2026年現在、富士山は夏期のマイカー規制により原則としてバイクの乗り入れができませんが、標高1450mの「御殿場ルート」のみ例外としてアクセス可能です。さらに2026年は、通行料や入山規制といった富士登山全体の最新ルールも適用されるため、事前の把握が不可欠です。
富士山へツーリングに行きたいと考えるライダーにとって、夏のアクセス問題は最大の関心事です。
どこまでバイクで登れるのか、駐車場や新たな入山料はどうなっているのか、そして若者たちが切り拓いた実証実験とは何だったのか。
この記事では、富士山の自然と歴史を研究する僕が、最新の通行規制ルールから、バイクだからこそ味わえる富士山の魅力、そして私たちが知るべき2026年の富士登山の全貌を詳細に解説します。
富士登山では、「何を持っていくか」以上に「どう揃えるか」で準備の負担が大きく変わります。
購入とレンタル、どちらが自分に合うのか迷ったら、装備選びで後悔しないための考え方をこちらの記事で整理しています。
富士山へバイクで登る!夏季マイカー規制と2026年の最新ルール
夏山シーズンが到来すると、富士山は国内外から数十万人もの登山者を迎え入れます。
この時期に必ず立ちはだかるのが、各登山口へ続く道路の「マイカー規制」と、近年導入された厳格な入山管理ルールです。
バイク乗りの間でもよく議論になりますが、排気量を問わず、原動機付自転車を含むすべてのバイクがこのマイカー規制の対象となります。
「バイクなら端を走れるから良いのではないか」という例外は一切認められていません。
かつての日本が高度経済成長に沸いていた頃、誰もが車やバイクで高みを目指そうとした時代がありました。
その結果、五合目の駐車場は排気ガスに包まれ、麓から続く大渋滞の列は深夜まで解消されなかったという歴史があります。
車の排熱や排気ガスによって山の静寂は失われ、道路沿いの貴重な高山植物が息絶えていくという深刻な環境破壊が起きました。
その危機感から生まれたのが、現在の厳格なマイカー規制なのです。
さらに2026年現在、富士山ではオーバーツーリズム対策および安全確保のため、各登山道での通行料や入山管理システムが本格運用されています。
吉田ルートなどでは通行料(または保全協力金等の設定)や、山小屋宿泊者以外の夜間規制(14時〜翌3時の通行制限など)が導入されており、単にバイクで麓の駐車場まで行ってそのまま登山道へ向かうというスタイルにも大きな変化が生じています。
2026年の最新情報に基づく、各主要ルートのマイカー規制期間は以下の通りです。
- 吉田ルート(富士スバルライン)
2026年7月3日(金)18:00 ~ 9月10日(木)18:00
- 須走ルート(ふじあざみライン)
2026年7月1日(水)9:00 ~ 9月10日(木)18:00
- 富士宮ルート(富士山スカイライン)
2026年7月10日(金)9:00 ~ 9月10日(木)18:00
この期間中、バイクで富士山を目指す場合は、麓の指定駐車場に愛車を停め、シャトルバスやタクシーに乗り換えることになります。
駐車場にバイクを停める際の料金は、自動車と同じく1,000円が基本となっています。
ルート 乗り換え駐車場 駐車可能台数 駐車料金(バイク) シャトルバス(大人往復)
吉田口 富士北麓駐車場 約1,400台 1,000円 3,000円
須走口 須走多用途広場 約500台 無料 2,400円
富士宮口 水ヶ塚駐車場 約1,000台 1,000円 2,200円(※別途設定あり)
静岡県などの公式発表によれば、これらの広大な乗り換え駐車場が完全に満車になり、バイクが停められなくなる事態は過去に起きていません。
万が一メインの駐車場が埋まった場合でも、近隣の臨時駐車場が解放される仕組みになっているため、駐車場所の心配はほぼ不要です。
愛車を麓に預けるのは少し寂しいと感じるライダーも多いでしょう。
しかし、シャトルバスに揺られながら徐々に高度を上げていく時間も、これから始まる登山や高地体験への「高度順応」として有効に活用することができます。
夏でも唯一バイクで行ける「御殿場ルート」の魅力と注意点
厳しいマイカー規制の壁に落胆したライダーに、一つだけ朗報があります。
