富士山駅のホームに降り立った瞬間、頬をなでた風に、僕は五合目の冷たさを思い出した。
標高差1700メートルを一気に下りてきた身体は、まだ山の“記憶”を抱えている。
ザックの肩紐が残した赤い跡、靴底に挟まった黒い溶岩砂、岩場の温度が染みついた手のひら――
それらが今日の富士との対話を確かに物語っていた。
ふと、鼻先をかすめる湯気のような匂いに、胸の奥が微かに震える。
何百回と登ってきた経験からわかる。
「ああ、身体が温泉を求めている」と。
登山者の疲労は筋肉より先に“心”に出る。そこを解いてくれるのが、麓の湯だ。
あまり知られていないが、富士山駅の周辺には、僕たち地元の登山者が
“駆け込み湯”と呼ぶ温泉がいくつもある。
汗を流すだけではなく、富士山の余韻をそっと包み直してくれる場所。
山で張りつめた意識を、湯気の向こうで静かにほどいてくれる場所だ。
この記事では、富士登山を何度も経験し、
地元山岳ガイドの家庭で育った僕が、
「本当に登山者の身体が救われる、駅から行ける温泉」だけを厳選して紹介する。
下山後の迷いは、湯に浸かるその一瞬で消える。
どうかあなたの“富士の物語”の続きを、最高の湯で締めくくってほしい。
富士山駅から行ける温泉は多い?少ない? ― 地元民が本音で解説

富士吉田市の玄関口、富士山駅(旧・富士吉田駅)。
登山者が一気に増える夏の早朝なんて、本当に“山の前線基地”そのものだ。
「ここから富士山へ挑むのか」と胸が高鳴る場所でもある。
でも、これだけ登山者が集まる駅なのに、駅直結の温泉は存在しない。
地元民の僕でも「え、ないの?」と聞かれることが本当に多い。
ここで一瞬、読者の方も肩透かしを食らうかもしれない。
ところが――ここからがおもしろい。
駅を中心に半径10分圏内に“登山者が泣いて喜ぶ温泉”がちゃんと揃っているのだ。
徒歩で行ける温泉が1つ、バスで5分の温泉が1つ。
さらに車で10分以内に、富士山ビューが「反則級」にすごい名湯がゴロゴロしている。
つまり、富士山駅の温泉事情は
「数は少なく見えるけど、実は“当たり湯”しかない」という構造になっている。
これは地元で育って、登山帰りに何度も救われてきた僕だからこそ言い切れる。
特に下山直後のあの状態……足は棒、肩はズキズキ、頭はボーッ。
そんなとき、“すぐ入れる温泉”は本当に命綱だ。
だからこの記事では、登山者のあなたが最も楽に、最も満足できる順番で案内していく。
さあ、どこから行くか一緒に選んでいこう。
徒歩8〜10分|富士山駅から最も近い温泉 ― 富士山溶岩の湯「泉水」

富士山駅から徒歩で行ける温泉は、実はこの「泉水(せんすい)」だけ。
この事実を知った瞬間、僕の中で“泉水=下山者の駆け込み寺”という方程式ができあがった。
そして今でも、登山後の僕の足はほとんど自動的にここへ向かう。
Googleマップを見るとたったの750m。
「いや、下山後の750mって地味にきついんだよ」と思うかもしれないが、安心してほしい。
道はひたすらまっすぐ、平坦、迷う要素ゼロ。
身体が勝手に“温泉モード”に切り替わる距離感なんだ。
● 溶岩石の湯――富士そのものに抱かれる感覚
泉水の魅力を語るうえで、これは絶対に外せない。
浴室の随所に使われている富士山溶岩。
黒くてゴツっとした岩肌が湯気の中で輪郭を浮かべる瞬間、
「うわ、富士山の“内側”に来たみたいだ…!」と毎回ワクワクする。
露天風呂はコンパクトだけど、そのぶん空の抜けが気持ちいい。
内湯の温度はしっかり熱く、下山後の疲れた脚がじわ〜っと溶けていく感覚がたまらない。
● サウナも“登山者目線”で優秀
泉水のサウナは、派手じゃないけれどとにかく安定感がある。
入って数分でわかる、あの「疲労物質が勝手に押し出されていく感じ」。
水風呂もキレが良く、火照った身体が一瞬でシャキッと目覚める。
登山の疲れがごっそり抜ける感覚は、1回体験すると忘れられない。
● こんな人におすすめ
- とにかく早く風呂に入りたい派
- 車なし・電車移動で登山してきた人
- 夜遅くまで営業していてほしい人
- 「富士山の溶岩ってどんな感じ?」と気になっている人
● 営業時間・料金(記事公開時点)
営業時間:10:00〜翌朝(曜日により変動)
料金:大人700円前後
休憩スペース・軽食:あり
富士山駅周辺の温泉の中で、派手さはない。
でも“下山後という、いちばんシビアなタイミング”を救ってくれる温泉はここだけだ。
僕が「迷ったら泉水へ行け」と言う理由、それがすべて。
バス5分|富士急ハイランド内 “ふじやま温泉” ― 富士山ビューの王道

