夜明け前、まだ街が眠りについている時間。
僕はいつものようにヘッドランプを点け、富士山の方角へ車を走らせた。
東の空がうっすらと白み始めた頃、フロントガラス越しに現れたその姿は、何度見ても言葉を失う。
――「今日、あの山に登るんだ」。
僕はこれまでに富士山へ何度も登ってきた。
夏のご来光、秋の初冠雪、春の雪解け、冬の静寂。
気象条件が刻一刻と変わるこの山は、登るたびに違う表情を見せ、人の心を試す。
富士山は標高3,776m。日本最高峰という数字が示すのは、単なる高さではなく「自然の厳しさ」と「人の覚悟」だ。
しかし、正しい準備と知識を持てば――その山は驚くほど穏やかに、初心者にも微笑んでくれる。
霧に隠れる富士は、人の心の迷いに似ている。
そして登頂は、その迷いを超える儀式だ。
この記事では、これから富士山に初めて挑むあなたのために、登山口の選び方・服装・持ち物・初心者向けツアーまでを、富士山研究家であり登山エッセイストの僕・神楽岳志(かぐらたけし)が、経験と科学的知見の両面からわかりやすく解説する。
富士山は、ただ“登る山”ではない。
それは、人が自分と向き合うための、もっとも美しい試練なのだ。
富士山登山は「準備」で8割決まる|初心者が知っておくべき基本

まず最初に伝えたいのは、富士登山は「体力」よりも「準備」で結果が決まるということ。
これは、何度もこの山を登ってきた僕の実感でもあります。
準備を怠れば、たとえ筋力があっても五合目で足が止まる。
けれど、正しく準備した人は、笑顔でご来光を迎える。
――それが富士山という山なんです。
標高3,776mという「別世界」に足を踏み入れる
富士山は、ふもとの穏やかな風景からは想像できないほど、環境の変化が激しい山です。
晴天でも一時間後には濃い霧に包まれ、風が吹けば一瞬で体温が奪われる。
その変化を、僕は何度もこの身で体験してきました。
- 標高が1,000m上がるごとに、気温はおよそ6℃下がる
- 夏でも山頂は0℃前後、風が吹けば体感温度は氷点下
- 午後になるとガス(霧)や雷雲が湧きやすく、天候急変も珍しくない
つまり、平地の「夏」と山頂の「夏」はまるで別の惑星。
「半袖でも登れるでしょ?」という油断は、最初の試練になります。
でも安心してください。
気候の特徴を理解し、装備を整えれば、どんな天気も「ドラマ」に変わります。
雲海の切れ間から夕日が差し込む瞬間、雷鳴のあとに広がる満天の星空――そのすべてが、登る人だけに見せてくれるご褒美なんです。
登山シーズンは「7月上旬〜9月上旬」だけ
富士山が一般登山者に“門を開く”のは、毎年7月上旬から9月上旬のわずか2か月ほど。
この時期は山小屋や救護所が営業し、登山道も整備され、最も安全に登れる季節です。
逆に、この期間を外れた登山は、雪や凍結、閉鎖による命に関わる危険行為になりかねません。
オフィシャルサイト(富士登山オフィシャルサイト)では毎年、各ルートの開通状況やマイカー規制情報が更新されています。出発前に必ずチェックしてください。
僕も毎年、山開きの日には必ず公式サイトを確認します。
それは「安全に登る」ことが、登山者としての礼儀だと思っているからです。
初心者が陥りやすい3つの誤解
これから富士山に挑む人たちが、よく口にする言葉があります。
- 「子どもでも登れるって聞いたから、大丈夫でしょ?」
- 「ツアーだし、そこまで本格的な装備じゃなくていいよね?」
- 「山頂までは、とりあえず行けるところまで行ってみるよ」
どれも一見、軽い冗談のようですが、実はその裏に「準備不足」が潜んでいます。
標高差1,500m、登り下り合わせて7〜10時間。
これはハイキングではなく、れっきとした本格登山です。
軽装やノープランで挑めば、途中で寒さや酸欠に悩まされ、富士の姿を“見上げるだけ”で終わってしまうかもしれません。
でも大丈夫。
「誰でも登れる山」ではなく、「準備した人だけが登れる山」。
そう理解した瞬間から、あなたはもう半分、頂上に近づいています。