実は、4つある登山口の中でたった一つ、「御殿場ルート」だけは夏季のマイカー規制の対象外となっているのです。
県道富士公園太郎坊線を経由してアクセスする御殿場口の新五合目は、夏真っ盛りの8月であってもバイクで直接乗り入れることができます。
なぜ、このルートだけが規制を免れているのでしょうか。
最大の理由は、御殿場口新五合目の標高が1450mと、他のルートに比べて圧倒的に低い位置にあるためです。
山頂までの距離と標高差が最も長く、登山者にとって過酷なルートであるため、ここから登る人は全体のごくわずかに留まります。
さらに、アクセスする道路の傾斜が緩やかで距離も短いため、大規模な交通渋滞が発生するリスクが極めて低いと判断されています。
そのため、シャトルバスを運行させるほどの輸送需要がなく、マイカー規制が見送られているという実情があります。
しかし、だからこそ御殿場ルートには、静寂に包まれた本来の富士山の姿が色濃く残っています。
他のルートのような華やかな観光施設や大型の売店群は少なく、あるのは静かな風の音と、見上げるような巨大な山体の威圧感だけです。
標高1450mとはいえ、麓の猛暑とは無縁の涼しい風が吹き抜けます。
昼間のツーリングであれば、雄大な夏富士の姿と荒涼とした火山灰の大地を独り占めできる最高のスポットと言えるでしょう。
火山地質学的に見ても、御殿場ルート周辺は極めて興味深いエリアです。
ここは1707年の宝永大噴火で降り積もった分厚い火山灰(スコリア)に覆われており、黒々とした大地が広がっています。
ただし、バイク乗りとして一つ注意しておきたいのが「標高によるエンジンのパワーダウン」です。
最新の電子制御燃料噴射(インジェクション)車であればコンピューターが空気の薄さを検知して自動補正してくれますが、古いキャブレター車の場合は注意が必要です。
酸素濃度が下がることで空気とガソリンの混合比率が狂い、エンジンが息継ぎをするように苦しがり、出力が露骨に落ちていきます。
ライダーはエンジンの不調を感じ取りながらスロットルを微調整する必要があり、愛車とともに高度順応していくようなアナログな感覚も、高地ツーリングならではの体験です。
標高2400mの世界へ!規制解除後に目指す最高到達点
もしあなたが、マイカー規制が行われていない初夏や秋口に富士山を訪れることができるなら、ツーリングの選択肢は一気に広がります。
それぞれのルートが持つ標高の差は、そのまま景色の違いや気温の変化となって現れるからです。
マイカー規制期間外に、バイクで合法的にたどり着ける各五合目の標高は以下の通りです。
- 須走口:標高2,000m
- 吉田口(富士スバルライン):標高2,300m(※山梨県側)
- 富士宮口(富士山スカイライン):標高2,400m
- 御殿場口:標高1,450m
ここで最も注目すべきは、富士宮口の標高2400mという圧倒的な高さです。
これは、日本の公道をバイクで走れる場所としてトップクラスであり、御殿場口の新五合目と比べると実に約1000mもの標高差があります。
標高2400mともなれば、そこはすでに背の高い木々が育たない「森林限界」を超えた世界です。
荒々しい岩肌が剥き出しになり、眼下には真っ白な雲海が広がる、まさに天空のツーリングルートと呼ぶにふさわしい絶景が待っています。
しかし、ここは自然の厳しさが直接牙を剥く場所でもあります。
気象の基本原則として、標高が100m上がるごとに気温はおよそ0.6度下がります。
麓の街で30度の真夏日であっても、2400mの五合目では単純計算で約15度も気温が低くなり、15度前後しかありません。
さらに山特有の強風が吹けば、体感温度は簡単に一桁台まで落ち込みます。
下界が暑いからといってメッシュジャケット一枚で気軽に向かえば、寒さで体が震え、ブレーキレバーを握る指先の感覚すら奪われてしまう危険性があります。
しっかりとした防風インナーや冬用のグローブをシートバッグに忍ばせておくのが、高所ツーリングへ向かうライダーの鉄則です。
登山靴、レインウェア、ザック、防寒着……必要なものを一つずつ揃えていくと、意外と悩むポイントが増えてきます。
しかも、すべてを購入することだけが正解とは限りません。
