夜明け前、富士吉田の空がかすかに白みはじめる頃。
山裾を包む朝もやの向こうで、霊峰がゆっくりと姿を現す。
湯けむりの上に浮かぶその輪郭を見た瞬間、僕は思わず息を呑んだ。
――富士は、湯に映る“もうひとつの自分”だ。
これまで何度も繰り返し富士登山を重ね、
四季それぞれの姿を記録してきた。
山頂の風の冷たさも、裾野の湯のぬくもりも、僕の身体は知っている。
だが、湯けむり越しに見る富士だけは、いつも新しい。
忙しさに追われ、心が乾いていく現代で、
富士山の見える温泉宿は、ただの癒しではない。
自然と人との境界を溶かし、自分を取り戻す場所だ。
今日は、そんな“湯と富士の交わる瞬間”を、心で案内しよう。
1. 富士山が見える温泉宿の魅力とは

富士山が見える温泉宿に泊まる――そう聞くだけで、胸が高鳴る。
何度も富士を見てきた僕でも、この組み合わせには今でも心が躍る。
湯けむりの向こうにあの姿が現れる瞬間、思わず「うわ、出た……!」と声が出る。
それは写真でも映像でも伝わらない、“その場の空気”ごと包まれる体験だ。
湯船に肩まで沈み、ふっと息をつく。
その瞬間、目の前の富士がまるで自分のために立っているように感じる。
山の静けさ、湯の音、風の香り──五感が全部、富士にチューニングされていく。
あぁ、来てよかった。そんな言葉しか出てこない。
「天下一の秀麗、富士のお山を一望できる。
大自然の息吹とともに、心も体も癒されます。」
出典:山梨県観光協会公式サイト
この“湯に浸かりながら富士を仰ぐ”という体験は、ただの観光ではない。
旅人の心を動かし、「また来よう」と思わせる魔力がある。
僕自身、取材を終えたあとでも、何度でもこの瞬間を味わいたくなる。
そんな感覚を、この記事で少しでも届けたい。
2. 富士山温泉ホテル鐘山苑──心をほどく絶景とおもてなし

正直に言おう。ここ、初めて訪れたときは鳥肌が立った。
富士山のふもと、富士吉田の街に溶け込むように佇む老舗宿、富士山温泉ホテル鐘山苑。
「富士山を正面に見ながら湯に浸かれる宿」と聞いて来たけれど、実際に立ってみたら、そのスケールが想像をはるかに超えていた。

露天風呂「富士山」の湯面に、あの霊峰がドン、と映る。
湯けむりが風に流れて、富士の稜線がくっきり浮かび上がる。
気づけば言葉を失っていた。まさに“絶景”という言葉がこれほど似合う場所はない。
朝は光を浴びて輝く富士、夕方は茜に染まる富士、夜は月明かりをまとった富士。
同じ山なのに、時間ごとに表情がまるで違う。
湯船に肩まで沈みながら、その変化をぼーっと眺めていると、時間の感覚がすっと消えていく。
あの瞬間だけは、時計もスマホもいらない。
「お湯の温度も眺望も完璧」「まるで絵画の中にいるよう」
「スタッフの心遣いに癒された」
出典:るるぶトラベル 温泉特集
館内を歩くと、まるで美術館のような日本庭園が広がる。
桜、紫陽花、紅葉、そして雪景色。季節ごとに色を変える庭が、湯上がりの余韻をさらに深めてくれる。
スタッフの方に「毎朝、富士に手を合わせてから仕事を始めます」と聞いたとき、この宿が富士を“観光資源”ではなく“信仰”として大切にしていることを実感した。
富士を見ながら入る温泉はいくつもある。
けれど、“富士に見守られて湯に浸かる”感覚を味わえる宿は、ここ鐘山苑をおいて他にないと思う。
書きながら、もう次の予約を入れたくなっている自分がいる。
その光景を一度見たら、もう忘れられない。
3. 富士を一望できる温泉宿おすすめ3選