登山計画を立て、道具を選び、体を整える。
それらすべての時間がすでに“富士登山”の一部なんです。
そのワクワクこそが、最初の一歩です。
あなたの人生で“最初の富士山”が、ただの登山ではなく、“新しい自分と出会う旅”になるように。
僕がその道案内をします。
初心者におすすめの登山口とルート選び

富士山には、山頂へ向かう代表的なルートが4つあります。
それぞれが全く違う表情を持ち、登るたびに“新しい富士山”に出会えるんです。
- 吉田ルート(山梨県側・北面)
- 須走ルート(東面)
- 御殿場ルート(東南面)
- 富士宮ルート(静岡県側・南面)
どのルートを選ぶかで、見える風景も、ご来光の角度も、感じる達成感も違ってきます。
だからこそ、最初の一歩――「どの登山口から登るか」を選ぶ瞬間は、もう登山の始まりなんです。
4つの登山ルートを一望!それぞれの“個性”を知ろう
富士山をぐるりと囲む4つのルートには、それぞれの魅力と個性があります。
僕も長年登ってきて、気分や季節によってルートを変えることがあります。
同じ山でも、登る方角が違うだけでまったく違う表情を見せてくれる――それが富士山の面白さです。
| ルート名 | 主な登山口 | 特徴(初心者向けポイント) |
|---|---|---|
| 吉田ルート | 富士スバルライン五合目 | 山小屋が多く、ツアーも豊富。夜間でも登山者が多く、安心感がある。 |
| 須走ルート | 須走口五合目 | 樹林帯が多く涼しい。下山は「砂走り」で駆け降りるスリルが魅力。 |
| 御殿場ルート | 御殿場口新五合目 | 標高差が大きく、上級者向け。静けさと孤独を味わえるストイックなルート。 |
| 富士宮ルート | 富士宮口五合目 | 登山口の標高が高くコースが短い。南面の景色とご来光がダイナミック。 |
どのルートにも「その道にしかない魅力」があります。
でも、もしあなたが“初めての富士山”を確実に楽しみたいなら――答えは、決まっています。
迷ったらこれ一択。「吉田ルート」が初心者に最適な理由
僕が初めて登ったのも、この吉田ルート(富士スバルライン五合目)でした。
それ以来、ガイドや取材でも何度も登ってきましたが、やはり初心者にはこのルートが一番安心です。
- 山小屋が多く、休憩やトイレの心配が少ない
- 登りと下りが分かれていて渋滞時も歩きやすい
- ツアー設定が豊富で、「初心者・女性・一人参加OK」のプランが多い
- ご来光を途中の山小屋や斜面から眺められる
実際、登山者の約6割が吉田ルートを選んでいるとも言われています。
初めての富士山で大切なのは、“孤独な冒険”ではなく“安心して楽しめる体験”です。
周りに人がいる安心感が、何より心強いんです。
吉田ルートの五合目に降り立った瞬間、冷たい空気とともに「富士山の香り」が肌に触れる。
眼前に広がる雲の海を見たとき、僕はいまでも胸が高鳴ります。
「さあ、行こう。あの頂へ。」――その気持ちは、何度登っても変わりません。
各登山口へのアクセス(東京・大阪方面から)
- 吉田ルート(富士スバルライン五合目)
新宿・東京駅・横浜などから「五合目行き高速バス」やツアーバスが多数運行。
マイカー利用の場合、規制期間中はふもとの駐車場からシャトルバスで向かいます。 - 富士宮ルート(富士宮口五合目)
静岡県側のアクセスに便利。新富士駅・富士駅からバスで約2時間。
マイカー規制の期間や運行ダイヤは毎年変わります。
最新の情報は、富士登山オフィシャルサイトで必ず確認しましょう。
登山時間と山小屋利用の目安
初心者に最適なのは、1泊2日でご来光を狙うプランです。
僕もガイド時は、まずこの日程をおすすめしています。
- 1日目:五合目 → 七〜八合目の山小屋(約4〜6時間)で宿泊
- 2日目:山小屋 → 山頂(約2〜4時間)でご来光 → 下山(約4〜5時間)
日帰り登山も不可能ではありませんが、標高差と酸素の薄さは想像以上。
