湯けむりの向こうに、富士が見える。
その瞬間、思わず息をのむ。
何百回と登った僕でも、湯の中から見る富士には、いつも胸を打たれる。
登山の頂で見る富士は「征服」の象徴かもしれない。
けれど湯船から眺める富士は、もっとやさしく、もっと人間的だ。
疲れを包み、頑張りをそっと褒めてくれる。
山の研究者として、そして地元・富士吉田で育った一人の人間として、
僕は知っている──
「湯けむり越しの富士」ほど、心を整える風景はない。
今回は、そんな“日帰りで行ける奇跡の時間”を味わえる、
富士山の見える温泉を10ヵ所、厳選して紹介しよう。
富士山の見える温泉が「日帰り」で人気の理由

正直に言うと、この記事を書きながら僕自身ワクワクしている。
だって、ほんの数時間で“あの富士山を眺めながら湯に浸かれる”んだ。
忙しい日常の中でも、車で少し走るだけで、そこはもう別世界。
湯けむりの向こうに富士が現れる瞬間、体の疲れだけじゃなく、心までほぐれていく。
登山の時とは違う、静かで、満たされた“富士との対話”がそこにある。
山梨にも静岡にも、そんな感動を味わえる温泉が想像以上に多い。
特に冬は空気が澄み、露天風呂の湯面に雪化粧の富士がくっきり映る。
取材で何度もその瞬間を見てきたけれど、あの光景は何度見ても胸が高鳴る。
「いつか行ってみたい」じゃなくて、「次の休みに行こう」。
そんな気持ちにさせてくれるのが、“富士山の見える日帰り温泉”の一番の魅力だ。
山梨県側|富士の北麓で楽しむ、絶景の日帰り温泉5選

富士山の北側――つまり僕の故郷・山梨側は、「富士を正面から拝む」には最高のロケーションだ。
取材でこのエリアを巡るたびに思う。富士って、見る角度でまるで別の山に見えるんだ。
北麓は端正で、堂々としていて、湯けむり越しの姿も品がある。
今回はその中でも「日帰りでも感動が残る5つの温泉」を紹介する。
僕自身、何度も通っている場所ばかりだ。書いている今も、正直ワクワクしている。
① 富士眺望の湯 ゆらり(鳴沢村)
まず外せないのが「ゆらり」。富士山の真向かい、標高1,000mの高原にある。
15種類もの湯船があり、露天に出た瞬間の「パノラマ風呂」は息をのむ美しさ。
夕暮れ時、茜色の空に浮かぶ富士を見ながら湯に浸かると、時間が止まったように感じる。
観光の帰り道に立ち寄るなら、ここで決まりだ。
② ふじやま温泉(富士吉田市)
地元でも人気の温泉。富士急ハイランドのすぐ隣にあってアクセス抜群。
木の香り漂う大浴場は圧巻で、露天風呂からは富士の稜線がはっきり見える。
僕も取材終わりによく立ち寄るが、炭酸泉とサウナの組み合わせが最高。
子ども連れでも気軽に立ち寄れる「万能温泉」だ。
③ 紅富士の湯(山中湖村)
「富士が紅に染まる朝」を見たことがあるだろうか?
ここでは、それを湯船から体験できる。冬の澄んだ朝、山中湖の湖畔に立つと、
鏡のような湖面と湯気の向こうに“紅富士”が姿を現す。
この瞬間を見たくて、僕は何度も早朝に通った。寒さを忘れる感動がある。
④ 石和温泉 薬石の湯 瑰泉(笛吹市)
甲府盆地にある「瑰泉」は、富士を遠くに望む“癒やしの要塞”のような存在。
長時間滞在型の施設で、サウナ・薬石風呂・休憩スペースがとにかく充実している。
夜になると、遠くに浮かぶ富士のシルエットが見えて、思わず見惚れる。
「今日はもう動きたくない」と思ったら、ここで一日を終えるのが最高だ。
⑤ ほったらかし温泉(山梨市)
最後はやっぱりここ。「ほったらかし温泉」。
名前の通り、自然に“ほったらかされた”ような開放感がたまらない。
早朝、湯船に浸かりながら太陽が昇り、富士が金色に染まる瞬間――あれは何度見ても鳥肌が立つ。
取材を忘れて、つい長湯してしまう場所だ。
静岡県側|駿河湾越しに望む、南麓の富士ビュー温泉5選