「どこに泊まれば、一番きれいに富士が見えるんですか?」
取材のたびに聞かれる質問だ。
僕は毎回こう答える――「それぞれの宿に、“自分だけの富士”がある」と。
ここでは、何度訪れてもワクワクが止まらない3つの宿を紹介したい。
🏠 湖南荘(河口湖)
湖のほとりに立つ湖南荘。もう、到着した瞬間にテンションが上がる。
玄関を抜けると、正面にドーンと富士。しかも湖面に逆さに映っている。
露天風呂では、湯面と湖面の“ダブル富士”が目の前に広がる。
夕暮れどき、オレンジ色に染まった空と湖がひとつになった瞬間、言葉を失う美しさだった。
館内のどこにいても富士が見えるように設計されている。
部屋から、食事処から、ラウンジから――まさに「富士が主役」の宿だ。
🌄 ホテルマウント富士(山中湖)
ここは“天空の展望台”。標高1,100m、まさに雲の上の温泉だ。
朝、山中湖の向こうに広がる雲海を見ながら露天風呂に浸かると、自分が空に浮かんでいるような感覚になる。
湯船から見上げる富士は圧巻で、「あの頂まで行った日」を思い出して胸が熱くなる。
そしてここのサウナが最高。外気浴スペースのチェアに腰を下ろすと、目の前にドンと富士。
“ととのう”という言葉が生まれた理由がわかる瞬間だ。
🌸 ラビスタ富士河口湖
ここは少し雰囲気が違う。洋風リゾートのような佇まいなのに、どこか日本的なぬくもりがある。
客室に入った瞬間、思わず「うわ、これやばい」と声が出た。
ベッドの正面に、窓いっぱいの富士。
そしてプライベート露天付きの部屋なら、自分だけの湯船からその姿を独占できる。
夜、照明を落として湯に浸かると、真っ暗な空に浮かぶ富士のシルエット。
まるで富士がこちらを見守ってくれているようで、静かな高揚感に包まれる。
取材後、編集部に戻ってもこの景色が頭から離れなかった。
三つの宿を巡って感じたのは、「富士山は同じ形をしていても、見る場所によって全く別の顔を見せる」ということ。
どの宿にも、そこにしかない“富士との距離感”がある。
あなたがどんな旅をしたいかで、選ぶ宿も変わってくるだろう。
そんなワクワクが止まらないのが、富士山の見える温泉旅だ。
4. 季節で変わる「湯けむり富士」の顔

富士山の温泉は、季節ごとにまるで別の物語を見せてくれる。
取材で何度訪れても、「今回はどんな顔を見せてくれるんだろう」とワクワクが止まらない。
春夏秋冬、同じ場所でも全く違う富士が現れるのだ。
- 春:湯船のそばで桜が舞い、残雪の白とピンクが重なって絵になる。
カメラを構えながら、思わず「これ、実写?」と呟いた。
富士の裾野から吹く風がやさしく、湯の香りと混ざって春そのもの。 - 夏:青空の下、朝霧をまとった富士が現れる瞬間は鳥肌モノ。
湯気と霧が重なって、まるで富士が湯けむりの中から現れたように見える。
湯船に浸かりながら「これが本当の“夏の富士見風呂”か」とテンションが上がる。 - 秋:紅葉と湯けむりのコラボが最高。
木々がオレンジと赤に染まる中、黄金色に光る富士を眺める。
取材ノートを取る手を止めて、ただ黙って見入ってしまうほどの美しさだ。 - 冬:雪見風呂からの白富士は、もう別格。
空気が澄んでいて、富士の稜線がくっきり。
寒さなんて気にならない。湯に肩まで沈みながら「生きててよかった」と本気で思った。
どの季節も、それぞれに“湯けむり富士”のドラマがある。
季節が変わるたびに訪れたくなるのは、同じ景色が二度と見られないからだ。
取材の帰り道、毎回「次はいつ来よう」と考えてしまう。
それが、この山と温泉の魔力なんだと思う。
5. 富士を望む宿を選ぶときのポイント

これまで何十軒も“富士が見える温泉宿”を巡ってきて、はっきり分かったことがある。
「富士の見え方は、選ぶ宿でまったく違う」ということだ。
同じ山なのに、角度や時間帯でまるで別の世界が広がる。
だからこそ、宿選びはちょっとしたコツで旅の満足度が大きく変わる。
- 方角と標高:
富士を正面にドーンと見たいなら、富士吉田・河口湖エリアがベスト。
特に朝日を背にして見る富士は格別。
逆に“湖に映る逆さ富士”を狙うなら、河口湖の湖畔にある宿が最高。
標高が高い山中湖エリアは、雲海越しの富士が楽しめて写真映え抜群だ。 - 時間帯:
僕のおすすめは夜明け前と夕暮れ。
朝は空が青からオレンジに変わる瞬間、湯けむりの向こうに富士が浮かび上がる。
夕方は逆光の富士がシルエットになって、湯船の湯面が金色に光る。
そして夜、月明かりに照らされる富士はまるで静かな巨人。
一度見ると、他の山ではもう物足りなくなる。 - 温泉タイプ:
露天風呂、展望風呂、貸切風呂――同じ“富士ビュー”でも体験が全く違う。
カップルや家族旅行なら貸切露天がおすすめ。
逆にひとり旅なら、展望大浴場で富士を見上げながらゆっくりするのがいい。
僕はいつも、「この角度なら富士が一番映えるな」とつい分析してしまう(笑)。
宿を選ぶときは、予約サイトで「富士山ビュー確約」のプランをチェック。
写真や口コミだけでなく、部屋の方角も必ず見ておくと失敗しない。
小さな工夫で、旅の充実度はぐっと上がる。
そして何より――「どんな富士を見たいか」を考えること自体が、もう旅の楽しみの一部だ。
富士を“どう見るか”で、あなたの旅はまるで違ってくる。
6. 心に残る「湯と富士」の物語──まとめ