高山病のリスクを減らし、体力を温存しながら登るなら、山小屋1泊が圧倒的に安心です。
山小屋で飲む味噌汁の塩気、朝4時の静寂、息を呑むようなご来光。
それらは、登った人だけの宝物です。
あなたの“最初の富士山”を、最高の記憶にするために。
ルート選びの一歩から、すでに物語は始まっています。
服装と装備の基本|“快適さ”が安全をつくる

富士登山の準備で僕が一番ワクワクするのが、実は装備選びなんです。
ウェアを並べて、「これで頂上の風を感じるのか」と想像する瞬間。
まるで遠足前夜のような高揚感があります。
でもそのワクワクは、同時に命を守る“知恵”でもあります。
富士山では、「寒さ対策」と「雨対策」がすべての鍵。
どんなに体力があっても、装備が甘ければ、すぐに体温と気力を奪われてしまうんです。
だから、登山者にとっての服装は“おしゃれ”ではなく、“戦略”。
その基本が、登山界で定番のレイヤリング(重ね着)です。
レイヤリング(重ね着)の基本構成
山の天気は気まぐれ。
晴れたと思えば霧、霧が晴れたと思えば冷たい風。
そんな変化に対応できるよう、服装は大きく3層に分けて考えます。
- ベースレイヤー(肌着):汗を素早く逃がす速乾性Tシャツやインナー
- ミドルレイヤー(保温着):フリースや薄手のダウンで体温をキープ
- アウターレイヤー(外套):防風・防水を兼ねたレインウェア(上下セパレート型)
ここでひとつ、よくある落とし穴があります。
「普段着でいいでしょ?」と綿のTシャツやジーンズを選ぶ人。
実はこれ、山では“冷蔵庫の中に入る”ような選択です。
汗や雨で濡れると乾かず、体温を奪い、命に関わることもあります。
だから、必ず吸汗速乾素材を選びましょう。
このポイントを押さえれば、気温の変化さえ「楽しい挑戦」に変わります。
「寒さに負けない準備をした自分」が、ちょっと誇らしくなるはずです。
季節別の服装イメージ(夏〜初秋)
僕がよく現場でアドバイスするのが、「五合目は春、山頂は冬」と考えること。
同じ日でも気温差は20℃近くあるんです。
だから季節ごとに、このくらいの装備を意識してみてください。
- 夏(7〜8月)の日中・五合目付近:
半袖Tシャツ+薄手の長袖シャツ/アームカバー+ロングパンツ。汗を逃がし、日焼けを防ぐ構成です。 - 夜間・山頂付近(ご来光待ち):
速乾インナー+フリース or 薄手ダウン+レインウェア上+ニット帽・手袋。
頂上のご来光は感動的ですが、気温0℃の中で待つ時間は想像以上に長いです。 - 9月頃:
秋風が一気に冷え込む時期。厚手の保温着やネックウォーマー、予備の手袋があると安心です。
装備を選ぶ時間もまた、登山の一部。
「このジャケット、山頂で役立つかな?」と想像するだけで、心が前のめりになる。
準備の段階から、すでに登山は始まっているんです。
「命を守る小物」たち
そして、登山の現場で僕が何度も助けられてきた“名脇役”たちを紹介します。
彼らは小さいけれど、本気で頼れる相棒です。
- 登山靴: ハイカットのトレッキングシューズ。足首を守り、岩場での安定感が段違い。
- レインウェア: 上下セパレートタイプを必ず。防風・防寒にも使えます。
- ヘッドランプ: 夜明け前のご来光登山ではマスト。替え電池も忘れずに。
- 防寒グローブ・ニット帽・ネックゲーター: 指先や首元の冷え対策は想像以上に大切。
- 登山用ソックス: 厚手の速乾タイプ。靴擦れ防止にも効果抜群。
道具をただ“持つ”だけではなく、“信頼する”こと。
それが富士登山を安全に、そして心から楽しむコツです。
服装ひとつで、寒さも汗もあなたの味方にできる。
そう思えた瞬間、あなたはもう「登る準備」が整っています。
富士登山の持ち物チェックリスト

さあ、いよいよ装備をそろえる時間です。
僕はこの瞬間が大好きです。
ザックを広げて、一つひとつの道具を入れていくたびに、「いよいよ登るんだな」と胸が高鳴る。
登山は、山頂に立つその前からすでに始まっているんです。