富士山駅周辺で“富士山がいちばん迫力ある姿で見える温泉”を挙げろと言われたら、
僕はまず100%の自信でふじやま温泉を推す。
ここを知らずに富士山の温泉を語るなんて、もったいなさすぎる。
しかもアクセスが凄まじく楽。
富士山駅から富士急バスでたった5分。
え、もう着いた? っていうレベルの近さ。
登山帰りのヘロヘロ状態でも、ほぼ“ワープ”感覚で到着できるのが最高だ。
● 圧巻の富士山ビュー露天風呂
ふじやま温泉の露天に出た瞬間、ほとんどの人が一度立ち止まる。
「富士山、デカッ……!」
ほんとに、声が漏れるんだ。僕も初めて見たときはそうだった。
登頂したその日に、また麓から富士山を見上げる――。
この感覚がクセになる。
山の頂上はもちろん素晴らしい。でも麓の湯から見る富士山って、なんだか“別の一面”を見せてくれるんだよね。
登山歴の長い僕でさえ、湯船につかりながら
「いや、今日の富士も最高だな…」とつぶやいてしまう。
そのくらい、露天の富士ビューは破壊力がある。
● サウナと炭酸泉が“登山者泣かせ”のクオリティ
ふじやま温泉はサウナが本気。
温度がしっかり高く、登山で固まった筋肉が一気にゆるむ感覚がある。
そして、僕が登山者にぜひ味わってほしいのが炭酸泉。
ふくらはぎの張りがスーッと取れていくのがハッキリわかる。
「あ、血が流れ直したな」っていう、あの瞬間がきもちいいんだ。
● 富士急ハイランド連動の割引が強い
ふじやま温泉は遊園地と隣接しているから、割引のバリエーションが豊富。
富士急ハイランドのチケットや周辺ホテルとのセットを使うと、かなりお得になる。
“登山→温泉→そのままホテルで倒れ込む” というルートができるのも魅力。
● 食事処と休憩スペースが充実している
広い畳スペース、横になれる休憩室、しっかりした食事処。
身体だけじゃなく、心の疲れも全部おろしていける場所だ。
● こんな人におすすめ
- 富士山がドーン!と見える露天に入りたい
- サウナ・炭酸泉で本気の疲労回復をしたい
- 家族やカップルでも楽しめる温泉がいい
- 富士急ハイランドとセットで動く予定がある
車10分以内|富士吉田〜河口湖エリア “富士ビュー温泉”セレクション

もし少しでも時間と体力が残っているなら、ぜひここからの温泉を候補に入れてほしい。
富士山駅から車で10分圏内には、“富士ビューの破壊力がケタ違い”の温泉が揃っているからだ。
登山後のご褒美としてこれ以上ない場所ばかりで、
紹介している僕自身、書いていてワクワクが止まらない。
では、地元民である僕が本気で推す名湯を順番に紹介しよう。
● 紅富士の湯(山中湖)
ここはもう、説明不要レベルの大絶景。
露天に出た瞬間、「あ、富士山ってこんなに大きかったんだ」と改めて実感する。
冬の早朝に見られる“紅富士”なんて、初めて見ると本当に鳥肌が立つ。
- 真正面にドーンと構える富士山の稜線
- 開放感バツグンの特大露天風呂
- 朝風呂で富士山を独り占めできる日もある
車が使えるなら、ここは本気で“登山後の自分へのご褒美”として行ってほしい。
正直、僕も毎回テンションが上がる。
● 富士眺望の湯 ゆらり(鳴沢村)
ゆらりは、温泉そのものがエンタメだ。
「富士山を包み込むように入る温泉」ってどういう意味?と思うかもしれないけど、
一度入ってみるとマジでその言葉がしっくりくる。
洞窟風呂、蒸し風呂、溶岩風呂……まるで“小さな温泉テーマパーク”。
しかも露天では富士山と空が大きく開けて見え、写真を撮る手が止まらなくなる。
- 富士山ビューの露天風呂が気持ち良すぎる
- 湯の種類が豊富で飽きない
- 食事コーナーの山梨名物ほうとうがうまい
登山の疲れをふわっと吸い取ってくれるような温泉で、
「ちょっと寄るつもりが長居してしまう」人がめちゃくちゃ多い。
● こんな人におすすめ
- 絶景をとにかく楽しみたい
- 家族旅行やカップルでのんびりしたい
- 車・レンタカーで移動できる
- 富士山の写真映えスポットを探している
登山帰りに最適な“富士山駅温泉ルート”を提案