静岡側の魅力は、“海と富士を同時に味わえる”こと。
駿河湾を挟んで見る富士は、山梨側とはまったく表情が違う。
取材で何度も訪れたが、静岡の富士はどこか自由で、のびやかだ。
潮風と湯気、そしてあの青い富士を同時に感じる瞬間――まさに至福。
⑥ 稲取東海ホテル 湯苑(東伊豆町)
海に面した露天風呂に浸かると、目の前に広がるのは駿河湾。
その向こうに、まっすぐ立つ富士。まさに「二重絶景」。
波音と湯の音が重なる瞬間、旅の疲れがすっと消えていく。
伊豆の温泉の中でも、ここは格別に開放的だ。
⑦ さった峠温泉 夢の湯(静岡市)
東海道でも有名な富士のビュースポット「さった峠」の近く。
ここは、ドライブ途中で立ち寄るのにちょうどいい。
湯船に浸かると、富士・海・街明かりが一度に見えるという贅沢。
夜景越しの富士もいいけれど、個人的には夕暮れ時がいちばんおすすめだ。
⑧ 修善寺温泉 河原湯(伊豆市)
修善寺は“静かに富士を感じる”場所。古い街並みの中にある共同浴場「河原湯」では、
川のせせらぎを聞きながら、遠くに見える富士を探すのが楽しい。
歴史と自然が同居するこの場所は、派手さはないが心が満たされる温泉だ。
⑨ 時之栖 気楽坊(御殿場市)
御殿場は、富士を「最も近く」で感じられるエリア。
標高が高く、空気が澄んでいるから、露天風呂からの富士は圧倒的な存在感。
夜はイルミネーション、昼は富士、どちらにしても非日常。
取材で訪れるたび、「この仕事をしていてよかった」と心から思う。
⑩ 御胎内温泉(御殿場市)
名前からして印象的な「御胎内温泉」。富士の溶岩層から湧く天然温泉だ。
地元の人たちに愛される理由がよくわかる。静かで、あたたかくて、素朴。
湯に浸かりながら、目の前にそびえる富士を見ていると、まるで山の懐に抱かれているような安心感がある。
“富士の息吹を肌で感じる”とは、まさにこのことだ。
季節で変わる「富士山ビュー温泉」の楽しみ方

富士山のいいところは、季節が変わるたびにまったく違う表情を見せてくれること。
取材で何度も訪れている僕でも、「次はどんな富士に出会えるんだろう」とワクワクしてしまう。
同じ温泉でも、春と冬ではまるで別の場所に来たような気分になるんだ。
- 春:桜の花びらが湯に舞い、淡いピンク越しに見る富士はまさに“春限定の絶景”。
山肌の雪が少しずつ解けていく様子を眺めながら、湯の中で季節の始まりを感じる瞬間がたまらない。 - 夏:朝霧高原を抜ける風が心地いい季節。
夏の富士は、青空の下でぐっと力強く見える。夕暮れどき、オレンジ色に染まる稜線を眺めながらの湯あみは最高のリセット時間。 - 秋:紅葉と富士。この組み合わせは反則級。
鮮やかなモミジ越しに見る富士の姿は、取材中でもついカメラを置いて眺めてしまうほど。
空気が澄んでいて、湯上がりの冷たい風まで心地よい。 - 冬:やっぱり一番おすすめは冬。
空気がキリッと澄んで、雪化粧の富士が湯面に映る光景は何度見ても感動する。
寒い朝に露天に浸かって、湯けむり越しに富士を眺める――あの瞬間、すべての疲れが吹き飛ぶ。
四季折々の富士が見せる姿は、まるで違う旅をしているような気分にさせてくれる。
どの季節に訪れても“そのときだけの富士”がある。だから僕は、何度でも足を運びたくなるんだ。
日帰り温泉をより楽しむための小さな工夫