ここでは、登山歴ゼロでも安心して出発できるように、「これがないと危ない必携品」と、「あると一気に快適になる便利グッズ」を分けて紹介します。
チェックリストとして印刷してもOK。ひとつずつ埋めていくたびに、ワクワクが増していくはずです。
必携品リスト(初心者はここを最優先)
これらは“安全”と“快適”を守るための基本装備。
どれも軽視できない理由があります。道具が整っているだけで、富士山はぐっと優しくなる。
- ザック: 日帰りなら20〜25L、1泊2日なら30〜35L。背負いやすさが命です。
- 登山靴: ハイカットで足首を保護。事前に何度か履いて慣らしておきましょう。
- レインウェア上下: 防水透湿素材を選ぶ。突然の雨でも体温を守ってくれます。
- ヘッドランプ+予備電池: ご来光登山では必須。夜道を照らす“命綱”。
- 防寒着: フリースや薄手ダウン。風が吹いた瞬間の安心感が違います。
- 帽子&手袋: 日差しと冷え、両方に対応。軽くても効果は絶大。
- 飲料水: 目安は1.5〜2L/人。冷たい山の空気は思った以上に体を乾かします。
- 行動食: チョコ、ナッツ、ようかん、ゼリー飲料など。小腹が空くたびに士気が上がります。
- 現金: 山ではキャッシュレス不可の場所も多い。トイレや山小屋用に小銭を多めに。
- 健康保険証のコピー・常備薬: 念のための安心セット。
- スマートフォン+モバイルバッテリー: 地図アプリや写真撮影に必須。
これらがそろった瞬間、あなたはもう“登る人”です。
道具を並べて「自分の山装備」を作り上げる時間こそ、登山の楽しみのひとつだと思っています。
あると便利なグッズ
ここからは、“あると一気に快適になる小さな味方たち”。
どれも「一度使うと、もう手放せない」アイテムばかりです。
- ネックゲーター・マスク: 防寒にも、砂埃対策にも大活躍。
- トレッキングポール: 下山時の膝を守る救世主。長時間歩く人ほど効果を実感します。
- 着替え用インナー・靴下: 汗をかいた後の着替えは最高のリフレッシュ。
- ジップロック・ビニール袋: 防水にもゴミ持ち帰りにも便利。想像以上に出番があります。
- カイロ: 山頂の夜明け前は真冬並みの寒さ。ポケットに忍ばせるだけで天国。
- 耳栓・アイマスク: 山小屋での睡眠の質が劇的に変わります。
「たかが小物」と思うかもしれませんが、山ではその小さな差が“心の余裕”に変わります。
余裕があると、景色が鮮やかに見えてくるんです。
初心者がやりがちな「荷物の失敗」と回避法
僕がガイドでよく見かける、初心者あるあるを紹介します。
ちょっとした工夫で、登山が何倍も快適になります。
- 「不安で詰め込みすぎて重すぎるザック」
→ 家でパッキングして背負ってみてください。10kgを超えるようなら減量対象。
“軽さ”は体力の貯金です。 - 「ペットボトルを持ちすぎて肩がパンパン」
→ 五合目や山小屋でも水は購入できます。最初から満タンで背負うのはNG。 - 「雨具を安物のビニールで代用」
→ あれは防水ではなく“防風ビニール”。破れやすく、冷気も防げません。
登山用レインウェアは“命を守る服”です。
最初は誰だって失敗します。僕も昔、五合目で傘を壊し、全身ずぶ濡れになりました(笑)。
でも、その経験があったからこそ「準備の大切さ」を語れる今があります。
装備を整える時間は、未来の自分にワクワクする時間。
持ち物リストは、あなたと富士が交わす最初の“約束”です。
初心者向けツアーを選ぶポイント

「自分で計画するのは不安だな」「登山ルートを間違えたらどうしよう」――
そう感じるなら、迷わず初心者向けのガイド付きツアーを選びましょう。
僕は何度も現場で見てきました。ツアーに参加した人の方が、初登山を“最高の思い出”にして帰る確率が圧倒的に高いんです。
登山ツアーには、単なる“サポート”を超えた魅力があります。
プロのガイドに守られながら、同じ目標を持った仲間と一歩ずつ登っていく。