僕ならどこまで揃え、どこからレンタルを考えるのか。富士登山の装備を無理なく準備する方法をこちらの記事で詳しくまとめました。
初めて登る方でも、数分で全体像をつかめます。
63年ぶりの快挙!高校生が挑んだ「富士山バイク実証走行」の全貌
富士山とバイクの関わりにおいて、2026年に非常に画期的なプロジェクトが実施されました。
それが、地元高校生たちを中心としたチームによる「富士山バイク実証走行」です。
昭和38年(1963年)に一般車両の通行が厳しく禁じられて以降、富士山の特定の登山道はブルドーザーなどの物資運搬車両しか立ち入ることができませんでした。
その固く閉ざされたルートを再びバイクで走るという、誰もが不可能だと思った夢を、若者たちが現実のものとしたのです。
企画の中心となったのは、静岡県伊豆市の高校生を主体とした地域サークル「原動機研究部」です。
事の発端は、女子高生とバイクの日常を描いた漫画作品でした。
作中で主人公がハンターカブに乗って富士山に登る決意をするシーンに感化された部員が、「自分たちも実際に富士山を走ってみたい」と声を上げたのがすべての始まりです。
しかし、若者の純粋な情熱だけで、国立公園であり世界文化遺産でもある富士山の特別許可が下りるほど現実は甘くありません。
警察や自治体は当初、前例のない車両進入に対して非常に慎重な姿勢を見せました。
ここからが、彼らの素晴らしいところです。
彼らはただ夢を語るだけでなく、静岡県御殿場市や静岡県警へ何度も足を運び、緻密な安全計画と実証実験の意義を説き続けたのです。
彼らには大きな武器がありました。
それは普段から、公園で使う電動キックボードの整備や、使わなくなった電気自動車を引き取って修理し自治体に寄贈するなど、地域振興活動を地道に続けてきた実績です。
その真摯な活動を通じて築き上げてきた大人たちとの信頼関係が、固く閉ざされた扉を開く鍵となりました。
2026年7月5日、ついに歴史的な実証実験の朝を迎えました。
朝8時から15時にかけて行われたこの走行の舞台は、御殿場口の新五合目から大石茶屋までの約1kmの未舗装区間です。
距離こそ短く感じますが、ここは火山灰や細かい砂利(スコリア)が深く堆積した斜面であり、二輪車のタイヤが容易に埋まってしまう極めて過酷な路面環境です。
走行ライダーには高校生部員だけでなく、顧問を務める伊豆市の菊地豊市長や、御殿場警察署の交通警ら隊も参加する官民一体の体制が敷られました。
実験には、ホンダのCT125ハンターカブやクロスカブ50、ハスクバーナの60ccキッズバイクなど、軽量なオフロード特性を持つ車両が持ち込まれました。
これは単なる思い出作りではなく、過酷な火山砂利における車両ごとの走破性能や、タイヤのトラクション(駆動力)の抜け具合を検証する立派なデータ収集活動です。
走行時は複数の車載カメラによる映像記録が行われ、GPSロガーを用いて深い砂利を避けるための最適なライン取りのデータ取得も並行して実施されました。
排気量の小さな50ccモデルが斜面でどのように失速するのか、125ccのトルクがどこまで通用するのか、貴重な生データが記録されたのです。
筆者の考察:実証実験が示す未来の富士山管理と自然保全
この一連の出来事や過去の規制の歴史を見つめながら、僕は富士山の自然環境研究に携わる者として、非常に重要な意義を感じています。
まず明確にしておきたいのは、現在のマイカー規制や車両進入禁止のルールは、富士山の自然を守るために「絶対に守り抜かなければならない防波堤」であるという事実です。
過去の無秩序なモータリゼーションによって高山植物が踏み荒らされ、排気ガスが山を汚染した過ちを、私たちは二度と繰り返してはなりません。
富士山は観光客が無制限に消費して良いレジャー施設ではないからです。
しかし、ルールを守り環境を保全することと、「思考を停止してすべてを排除すること」は同義ではありません。
今回の原動機研究部による実証実験は、ルールを遵守した上で、これからの富士山とモビリティのあり方に新しい選択肢を提示しました。
僕が特に注目しているのは、この走行データが「将来の山岳救助」や「環境負荷ゼロの次世代モビリティ導入」に直結する価値を持っているという点です。
