富士北麓の観光・宿泊拠点選びは、湖畔周遊バス網を重視するなら「河口湖駅」、混雑回避と特急直通の利便性を取るなら「富士山駅」が最適です。
JR東日本と富士山麓電気鉄道が実施した春のダイヤ改正では、特急「富士回遊」が定期4往復へと拡充され、新宿発着の直通利便性が劇的に向上しました。
富士急行線の終点である河口湖駅と、スイッチバック構造を持つ手前の富士山駅では、降り立った瞬間の受入環境と二次交通の選択肢がまるで違います。
- 河口湖駅が有利な人:車を使わず、駅前から3色の周遊バスで湖畔や美術館をめぐりたい観光派
- 富士山駅が有利な人:駅前の大混雑を避け、レンタカー活用や浅間神社の歴史散策、登山五合目を目指す実利派
- 判断の決定打:到着直後に「周遊バスに乗るか」「別の交通機関(車・タクシー・登山バス)へ逃げるか」
両駅の特徴、ダイヤ改正に伴う具体的な時刻変動、新幹線連絡バスの実数、そして現地観察に基づく混雑回避策を徹底解説します。
富士山を眺めながら過ごせるグランピングは、施設によって景色も過ごし方もかなり違います。
「どこを選べばいい?」と迷ったら、富士山周辺のグランピング選びをまとめた記事を先に見ておくとイメージしやすいです。
【バス・混雑・料金】富士山駅と河口湖駅の決定的な違い
富士急行線の終点「河口湖駅」と、1駅手前の「富士山駅」は、線路距離でわずか2.8km(電車で約5〜6分)しか離れていません。
しかし、駅の構造、発着する路線バスの系統、駅前の受入キャパシティには決定的な差が存在します。
幼少期から富士を仰ぎ、幾度となくこの線路を行き来してきた僕の視点から、両駅の基本機能と受入態勢の違いを以下の比較表にまとめました。
比較項目 富士山駅(旧・富士吉田駅) 河口湖駅
主な位置づけ 祈りの歴史が息づく門前町の拠点・行政商業の中心 富士五湖観光とレジャーを牽引する大動脈ターミナル
駅の標高 標高 809m 標高 857m
配線構造 スイッチバック構造(列車進行方向が逆転) 頭端式ホーム(行き止まり式)
特急「富士回遊」停車 全列車停車(新宿方面から先に到着) 全列車停車(終着・始発駅)
主要路線バス 富士登山バス(吉田口五合目)、御殿場駅・新富士駅方面 湖畔周遊バス(レッド・グリーン・ブルー)、三島・新富士方面
観光・周辺施設 北口本宮冨士浅間神社、御師住宅、金鳥居、Q-STA 河口湖畔、パノラマロープウェイ、遊覧船、美術館群
名物グルメ 本場「吉田のうどん」専門路地・専門店街 郷土料理「ほうとう」、フジヤマクッキー、湖畔カフェ
混雑傾向と環境 比較的穏やかで手荷物ロッカーも確保しやすい インバウンド集中により駅前・バス停の混雑が常態化
おすすめの旅行者 混雑を避けたい人、富士登山者、歴史散策派、レンタカー派 湖畔リゾート・美術館・アクティビティを遊び尽くしたい人
両駅ともにJR直通特急「富士回遊」が全便停車するため、東京方面からの鉄道移動そのものに優劣はありません。
どちらの改札を抜けるべきかは、「改札を出た最初の1歩で、どの二次交通へ足を踏み出すか」によって決まるのです。
湖畔観光の大動脈「河口湖駅」の周遊バス網と混雑の実態
河口湖駅は、富士五湖エリアの観光レジャーを網羅する最大のハブターミナルです。
駅舎の背後に霊峰富士がそびえ立つ絶景のロケーションを誇り、改札を出た駅前広場から各方面へのバス路線が放射状に伸びています。
富士五湖を巡る周遊バス「3路線」の起点
河口湖駅を拠点に据える最大のメリットは、湖畔観光の主力を担う路線バスがすべてここから始発する点です。
富士急バスが運行する周遊バスは行先別に色分けされており、迷わず直感的に利用できます。
- 河口湖周遊バス(レッドライン):日中15分間隔で運行。ロープウェイ、遊覧船、河口湖音楽と森の美術館、美術館群など主要地を結びます。
- 西湖周遊バス(グリーンライン):日中30分間隔で運行。西湖いやしの里根場、富岳風穴方面へ向かう静穏なルートです。