夜明け前、ヘッドランプの光が列になって山を照らす――あの光景は、何度見ても胸が熱くなります。
ガイド付きツアーと個人登山の違い
まずは、ツアーと個人登山の違いを整理しておきましょう。
どちらが良い悪いではなく、「自分に合った登り方」を知るのが大事です。
| ガイド付きツアー | 個人登山 | |
|---|---|---|
| 計画作り | 行程・山小屋・バスなどすべて手配済み。荷物を整えるだけでOK。 | ルート、宿泊、交通手段を自分で調べて予約する必要あり。 |
| 道迷い | ガイドが先導してくれるので安心。夜間やガスの中でも迷いにくい。 | 暗闇や悪天候ではルートを見失うリスクあり。 |
| 安心感 | 体調不良やトラブル時もすぐにサポートしてもらえる。 | 判断や対応はすべて自己責任。 |
| 自由度 | 行動ペースやルートにある程度制約がある。 | 自分のペースで動けるが、その分リスクも高い。 |
結論から言うと、初めての富士登山こそツアーを利用すべきです。
登山経験が浅くても、装備や計画に自信がなくても、ガイド付きなら安全も達成感も桁違い。
登山中に交わす何気ない会話や、山小屋での仲間との笑い声――それが、旅の中で一番心に残る瞬間になるんです。
“初心者OK”のツアーを選べば、不安は知識に変わり、緊張はワクワクに変わる。
それがツアーの一番の魔法です。
初心者向けツアーを選ぶときのチェックポイント
ここからは、ツアー選びで失敗しないための具体的なチェックポイントを紹介します。
どれも現場での経験から導き出した、外せない要素です。
- 登るルートはどこか: 初心者は迷わず「吉田ルート」を。アクセスも良く、山小屋も多い。
- 山小屋で1泊できるか: ご来光プラン付きがベスト。無理のないペースで登れます。
- ガイドが同行するか: 同行人数や経験年数も確認。ベテランガイドは“安全と安心の盾”。
- レンタル装備が付くか: 登山靴やレインウェアのレンタル込みなら荷物が軽くなります。
- 出発地: 新宿・東京・静岡など、自分に合ったアクセス拠点を選びましょう。
- 最大人数: 少人数制(10人以下)なら、ガイドのサポートが行き届きやすい。
これらを押さえるだけで、ツアーの快適さがまるで違ってきます。
特に「ご来光付き」「1泊2日」「吉田ルート」の3点セットは、初めて登る人の鉄板プランです。
予約のタイミングと裏ワザ
人気シーズン(7月下旬〜8月お盆前後)は、1〜2か月前からすでに埋まり始めます。
「そのうち予約しよう」と思っているうちに、希望の日程や山小屋が満席になることも珍しくありません。
僕のおすすめは、春のうちに下見予約をしておくこと。
キャンセル料がかからないプランも多いので、早めに確保しておけば安心です。
そして準備期間をしっかり取れば取るほど、登山は100倍楽しくなります。
富士登山ツアーの魅力は、登る瞬間だけじゃありません。
予約ボタンを押した瞬間から、もう“富士山への旅”は始まっているんです。
装備を整え、仲間と出発の日を待つ――そのワクワクこそ、富士登山の第一歩。
ツアーはあなたの冒険を、確実に、そして最高に楽しいものへ導いてくれます。
富士登山を安全に楽しむための心構え

富士山に登るとき、僕がいつも心に刻んでいる言葉があります。
それは「焦らず、慌てず、楽しみながら登る」ということ。
安全は、装備や体力だけでなく、“心のペース”で守るものなんです。
「ゆっくり」が、いちばんの登頂テクニック
富士山では、速く歩く人ほど高山病になりやすいと言われています。
標高が上がるほど空気は薄くなり、体は酸素を求めて悲鳴を上げ始めます。
でも、焦らずゆっくり進めば、体が少しずつその環境に“順応”してくれる。
僕がガイドをするとき、いつもこう声をかけます。
「早く登るより、“呼吸を整えて登る”ほうがカッコいいですよ」って。
- 30〜40分歩いたら、5〜10分休む
- 喉が渇く前に一口ずつ水を飲む(高山では“乾く前”が基本)
