朝、中央道を西へ走るたびに思うんです。フロントガラスの向こうで、富士山の輪郭が少しずつ濃くなっていくあの時間こそ、旅の本当の始まりだと。
大学では地理学を専攻し、富士山の火山地形や富士五湖の成り立ちを研究テーマに選び、その後はガイドやライターとして、季節ごとの富士五湖を何度も取材してきました。観光としての富士五湖も、研究対象としての富士五湖も、両方見てきた人間だと自負しています。
これまでに、河口湖と山中湖のあいだの道を、取材や案内で何百回と走りました。真冬の凍てつく朝、ラベンダーが揺れる初夏、紅葉が湖面に映り込む晩秋──同じルートでも、季節と時間帯が変わるだけで、まるで別の物語を見ているようでした。
そんな中で気づいたのは、「富士五湖は全部回ろうとすると、どれも中途半端になってしまう」ということです。世界遺産の構成資産としても位置づけられているこのエリアは、本来じっくり味わうべき場所なのに、ガイドブック的な“制覇”ルートに乗せられて、駆け足で通り過ぎてしまう人が多い。そこに、ずっともったいなさを感じてきました。
だから今日は、僕自身が何度も検証してきた「河口湖から山中湖へ抜ける、教科書どおりだけど、ちゃんと心に残る1日モデルコース」をお届けします。単なるおすすめスポットの羅列ではなく、「どの時間に、どの湖で、どんな景色と空気に出会ってほしいか」を、時間軸に沿って組み立てたプランです。
「富士五湖って、結局どこを回ればいいの?」「日帰りじゃ物足りないかな?」──そんな迷いは、ひとまずここに置いていってください。この記事を読み終えるころには、そのまま真似するだけでいい“欲張り1日プラン”が、あなたの旅ノートの最初のページを埋めているはずです。
- 富士五湖エリアってどんな場所?王道1日プランの前に知っておきたい基本
- モデルコース全体像|河口湖〜山中湖を巡る「富士五湖 王道1日プラン」
- 午前編|河口湖で“ザ・富士山”な絶景を押さえる(大石公園〜北岸エリア)
- ランチ&カフェ|富士山を眺めながら食べたい“ごほうび時間”
- 午後前半|ロープウェイ or 美術館で“物語のある富士山”に出会う
- 午後後半|河口湖から忍野八海を経由して山中湖へドライブ
- 夕方〜夜|山中湖で静かな湖畔時間と温泉を楽しむ
- 車なしでも行ける?電車&バスで回す場合のアレンジ案
- 季節別のおすすめ&注意点|春夏秋冬でどう変わる?服装・混雑・道路事情
- よくある質問(FAQ)
- まとめ:たった1日でも、「また富士五湖に帰ってきたくなる」ルートに
- 参考・引用情報ソース
富士五湖エリアってどんな場所?王道1日プランの前に知っておきたい基本

せっかく「富士五湖の1日旅」に出るなら、まずはステージとなるエリアのことを、ざっくり頭に入れておきましょう。ここを押さえておくだけで、このあと紹介するモデルコースの“意味”がぐっと立体的に見えてきます。
僕たちが「富士五湖」と呼ぶとき、それは次の五つの湖のことを指します。
- 山中湖(やまなかこ)― 富士山に一番近い、高原リゾートの湖
- 河口湖(かわぐちこ)― 観光拠点&絶景スポットがぎゅっと集まる湖
- 西湖(さいこ)― 静かで落ち着いた、森に抱かれた湖
- 精進湖(しょうじこ)― 「子抱き富士」が見られる、小さな湖
- 本栖湖(もとすこ)― 千円札の富士山でおなじみ、青の深い湖
この五つの湖はいずれも、富士山北麓の火山活動によって生まれた“火山の子どもたち”です。そして今は、世界文化遺産「富士山」の構成エリアとして、公式にも“富士山の風景を語るうえで欠かせない場所”とされています。日本政府観光局(JNTO)の公式情報でも、一年中、富士山の景色とアウトドアが楽しめる代表的なエリアとして紹介されている、まさに王道中の王道エリアです。
…と、ここまで読むと、こう思いませんか?