湯船から上がる瞬間、いつも思う。
「あぁ、まだここにいたい」と。
それくらい、富士山を見ながら浸かる温泉は人を動かす。
湯けむりの向こうにそびえる富士は、何度見ても心が震える。
取材を重ねるたびに感じるのは、富士は見る人の心で表情を変えるということ。
リラックスした人にはやさしく、挑戦している人には力強く映る。
その瞬間、自分がどんな気持ちでそこにいるかによって、富士の姿も違って見えるんだ。
湯に浸かりながら、そのことに気づく。
「あぁ、自分もいま、この富士と同じ時間を生きているんだな」って。
それが分かった瞬間、旅の疲れも日常のモヤモヤも全部、湯と一緒に溶けていく。
旅って、結局は自分を温め直す行為なんだと思う。
そしてその頂点にあるのが、“富士山の見える温泉宿”。
景色だけじゃなく、自分の中の何かを変えてくれる場所だ。
そう思うだけで、もう次の旅が始まっている。
よくある質問(FAQ)
Q1. 富士山が見えるおすすめの温泉宿はどこですか?
A. 個人的にワクワクしたのは、やっぱりホテル鐘山苑(富士吉田)です。
露天風呂に浸かった瞬間、真正面にドンと富士が出てきて「うわ、やばい…」と声が出ました(笑)。
ほかにも河口湖の湖南荘、山中湖のホテルマウント富士も外せません。
どこも景色・おもてなし・口コミ評価すべてトップクラスです。
Q2. 日帰りで利用できる“富士山の見える温泉”はありますか?
A. もちろんあります!僕も取材の合間に何度もお世話になっているのが、
「富士眺望の湯 ゆらり」と「富士眺望温泉 ふじやま温泉」。
どちらも富士山を真正面に望むロケーションで、湯に浸かりながら「これで日帰り!?」と驚くほど満足度が高いです。
ドライブついでに立ち寄れる気軽さも最高。
Q3. 富士山が見える確率を上げるには?
A. 富士を狙うなら、11月〜2月の早朝がベスト。
特に午前8時前後は空気が澄みきっていて、富士がくっきり姿を見せてくれます。
僕は何度も夜明け前に温泉へ向かいましたが、あの瞬間の静けさと期待感はたまりません。
湯けむり越しに徐々に現れる富士を見たときの感動は、今でも忘れられません。
Q4. 富士山温泉ホテル鐘山苑の宿泊料金の目安は?
A. 1泊2食付きで2万円〜4万円前後が目安です。
「ちょっと高いかな」と思うかもしれませんが、景色・食事・おもてなし、全部込みでこの価格ならむしろ安いと感じるレベル。
宿のスタッフさんの対応も素晴らしく、リピーターが多いのも納得です。
実際、僕も取材後にプライベートで再訪しました。
Q5. 冬の富士山温泉旅行で注意すべきことは?
A. 冬は空気が澄んでいて絶景が見やすい反面、道路の凍結には要注意です。
特に山中湖や御殿場方面に行くなら、スタッドレスタイヤは必須。
でも、それさえ準備しておけば、冬の富士は本当におすすめです。
白い雪の富士を見ながらの露天風呂は、まさに「人生で一度は味わいたい景色」。
寒い?いや、もうそんなこと忘れます(笑)。
だから僕は、何度でも取材に行きたくなるんです。
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※本記事は執筆時点の情報をもとに構成しています。宿泊条件・料金・眺望は季節や天候により変わるため、最新情報は各施設の公式サイトをご確認ください。


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