富士山を下山したあとって、本当に体力ゲージがゼロに近い。
足は棒、肩はパンパン、脳は「温泉…温泉…」しか言わない。
だからこそ、“どの温泉へ行くか”で満足度がまるっと変わるんだ。
ここでは、地元で登山ガイドをしてきた僕が、
「これ、登山者は絶対に助かる!」というルートだけを、
移動手段別に本気で紹介する。
(正直、この章を書くのがいちばん楽しい。)
【A】車なし・電車派の登山者向けルート
吉田ルート下山 → 富士山駅 → 泉水(徒歩)
はい、これはもう“王道中の王道”。迷ったらコレ一択。
- 歩く距離は最小限(徒歩8〜10分)
- 夜遅くまで営業している日が多い
- 軽食OKなのでエネルギー補給にも助かる
下山後に「もう歩きたくない…」という日は、
泉水の存在が本当に神。
疲れた身体に“優しさが刺さる温泉”って、このこと。
【B】富士山の絶景を見たい派のルート
吉田ルート下山 → 富士山駅 → バス → ふじやま温泉
これ、初めて行った人の8割が「うわ、ヤバ…」って言うルート。
- 富士山ビュー露天の迫力がとにかく斜め上
- サウナと炭酸泉が登山後の筋肉に効きすぎる
- 休憩スペース広めで、寝落ち注意
“登山のフィナーレは絶景で締めたい派”の人に完璧なルートだ。
僕もよくここで「今日も良い山だったなぁ」としみじみする。
【C】家族旅行・カップル旅でゆっくりしたいルート
吉田ルート下山 → 富士山駅 → 車で紅富士の湯 or ゆらり
- どちらも富士ビューが“写真映えすぎる”
- 館内が広くて家族・カップルでも過ごしやすい
- 夕方は富士山が最高にドラマチック
登山はハードでも、帰りはゆったり贅沢に。
“富士山が微笑んで見える温泉”で、余韻が一気に格上げされる。
【D】温泉→ホテルでじっくり休みたい場合
ふじやま温泉 → 隣接ホテル泊
または
泉水 → 富士急周辺ホテル泊
この動線、登山者には反則級にラク。
温泉→部屋→ベッドの距離が短いって、こんなに幸せなんだと毎回思う。
● 混雑を避けるためのポイント
- ふじやま温泉:夕方〜20時が混みがち
- 泉水:21時以降が狙い目
- 紅富士の湯・ゆらり:夕暮れは写真勢で混むので、少し時間をずらすと快適
ほんの30分ずらすだけで、世界が変わる。
これ、地元民だからこそ伝えたい“裏技”だ。
【比較表】富士山駅周辺の温泉まとめ(徒歩・バス・料金・富士見度)

ここまで読んできて「どこに行けばいいか迷う…!」という人、安心してください。
僕自身も登山帰りに毎回悩むので、その気持ちがよくわかる。
だからこそ、登山者が一発で決められる“本気の比較表”を作った。
アクセス・料金・富士山ビュー・サウナ・朝風呂――。
登山帰りに重要なポイントだけを、ガッとまとめてある。
この表、作りながら僕が一番ワクワクしてたかもしれない。
| 施設名 | アクセス | 料金 | 富士山ビュー | サウナ | 朝風呂 |
|---|---|---|---|---|---|
| 泉水 | 徒歩8〜10分 | 約700円 | ★☆☆☆☆(なし〜弱) | あり(高温) | 一部日程あり |
| ふじやま温泉 | バス5分 | 約1,500円 | ★★★★★(トップクラス) | あり(高温・良質) | なし(通常10時〜) |
| 紅富士の湯 | 車約10〜12分 | 約900円 | ★★★★★(絶景) | あり | あり(日による) |
| 富士眺望の湯 ゆらり | 車約12〜15分 | 約1,500円 | ★★★★☆ | あり(岩盤浴豊富) | なし |
こうして比べると、選ぶ基準が一気にクリアになる。
「徒歩なら泉水」「絶景ならふじやま温泉」「余裕があるなら紅富士の湯かゆらり」
この3行さえ覚えておけば、もう迷わない。
どれを選んでも“外れなし”。
むしろ「また別の日に全部行きたい!」と思わせてくれるラインナップだ。
富士山駅周辺、ほんとにレベルが高い。
まとめ|富士山駅に降りたら、その旅の“続き”は温泉で始まる