「せっかくだから5つ全部まわりたい!」
その気持ち、めちゃくちゃわかります。僕も10代のころ、最初は「一日で全部制覇してやるぞ」と意気込んで車を走らせました。でも実際にやってみると、どの湖も「ちょっと寄って写真を撮って終わり」になってしまって、帰り道にふと物足りなさが残るんです。
そこで、ガイドとして何度もルートを組み直しながら行き着いたのが、この二つの湖でした。
- 観光スポットと飲食店が豊富で、公共交通の玄関口にもなる河口湖
- 富士山に最も近く、夕景と温泉で一日を締めくくれる山中湖
この「河口湖+山中湖」の2湖にしぼった日帰りプランは、富士五湖デビューの“ベストな入口”だと本気で思っています。ここをしっかり味わっておくと、次に西湖・精進湖・本栖湖へ足を伸ばすとき、「あ、同じ富士五湖でもこんなに雰囲気が違うんだ」と何倍も楽しめるからです。
最初の一歩で大事なのは、「全部を見る」ことではなく、「ちゃんと心に残る湖をつくる」こと。
その意味でも、迷わずに済む“王道ルート”からスタートするのが、いちばんワクワクを長持ちさせてくれます。
モデルコース全体像|河口湖〜山中湖を巡る「富士五湖 王道1日プラン」

ここからが本題です。いよいよ、今日あなたがどう動くかの「1日の設計図」を一緒に組んでいきましょう。僕自身が何度も試して、「これなら初めてでも無理なく回れて、ちゃんと感動が残る」と確信している流れです。
まずは、ざっくりとタイムテーブルをイメージしてみてください。
- 09:00 河口湖北岸(大石公園周辺)で逆さ富士&湖畔散策
- 11:00 河口湖南岸・東岸エリアでランチ&カフェタイム
- 13:00 ロープウェイ or 美術館・博物館で“物語のある富士山”にふれる
- 15:00 河口湖から忍野八海へドライブ、湧水の村で休憩
- 16:00 山中湖に到着、湖畔散歩&カフェ
- 18:00 山中湖近くの温泉で締め、東京方面へ帰路へ
どうでしょう。こうして並べてみると、「思ったよりギュウギュウじゃないな」と感じませんか?
渋滞がなければ、河口湖〜山中湖間は車で約30〜40分ほど。途中で忍野八海に立ち寄っても、しっかり日帰り圏内です。僕がガイドするときも、このくらいのペース配分にしておくと、写真を撮ったり、ちょっと寄り道したりしても、夕方にバタバタしません。
しかも、この並びにはちゃんと狙いがあります。
- 午前:光がきれいな時間に、河口湖の「ザ・富士山」な絶景を押さえる
- 昼:お腹が空いているタイミングで、ご当地グルメ&カフェを楽しむ
- 午後:疲れが出てくる時間帯には、ロープウェイや美術館でのんびり
- 夕方〜夜:一日のクライマックスを、山中湖の夕景と温泉に持ってくる
「渋滞情報よりも大切なのは、どの景色を“見逃さないか”ということ。」
この1日プランは、まさにその発想で組んでいます。“富士五湖らしい景色+ご当地グルメ+温泉”を、ちゃんと余白を残しながら全部味わえるように、時間の順番と場所の組み合わせをかなり細かく調整してきました。
