山時に判断力を保つ難しさです。霧に隠れる富士が心の迷いに似ているように、山頂が近づくほど「ここまで来たのだから」という思いは強くなります。

それでも、引き返す判断を失わないことが、無事に帰るための最も大切な技術です。


まとめ

2023年の富士山では、各ルートの開山日から9月10日までに、八合目付近で合計22万1322人の登山者が確認されました。

2019年の93.9%まで回復し、2022年からは約38%増加しています。吉田ルートには全体の約62%が集中し、休日平均は平日の169%でした。

混雑上位5日はすべて土曜日か日曜日で、最多は7月16日の7221人です。

弾丸登山者の確定人数は公表資料から判断できませんが、夜間の八合目通過者が確認され、週末やお盆には巡回指導員が配置されました。

吉田ルートでは2023年8月11日から9月10日まで、危険な滞留が生じた場合の進行規制が用意されました。ただし、2023年には一律の1日上限や義務的な通行料はありません。

静岡県警察の年間統計では、静岡県側の富士山で75件、85人の山岳遭難が発生しました。転倒21人のうち18人、疲労による遭難12人の全員が下山中だった点は、登頂後にも大きな危険が残ることを示しています。

2023年の教訓は、富士山へ来る人を単純に減らすことではありません。

危険な場所、日、時間帯への集中を避け、休息と下山の余力を確保することです。山頂から無事に戻り、家へ帰るところまでが富士登山なのです。


よくある質問

2023年の富士山登山者数は何人でしたか?

環境省の八合目付近における調査では、4ルート合計で22万1322人でした。

内訳は、吉田ルート13万7236人、須走ルート1万9062人、御殿場ルート1万5479人、富士宮ルート4万9545人です。

2023年の富士山で最も混雑した日はいつですか?

4ルート合計では、2023年7月16日の日曜日が最多で、7221人が確認されました。

登山者数が多かった上位5日は、すべて土曜日または日曜日でした。

2023年に富士山の人数規制や通行料はありましたか?

2023年の吉田ルートでは、危険な滞留が生じた場合の条件付き進行規制がありました。

ただし、1日4000人の上限や義務的な通行料、夜間のゲート閉鎖は2024年に導入された制度であり、2023年には実施されていません。

2023年の弾丸登山者は何人でしたか?

公表資料には、弾丸登山者の確定人数は掲載されていません。

八合目付近の夜間通過者数だけでは、山小屋に宿泊したか、十分な休息を取ったかを判別できないためです。

執筆:神楽 岳志(登山エッセイスト|富士山研究家|自然体験ストーリーテラー)

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