富士山で登山者が負傷した場合、ブルドーザーや大型の四輪駆動車では道幅や取り回しの問題で迅速に現場へ急行できないケースがあります。
今回実証されたCT125ハンターカブのような軽量な二輪車であれば、深いスコリアの路面であっても、機動力を活かして救急隊員や初期医療キットをいち早く現場へ届けることが可能です。
どの排気量、どのタイヤであれば確実に登坂できるのかという事実は、災害レスキュー車両の選定において極めて重要な一次情報となります。
さらに、今回のガソリンエンジン車による走破データは、将来的に導入が期待される「電動オフロードバイク」のモーター出力設定の基準にもなります。
騒音を出さず、排気ガスも一切出さない電動モビリティが富士山の管理車両として実用化されれば、自然環境への負荷を劇的に下げる革命的な進歩となるでしょう。
「規制だから仕方ない」と諦めるのではなく、自治体や警察を巻き込み、科学的なデータを取るというアプローチで挑んだ若者たちの姿勢は高く評価されるべきです。
自然をただ遠ざけて封鎖するだけでなく、人が知恵と技術を持って適切に関わり合うことで、自然保護と安全管理の質はさらに高まっていきます。
63年ぶりに通行禁止ルートに刻まれた彼らのタイヤの跡は、単なる物理的な轍ではありません。
それは、これからのモビリティ社会と偉大な自然がどう共存していくべきかを示す、未来へ向けた確かな道標なのです。
まとめ
富士山へバイクで向かうためのルールと、新たな実証実験の要点を総括します。
- 夏季の登山シーズンは環境保全のために厳しいマイカー規制が敷かれ、原則としてバイクで主要な五合目へはアクセスできない。
- ただし、標高1450mの「御殿場ルート」だけは唯一の例外であり、夏でもバイクでの直接乗り入れが可能。
- マイカー規制期間外であれば、「富士宮ルート」を利用して標高2400mという日本屈指の高さまで到達できる(防寒対策は必須)。
- 2026年7月、高校生サークルの熱意と自治体の協力により、63年ぶりとなる通行禁止ルートでのバイク実証走行が成功し、レスキューや環境保全に繋がる貴重なデータが取得された。
富士山は、ただ走る喜びだけでなく、その厳しい自然環境や歴史的な背景を知ることで、ライダーに何倍もの深い感動を与えてくれます。
交通ルールと自然への敬意を忘れず、確実な安全装備を整えた上で、ぜひあなた自身の目で雄大な富士の姿を見つめに行ってください。
よくある質問
バイク(原付)もマイカー規制の対象になりますか?
はい、対象になります。排気量に関わらず、原動機付自転車を含むすべてのバイクがマイカー規制の対象です。規制期間中は麓の指定駐車場(バイクは駐車料金1,000円 ※一部無料ルートあり)に停め、シャトルバスやタクシーに乗り換えて五合目へ向かう必要があります。
麓の乗り換え駐車場が満車になってしまうことはありますか?
静岡県や山梨県の公式情報によれば、各ルートの麓には広大な駐車場が用意されているため、過去に満車になって完全に停められなくなった事例はありません。万が一メイン駐車場が満車になった場合でも、近隣の臨時駐車場へ案内される仕組みが整っているため安心です。
バイクで合法的に行ける富士山の一番標高が高い場所はどこですか?
マイカー規制が行われていない時期(初夏や秋口など)であれば、「富士宮口五合目」が最も標高が高く、2,400m地点までバイクで登ることができます。ただし、夏以外は急激な気温低下や強風、路面凍結のリスクが高まるため、冬山に準ずる防寒対策が必要です。
富士登山の準備で迷いやすいのが、「本当にこの装備を全部買う必要があるのか」という問題です。
頻繁に山へ行く人と、まずは富士山に挑戦したい人では、合理的な揃え方も変わります。
大切なのは、費用だけで決めるのではなく、安全性や使う頻度まで含めて考えること。
購入とレンタルの違いが分かれば、自分に必要な装備もかなり整理しやすくなります。
富士登山の装備レンタルをどう使えばいいのか、詳しくはこちらの記事で確認できます。
全部読む必要はありません。気になるところだけ拾い読みしてみてください。


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