富士山駅に降りた瞬間、身体の奥にはまだ登山のスイッチが残っている。
足は疲れているのに、心はどこか興奮している——あの独特の感覚。
そんな時こそ、温泉は「単なるお風呂」じゃない。旅の締め方を決める、大事な“大ラス”だ。
まず近さで助けてくれるのが泉水。
あの距離は本当に反則。下山後の身体には優しすぎる。
そして富士山ビューでガツンと満足させてくれるのがふじやま温泉。
あの露天、初めて見ると絶対テンション上がる。僕も毎回上がる。
さらに時間と余力があれば、紅富士の湯やゆらりの絶景が待っている。
「今日は登山も温泉も両方当たりだったな…」そんな日になること間違いなし。
富士山のふもとの温泉って、どこか“登山者の気持ちをわかってる”んだよね。
疲れた身体だけじゃなくて、胸の奥の興奮や余韻まで、丸ごと受け止めてくれる。
あなたが次に富士山駅に降り立ったとき、
「よし、今日はどの温泉で締めようか」
そうワクワクしながら考えられたら最高だ。
その日の気分で自由に選べる——そんな“富士の湯めぐり”を、ぜひ味わってほしい。
そしてきっと、温泉から上がったあなたは、こう思うはず。
「また富士山に来よう」と。
その瞬間、もう次の旅が始まっている。
FAQ|富士山駅×温泉のよくある質問
Q1. 富士山駅から一番近い温泉はどこ?
富士山溶岩の湯「泉水」です!
徒歩8〜10分で着くので、下山後に“とにかく最短で風呂!”という人に大人気。
僕も登山帰りでヘロヘロのときは、ほぼ自動的にここへ向かっています。
Q2. 富士山が露天から見える温泉は?
迫力が欲しいなら、まずはふじやま温泉一択。
露天に出た瞬間の「富士山ドーン!」が反則級です。
紅富士の湯やゆらりも、写真映えする絶景ビューで負けていません。
Q3. 車なしで絶景温泉に行ける?
はい、行けます!
富士山駅からバス5分のふじやま温泉が最強の選択肢。
車なし派に優しすぎる距離なのに、景色はトップクラスという神仕様です。
Q4. 登山後に混雑を避けるには?
これは地元民ならではの裏ワザ。
泉水 → 21:00以降が狙い目
ふじやま温泉 → 19:30以降が比較的静か
紅富士の湯・ゆらりは夕暮れが混むので、少しずらせば快適に入れます!
Q5. 富士山駅周辺で朝風呂できる温泉は?
泉水が曜日によって早朝から入れます。
紅富士の湯も朝風呂の日があるので、朝の富士山を眺めながら入る贅沢も可能。
朝の温泉は、登山とは別の“富士山のご褒美”みたいな時間です。
情報ソース一覧
この記事を書くにあたって、僕自身が「ああ、やっぱり現地の公式情報って大事だな」と
改めて感じた場所をまとめています。
どの温泉も魅力の塊なので、ぜひ気になったところは
公式ページで“現場の新鮮な情報”をチェックしてみてください。
- ふじやま温泉(公式)|https://www.fujiyamaonsen.jp/
- 富士山溶岩の湯「泉水」(公式)|https://www.fuji-sensui.jp/
- 富士吉田市観光(FujiYamaNavi)|https://www.fujiyama-navi.jp/
- 富士急バス(アクセス確認)|https://bus.fujikyu.co.jp/
- じゃらん 富士山駅周辺温泉ページ|https://www.jalan.net/
※営業時間・料金・サービス内容は季節やイベントで変わることがあります。
「今日はどんな富士山が迎えてくれるんだろう?」というワクワクと一緒に、
事前に公式で最新情報を確認してから向かうのがおすすめです。
下山後は疲労もピークなので、安全第一でゆっくり移動してくださいね。


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