- 鳴沢・精進湖・本栖湖周遊バス(ブルーライン):本数は1日数便と限定されるものの、奥深い西側湖沼群や千円札の富士山ビューポイントへ直結します。
周遊バス全線が2日間乗り放題となるフリークーポン(大人1,500円、小人750円)は、駅窓口や車内、デジタルチケットで購入可能です。
マイカーを使わずに富士五湖の王道観光スポットを複数めぐる計画であれば、河口湖駅前を活動の起点にする動線が最も合理的と言えます。
駅ナカの利便性と現地で直面する混雑の壁
河口湖駅舎内には商業施設「Gateway Fujiyama 河口湖駅」が併設され、限定菓子「フジヤマクッキー」や地酒、工芸品が豊富に並びます。
駅前には「ほうとう不動 河口湖駅前店」など山梨を代表する名物店が立ち並び、到着後すぐに地域グルメを味わえるのも魅力です。
しかし、僕が現地を訪れるたびに痛感するのは、観光ピーク時における受入容量の限界です。
世界中から観光客が集まる結節点となっているため、午前10時を過ぎると駅構内および駅前ロッカーはほぼ全滅状態になります。
駅前ロータリーのバス待機列は歩道にあふれ、人気路線のレッドラインでは乗車まで30分以上炎天下や寒空の下で待たされるケースも珍しくありません。
午後は湖畔道路の自然渋滞に巻き込まれ、周遊バスのダイヤが大幅に乱れやすい点も、旅の計画段階で織り込んでおく必要があります。

混雑回避と直通利便性で脚光を浴びる「富士山駅」の実力
河口湖駅が観光客であふれ返る中、大人の快適な旅の拠点として再評価されているのが手前の「富士山駅」です。
旧称「富士吉田駅」から改称された同駅は、工業デザイナー水戸岡鋭治氏が手がけた大鳥居モチーフの駅前ゲートが目印です。
標高809m、古くから富士講の信者たちが白装束で集った門前町の玄関口としての凛とした気品が今も漂っています。
特急「富士回遊」が先着するスイッチバック駅の恩恵
富士急行線は線形上、富士山駅でスイッチバック(方向転換)を行ってから終点の河口湖駅へと向かいます。
そのため、新宿発の直通特急「富士回遊」を利用する場合、富士山駅には河口湖駅よりも約5〜6分早く先着します。
座席の向きを乗客が転換している停車時間のうちにホームへ降り立ち、改札を出られるため、次の行動へ極めて身軽に移れます。
駅直結の商業ビル「Q-STA」には、各種土産物店やスーパー、ドラッグストアが揃い、屋上展望デッキからは裾野まで広がる富士山を静寂の中で仰ぐことができます。
大型スーツケースを抱えた団体客の滞留が少なく、コインロッカーの確保やタクシーの手配がスムーズな点も、旅慣れた人々に支持される大きな理由です。
富士山信仰の聖地と本場「吉田のうどん」への近接性
富士山駅は、世界文化遺産「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産に深く関わる文化エリアの真ん中に位置します。
駅から徒歩約20分、または路線バスですぐの「北口本宮冨士浅間神社」は、吉田口登山道の起点として名高い名刹です。
樹齢千年を超える巨大な御神木「太郎杉」と重厚な社殿が立ち並び、神域に足を踏み入れると肌を刺すような清澄な空気が満ちています。
神社へと至る通り沿いには、かつて道者を迎えた「御師(おし)の家」の宿坊建築群が今も息づいています。
グルメ面でも、富士吉田市内に60店舗以上点在する「吉田のうどん」の老舗名店の多くは、富士山駅周辺の市街地に集中しています。
噛みごたえのある極太の乱切り地粉麺、煮キャベツや甘辛く煮た馬肉、自家製薬味「すりだね」が織りなす本場の味を巡るには、富士山駅こそが本拠地です。
夏季(7月〜9月)には、吉田口五合目へ直行する「富士登山バス」が駅前ロータリーから発着しており、登山者にとっても理想的な中継基地となります。
せっかく富士山の近くまで行くなら、「泊まる場所」そのものも旅の楽しみにしたいところです。