- お腹が空いていなくても、1〜2時間ごとにチョコやナッツを少し
ゆっくり歩けば、息も乱れず、景色を味わう余裕も生まれます。
山頂に立ったときの達成感は、“スピード”ではなく“丁寧さ”の積み重ねで生まれるんです。
高山病を防ぐためにできること
高山病は、誰にでも起こりうるもの。
ベテラン登山者でも油断すると一気に体調を崩します。
だからこそ、僕は「防ぐ」ことを意識して行動しています。
- 前日はしっかり睡眠をとり、アルコールは控える。 寝不足とお酒は高山病の大敵です。
- 五合目に着いたら、すぐに歩き出さず1〜2時間は体を慣らす。 コーヒーを飲みながら景色を眺めるくらいがちょうどいい。
- 頭痛・吐き気・めまいを感じたら、すぐペースを落とす。 無理は禁物。必要なら下山を選ぶ勇気も持ってください。
僕は何度も登ってきた中で、途中撤退を選んだこともあります。
悔しさよりも、「次こそベストコンディションで登ろう」という前向きな気持ちのほうが大きかった。
「登る勇気」と同じくらい、「引き返す勇気」も尊い。
富士山は逃げません。
天気、体調、そして心が整ったとき――その時こそ、山は最高の顔を見せてくれます。
安全に登ること。それが、富士山と長く付き合っていくための“いちばんのコツ”なんです。
登頂後に待つ“ご来光”の感動と富士山の魔法

富士山の山頂で迎える夜明け――これは言葉では伝えきれません。
空が群青からオレンジに変わりはじめる、その一瞬。
冷たい風が頬をなで、吐く息が白く揺れる。
やがて、遠くの地平線から太陽がゆっくりと顔を出し、雲海全体を真っ赤に染めていくんです。
あの瞬間の空気は、肌で“地球の鼓動”を感じるような感覚です。
何度登っても、あの光を目にすると胸が熱くなる。
自分の足でここまで来たこと、その積み重ねた時間がすべて報われる瞬間です。
ふと後ろを振り返ると、自分が歩いてきた道が、夜明けの光に照らされて一本の線になって見える。
それを見たとき、僕はいつも思うんです。
「この道こそ、自分の生き方そのものだな」と。
山頂で振り返るその景色には、あなた自身の物語が映っています。
仕事の忙しさ、家族のこと、挑戦を先延ばしにしてきた理由――
それらすべてが、この頂上で「過去」から「誇り」に変わっていく。
富士山は、ただの山じゃなく、“人生を整理してくれる場所”なんです。
だから僕は、何度登っても飽きない。
そして毎回、初めて登った人の顔を見るのが一番の楽しみなんです。
あの、太陽を見た瞬間の笑顔――あれは、どんな言葉よりも力強い。
まとめ|富士山は“登る山”ではなく、“出会う山”

ここまで、初心者でも迷わない富士登山の基本として、次のポイントを紹介してきました。
- 準備(シーズン・環境・心構え)
- 登山口とルート選び(特に吉田ルート)
- 服装と装備(レイヤリングと必須装備)
- 持ち物チェックリスト
- 初心者向けツアーの選び方
- 安全に楽しむためのペースと高山病対策
富士山は、ただ“登るための山”ではありません。
そこへ向かう準備、歩く時間、そして見上げる景色――
そのすべてが、あなた自身の新しい物語を作ってくれます。
初めての富士登山は、緊張も不安もあるでしょう。
でも、それ以上に得られるのは、「自分もやればできる」という確信です。
それは頂上でしか味わえない、自分だけの宝物です。
あなたの“最初の富士山”が、ただの登山ではなく、
人生の中で忘れられない「自分と出会う旅」になることを、心から願っています。
そしてもし、いつか山頂で僕を見かけたら――遠慮なく声をかけてください。
その日もきっと、僕は富士山を語りながら、誰かと一緒にワクワクしているはずです。
FAQ(よくある質問)
富士登山の話をすると、必ず出てくる“定番の質問”があります。
ここでは、僕がガイドや講演で何度も受けてきた質問に、実体験を交えてお答えします。
どの質問も、これから富士山に登るあなたのワクワクを後押ししてくれるはずです。
Q1. 初心者でも日帰り登山はできますか?