ここから先の章では、このタイムテーブルを一本の映画のように、シーンごとに切り出して案内していきます。
「朝の河口湖編」「お昼のグルメ編」「午後の寄り道編」「山中湖の夕景編」──自分がその中を歩いているつもりで、読み進めてみてください。
午前編|河口湖で“ザ・富士山”な絶景を押さえる(大石公園〜北岸エリア)

大石公園で、湖面に浮かぶ逆さ富士を狙う
まずは、王道中の王道からいきましょう。富士五湖の中でも、河口湖は「観光の拠点」として一番名前が挙がる湖です。公式な観光情報でも玄関口として紹介されることが多く、「とりあえず河口湖」という選び方は、実はかなり正解なんです。
その河口湖で、僕が「朝イチならここしかない」といつも案内しているのが、北岸の大石公園(おおいしこうえん)周辺です。富士山と湖と花、このエリアの主役たちが、一枚の写真の中にきれいに収まってくれる場所。
初夏はラベンダー、秋は真っ赤なコキア、冬は雪をかぶった富士山。季節が変わるたびに「同じ場所なのに、まったく別の観光地みたいだな」と思わされます。ガイドとして何度も来ていますが、正直いまだにテンションが上がります。
そして、ここでぜひ狙ってほしいのが、湖面に富士山が映り込む「逆さ富士」です。風が弱く、湖が鏡みたいに落ち着く朝、湖面にもう一つの富士山が浮かび上がります。これが出た瞬間、お客さんからだいたい「うわ…」という素の声が漏れます。それぐらいインパクトがあります。
写真を撮るコツと、静けさを味わうコツ
せっかく行くなら、「ただ行ってみた」で終わらせずに、ちゃんとベストに近い状態を狙いましょう。ポイントはシンプルです。
- できれば9時前後までに到着(日が高くなると逆光気味になりやすい)
- 前日〜当日の天気予報をチェックして、雲が少なそうな日を選ぶ
- 湖面の風が弱まるタイミングを、少し待つ余裕を持つ
難しい機材や設定よりも、「時間帯」と「風」を意識するだけで、写真のクオリティは一気に変わります。スマホでも十分「これアイコンにしたい…」というレベルの一枚が撮れるはずです。
そして、ここは“撮影スポット”である前に、ただ座ってぼーっとしていたくなる場所でもあります。ベンチに座ってコーヒーを飲みながら、富士山の表情が少しずつ変わっていくのを眺める…。ガイドとして案内していても、つい仕事を忘れて一緒に見入ってしまうことがあります。
もし雲が多くて富士山が隠れてしまっても、「今日はハズレだ」とガッカリする必要はありません。湖畔の遊歩道を少し歩くだけでも、花の咲き方や空気の冷たさ、聞こえてくる音が街とはまったく違うことに気づくはずです。まずはここで、“富士五湖モード”にスイッチを切り替えていきましょう。
ランチ&カフェ|富士山を眺めながら食べたい“ごほうび時間”

午前中に大石公園まわりを歩き回って、写真もたっぷり撮ったら…いよいよお待ちかねのランチタイムです。ここから先は、真面目な観光というより、完全に「ごほうびの時間」。僕もいつもテンションが上がるパートです。
ほうとう or 湖畔レストラン、どっちにする?