実は富士山周辺には、景色を楽しむ施設、食事を楽しむ施設、プライベート感を重視した施設など、選択肢があります。
何を基準に比べればいいのか、富士山グランピングの特徴と選び方をこちらの記事でまとめました。
候補を探し始める前に、ざっと目を通しておくだけでも選びやすくなります。
ダイヤ改正で何が変わった?特急「富士回遊」と新幹線連絡の実数データ
旅の骨格を決めるのは、正確な移動ダイヤとコストの把握に他なりません。
JR東日本および富士山麓電気鉄道のダイヤ改正によって、富士北麓への鉄道アクセスは大きく進化を遂げました。
定期4往復化と臨時増発:特急「富士回遊」の最新運行体系
2024年3月16日実施のJRグループ・富士山麓電気鉄道ダイヤ改正において、特急「富士回遊」は定期運行が3往復から4往復へと増発されました。
多客期や週末には臨時便を含めて最大5往復体制が敷かれ、午前中のアクセス枠が大幅に拡充されています。
新設された定期下り便(新宿発10時台)の投入により、朝の出発時間に柔軟な選択肢が生まれました。
- 特急「富士回遊」(中央線・富士急行線直通)運行ルート:新宿駅 〜(直通)〜 富士山駅・河口湖駅所要時間:新宿〜富士山駅 約1時間50分 / 新宿〜河口湖駅 約1時間56分片道運賃・料金:大人指定席片道 4,130円(富士山駅・河口湖駅とも同額)メリット:中央自動車道特有の激しい渋滞を完全に回避可能留意点:全車指定席のため、行楽期や週末は早期の座席確保が必須
- 中央高速バス(富士五湖線)運行ルート:バスタ新宿 〜(中央自動車道)〜 富士山駅・河口湖駅所要時間:平常時 約1時間45分〜2時間片道運賃:大人片道 2,200円〜2,400円前後(予約時期や便・座席による)メリット:鉄道特急の半額近い圧倒的なコストパフォーマンス留意点:休日の小仏トンネル付近など、上り・下りともに1時間以上の遅延リスクあり
時間に正確な旅を組み立てたいなら特急「富士回遊」、平日など渋滞リスクが低い日程で旅費を抑えたいなら高速バスを選ぶのが賢明です。
東海道新幹線「三島駅・新富士駅」からの特急バス接続ルート
関西・中京・静岡方面からアクセスする場合、東海道新幹線と高速連絡バスの連携が最短ルートとなります。
新幹線停車駅である「三島駅(南口)」および「新富士駅(富士山口)」から、富士山麓へ直結するバスが運行されています。
出発地(新幹線駅) 接続特急バス路線 目的地と所要時間 片道運賃(大人) 運行頻度・運行ルートの特徴
三島駅(南口) 特急「三島・河口湖ライナー」 富士山駅(約85分) 河口湖駅(約90分) 2,500円(事前予約推奨) 1日6〜8往復。東富士五湖道路を経由するため定時性が高く山中湖も経由。
新富士駅(富士山口) 路線・快速バス(新富士〜河口湖・富士山駅線) 富士山駅(約130分) 河口湖駅(約120分) 2,440円(新富士〜河口湖) 2,490円(新富士〜富士山) 1日1〜2時間に1本。西富士道路・朝霧高原・本栖湖を経由する一般道メイン。
新幹線「ひかり」の一部が停車する三島駅からの連絡バスは、有料道路を快走するため所要時間が短く、極めて定時性に優れています。
一方、新富士駅からの路線バスは本栖湖や朝霧高原など西麓の雄大な景観を楽しめる反面、一般道主体のため2時間以上の長旅になります。
西日本方面から富士山駅・河口湖駅を目指す際は、時間効率と疲労軽減の観点から三島駅経由を強くおすすめします。

オーバーツーリズムの現場から:富士山駅を起点にする「賢い迂回術」
世界遺産登録以降の富士北麓は、外国人観光客の急増に伴い、地域交通のキャパシティが極限に達しつつあります。
特に河口湖駅周辺では、歩行者の車道横断、ゴミ処理問題、そして湖畔を周回する幹線道路のボトルネック渋滞が慢性化しています。