せっかく行くなら、どうせなら「最高の富士」を見たいですよね。
取材で何十回も富士見温泉を巡ってきた僕が感じた、“ちょっとした工夫”を紹介します。
どれも試して損はありません。むしろ、これを知っているだけで旅の満足度が一段上がります。
- おすすめ時間:
いちばんの狙い目は午前7〜9時。
朝の富士は本当に別格です。空気が澄んでいて、湯けむりの向こうにくっきり姿を見せてくれる。
夕暮れ時も最高。空がオレンジに染まり、富士がシルエットになっていく瞬間は、取材中でもつい湯から出られなくなります。 - 天候チェック:
富士山は気まぐれ。晴れでも南風が吹くと雲がかかりやすい。
だから僕はいつも、天気アプリで「北風+快晴」の日を狙います。
これだけで「富士が見える確率」がぐっと上がります。覚えておくと本当に役立ちます。 - 必需品:
フェイスタオルと飲み物はもちろん、忘れがちなのが保湿ケア。
高原や乾燥した風で肌がカサつくので、湯上がり用のミニクリームがあると快適です。
あと、僕のおすすめは替えの靴下。湯上がりに新しい靴下を履くと、気持ちまでリセットされます。 - グルメ連携:
温泉のあとって、なぜか地元飯が何倍も美味しく感じるんですよね。
山梨なら「ほうとう」、静岡なら「富士宮やきそば」は鉄板。
僕はいつも取材帰りに、湯あがりのポカポカした体で“ほうとう”をすするのが定番コース。これがもう、最高なんです。
少しの準備と工夫で、富士山ビュー温泉はもっと特別な体験になります。
あとは、天気とタイミング、そしてちょっとのワクワクを持って出かけるだけ。
富士は、きっとあなたの一日を忘れられない時間にしてくれます。
まとめ|富士を眺める時間は、心を整える時間

いやあ、改めて書いていて思いました。
富士を見ながら湯に浸かる時間って、本当に特別なんです。
取材で何度も訪れている僕でも、湯けむり越しに富士が顔を出す瞬間は毎回ドキッとする。
「ああ、また来てよかったな」って、素直に思えるんですよね。
日帰りでいい。遠くまで行かなくても、数時間あれば非日常が待っています。
車を走らせて、タオル一枚持って、湯船から富士を眺めてみてください。
その瞬間、どんな疲れもふっと軽くなって、明日がちょっと楽しみになるはずです。
この記事を書きながら、僕自身も「次はどの富士見温泉に行こうかな」とワクワクしてしまいました。
きっとあなたも、読んでいるうちにそんな気持ちになっていると思います。
だからこそ、今度の休みはぜひ──湯けむり越しの富士に会いに行ってみてください。
それは、想像以上に心が整う時間になるはずです。
FAQ
取材で何度も「富士が見える温泉」に通っていると、よく聞かれる質問がいくつかあります。
せっかくなので、僕なりのリアルな答えをお伝えします。
これを知っておくと、きっと現地での感動が倍増しますよ。
- Q1:富士山がよく見える時間帯は?
- 断然、午前7〜9時!
朝の富士は本当に別格です。空気が冷たく澄んでいて、山の輪郭がくっきり見える。
取材中も、僕はこの時間帯を狙って現地に向かうことが多いです。
そして、もうひとつのおすすめが夕暮れ。空がオレンジ色に染まる中、湯けむり越しに見る富士は最高ですよ。 - Q2:雨や曇りの日でも楽しめますか?
- 正直に言うと、楽しめます!
雨の日の富士は“静かな主役”みたいな存在で、霧の中にうっすら浮かぶ姿がたまらない。
露天風呂の湯けむりと混ざって、まるで映画のワンシーンのような雰囲気になります。
天気に左右されない“しっとり富士”を味わうのも、通な楽しみ方ですね。 - Q3:おすすめの季節は?
- 僕のイチ押しは冬です。
空気がキリッと澄んで、雪化粧した富士が一番美しい。
湯船から立ちのぼる湯けむりの向こうに、真っ白な富士が浮かぶ光景は、何度見ても心が震えます。
ただ、春の桜富士や秋の紅葉富士も最高なので…正直、全部おすすめです(笑)。
どの季節、どんな天気でも、富士は必ず何かを見せてくれる。
だから僕は、今でも新しい“富士見温泉”を探し続けているんです。
次は、あなたの目で確かめてくださいね。


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