A. できます。ただし、「できる」と「楽しめる」は別の話です。
体力と経験がある人なら可能ですが、初めての富士登山ではおすすめしません。
標高差1,500mを一気に登ると、高山病のリスクが高く、下山の疲労も大きくなります。
僕がガイドした初心者の方で、1泊してご来光を見た人はみんな口をそろえて言います。
「ゆっくり登ってよかった」「あの夜明けは一生忘れられない」――。
だから、最初は山小屋1泊のご来光プランを選んでください。
時間と余裕が、最高の思い出を作ります。
Q2. ツアーに参加したほうが安心ですか?
A. 断然、安心です。特に初めての登山・一人参加・女性の方にはガイド付きツアーを強くおすすめします。
行程、山小屋、バス、食事、すべてがセットになっているので、計画のストレスが激減。
そして何より、経験豊富なガイドがそばにいるという安心感が、想像以上に心強いんです。
僕も何度もツアーに同行してきましたが、初めて出会った人たちが山頂で抱き合って喜ぶ光景は何度見ても胸が熱くなります。
登山は孤独な挑戦じゃない。ツアーは、そのことを教えてくれる素晴らしい選択肢です。
Q3. 登山シーズンはいつですか?
A. 一般的には7月上旬〜9月上旬が登山シーズンです。
この期間は山小屋や救護所が営業し、登山道も整備されています。
ただし、年によって開山・閉山日は少しずつ異なります。
出発前には必ず、富士登山オフィシャルサイトで最新情報をチェックしてください。
僕も毎年このページを確認してから登ります。富士山は生きている山。準備が早い人ほど、いい出会いをします。
Q4. どのくらい前から準備を始めればいいですか?
A. 理想は、体づくりを1〜2か月前から。階段を使ったり、軽い登山を重ねたりして体を慣らしておきましょう。
ツアーや山小屋の予約は、ハイシーズン(7月下旬〜8月中旬)なら1〜2か月前がベストです。
装備は出発2週間前までに一度そろえて、実際に背負って歩いてみてください。
これ、意外と大事です。背負った瞬間にわかります――「登る実感」ってやつです。
準備を重ねるほど、登山当日が待ち遠しくなります。
ワクワクは、登るその日じゃなく、準備の中で育つんです。
どんな質問にも答えはあります。大切なのは、“わからない”ままにしないこと。
富士山は、準備した分だけ、あなたに最高の景色を見せてくれる山です。
情報ソース・参考リンク一覧
本記事では、僕自身の登山経験に加え、富士山公式サイトや登山装備ガイド、初心者向けツアー情報など、複数の一次・公的情報を参照しています。
読者のあなたが自分で最新情報を確認できるよう、主な情報源を以下にまとめました。
- 富士登山オフィシャルサイト(登山シーズン・登山口・装備・アクセス情報など)
- 登山口と登山ルート(吉田・須走・御殿場・富士宮の4ルートの特徴)
- 登山に必要な装備(公式の必須装備ガイド)
- 【2025年度版】富士登山の服装・装備・持ち物の準備リスト一覧
- 富士登山の持ち物チェックリスト(富士登山ツアー専門サイト)
- 富士登山ツアー2025|はとバス【公式】(初心者向けガイド付きツアーの参考)
※富士山は活火山であり、天候や登山規制、ルート状況は年ごとに変わります。
本記事の内容は執筆時点の情報と経験に基づいていますが、実際に登山を計画する際は、必ず公式サイトやツアー会社で最新情報を確認し、自己責任で安全な計画を立ててください。


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