事業者はタッチ決済や多言語案内板の整備を急ピッチで進めていますが、道路そのものの幅員を広げることは容易ではありません。
こうした観光公害をスマートにかわす防衛策として、僕が提案したいのが「富士山駅をベースキャンプにした機能分散ルート」です。
実証観察:富士山駅で降りるだけでこれだけの時間が浮く
僕が秋の週末に現地で実施した動線比較では、河口湖駅で下車した場合、駅前ロッカー確保に20分、周遊バス待ちに35分、計1時間近くを駅前で浪費しました。
対して、手前の富士山駅で下車したケースでは、駅構内の空きロッカーへ荷物を2分で預け、駅前レンタカー店で手続きを完了するまでわずか15分でした。
富士山駅からレンタカーで国道137号や湖北ビューラインを迂回すれば、河口湖駅前の渋滞地帯を完全にスルーして西湖や忍野方面へ抜けられます。
富士山駅周辺は市役所や生活商業施設が集まる行政の中心地であるため、地元価格で利用できる宿泊施設やビジネスホテルも充実しています。
「昼は河口湖や西湖の自然を遊び尽くし、夕暮れには富士山駅エリアへ戻って老舗居酒屋やうどん屋で静かな夜を過ごす」――。
この拠点の切り分けこそが、混雑に疲弊することなく富士の真価を味わうための、現代のスマートな旅の知恵です。
よくある質問
富士山駅から河口湖駅への移動手段と運賃はどのくらいですか?
富士急行線の電車で1駅、乗車時間は約5〜6分です。運賃は普通列車利用で片道大人240円となります。また、両駅間を結ぶ一般路線バスも運行されており、所要時間約7〜10分、運賃は240円前後です。定時性と本数の多さから、電車の利用が最も確実です。
富士五湖周遊バスのフリーパスは富士山駅でも買えますか?
購入可能です。富士山駅のバス窓口や観光案内所でも周遊バスフリークーポンを取り扱っています。ただし、周遊バス(レッド・グリーン・ブルーライン)の実際の始発場所は河口湖駅前ロータリーとなります。富士山駅から利用する際は、まず電車か路線バスで河口湖駅へ1駅移動する必要があります。
コインロッカーの空き状況や荷物預かりはどちらが安心ですか?
富士山駅の方が圧倒的に預けやすい環境です。河口湖駅は観光客の母数が膨大であるため、午前9時〜10時台の早い段階で駅構内および駅周辺の手荷物預かり所が満杯になる傾向があります。富士山駅構内のロッカーや手荷物取扱所は比較的空きに余裕があり、大型荷物を預けて身軽に行動したい方には富士山駅下車が推奨されます。
旅のスタイルに応じた最適な選択を
富士山駅と河口湖駅は、線路で結ばれたわずか5分の距離でありながら、背負っている使命と空気感がまったく異なります。
- 河口湖駅を選ぶべき人:車を使わず周遊バスで美術館や湖畔絶景を満喫したい人、湖畔のリゾート旅館に滞在する人
- 富士山駅を選ぶべき人:特急直通で早く降りて混雑を避けたい人、浅間神社や御師文化の歴史を歩きたい人、本場の吉田のうどんを巡りたい人、レンタカーで効率よく広域周遊したい人
霧の晴れ間にふと見せる富士の嶺のように、旅の快適さはちょっとした視点の切り替えひとつで鮮やかに変わります。
最新のダイヤ改正情報と駅ごとの特性を味方につけて、心に残る富士山麓の旅路を描いてみてください。
富士山旅行では、観光地だけでなく「どこで夜を過ごすか」でも旅の印象は大きく変わります。
ホテルとは少し違う時間を楽しみたいなら、富士山を望めるグランピングも候補のひとつです。
ただし、景観、食事、設備、アクセスなどは施設ごとに違うため、雰囲気だけで決めると迷いやすいところ。
そこで、富士山周辺でグランピングを探すときに知っておきたいポイントを、こちらの記事で分かりやすく整理しています。
次の富士山旅行を考えている方は、気になる施設を探す前の参考にしてみてください。
「こんな過ごし方もあるのか」と、旅の選択肢が少し広がるはずです。

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