まずは王道からいきましょう。河口湖グルメといえば、やっぱり山梨名物の「ほうとう」です。味噌ベースの熱々スープに、太くてモチモチの麺、かぼちゃやきのこ、根菜がゴロゴロ入った一杯は、特に秋冬の冷えた体にガツンと効きます。
僕は真冬の取材のあと、外でカメラを構えて指先がかじかんだ状態でお店に入って、ほうとうをひと口すすった瞬間に「うわ、これ反則だ…」と本気で声が出ました。体の中から一気に溶けていく感じ、ぜひ体験してほしいです。
一方で、湖畔のレストランやカフェも相当レベルが高いです。大きな窓から富士山と河口湖をドーンと眺めながら食事ができるお店、テラス席から富士山を正面に望めるカフェ…「どこも良さそうで選べない問題」が発生します。
- 「まずはほうとうで山梨らしさを味わいたい!」という人は、河口湖駅〜湖南岸エリアへ
- 「せっかくならランチの間じゅう富士山を眺めていたい」という人は、北岸〜東岸の湖畔レストランへ
どっちを選んでも正解です。なので、ここはあえて「どれが一番か」を決めに行くのではなく、自分のその日の気分に素直に決めてしまうのがおすすめです。
せっかくの富士五湖ですから、スマホでひたすら店を比較して迷う時間を、湖畔のカフェでぼんやり外を眺める時間に置き換えてしまいましょう。そのほうが、旅の満足度は確実に上がります。
混雑を避ける小さなコツ
人気エリアだけあって、休日や連休はどうしても混みます。でも、ちょっとしたコツでストレスはかなり減らせます。
- ゴールデンウィークや夏休みなどピーク時は、11:30以前に入店を目標に動く
- どこも並んでいる日は、テイクアウトできる店を選んで湖畔のベンチでピクニックランチに切り替える
- 雨の日は無理せず、屋内席のあるカフェ・レストランを優先して探す
「絶対にこの店じゃないと嫌だ!」と決めすぎると、待ち時間に疲れてしまいます。
一方で、「このエリアで、富士山を眺めながら食べられればOK」くらいの気持ちでいると、選択肢が一気に広がって、旅がぐっとラクになります。
午前中に稼いだ“歩数”を、ここでしっかり回収するイメージで。お腹と心を満たしてから、午後の「まだまだ続く富士五湖タイム」に向かいましょう。
午後前半|ロープウェイ or 美術館で“物語のある富士山”に出会う

お腹も心も満たされたら、午後はもう一段ギアを上げていきましょう。ここからは、ただ「写真映えする富士山を見る」だけじゃなくて、ちょっと視点を変えて富士山と仲良くなる時間です。
ロープウェイで、俯瞰の富士山へ
河口湖周辺には、湖と富士山をセットで見下ろせる展望スポットがいくつかあります。ロープウェイに乗り込んで、ぐんぐん高度が上がっていくあの感じ…何度乗っても、僕はちょっとワクワクしてしまいます。
さっきまで自分が歩いていた湖畔が、どんどん小さくなっていく。地図アプリの中にいた景色が、そのまま立体になって目の前に広がる。そして、その奥にドンと構える富士山。
「あ、さっき写真を撮ってた大石公園、あそこだ」
「湖って、こういう形をしてたんだ」
こんなふうに、さっきまでの自分の行動を上から振り返れる瞬間が、僕はすごく好きなんです。
ただの“展望台”じゃなくて、午前中の時間ごと丸ごと見下ろして、ちゃんと旅を味わい直せる感じ。
写真ももちろんたくさん撮ってほしいけれど、ここはぜひ数分でいいので、カメラやスマホをしまってみてください。風の音や、ロープウェイの小さなきしむ音、人のざわざわした声。その全部をセットで覚えておくと、あとで写真を見返したときに、一気にあの時間に戻れます。
雨の日や暑い日は、美術館・博物館へ避難するのもアリ
そして、天気がちょっと怪しくなってきたときこそ、個人的にワクワクするのが美術館や博物館です。
富士五湖エリアには、
- 富士山そのものをテーマにした美術館
- 音楽やオルゴールの世界に浸れるミュージアム
- 屋内でゆっくりアートと景色を味わえるスポット
…といった施設が点在しています。外の天気が崩れても、「じゃあ今日は富士山の“中身”を見に行こう」と気持ちを切り替えられるのが、このエリアの強みです。
実際、ガイドをしているときも、急な雨で「どうしよう…」という空気になったところから、美術館に入ってみたら、みんなが逆にテンション上がって帰ってくる、なんてことがよくあります。
外の景色がぼんやりしている日こそ、富士山の歴史や文化、信仰の物語に触れてみる。
午後の数時間をそんなふうに使うと、「ただ景色を見に来た旅行」から一歩先に進んだ気分になれます。
ロープウェイで“俯瞰の富士山”を楽しむか、
美術館で“物語の富士山”に出会うか──。
どちらを選んでも、この午後の時間は、きっとあなたの旅のハイライトのひとつになります。僕はその場面を思い浮かべながら、このパートを書いていて、今も正直ワクワクしています。
午後後半|河口湖から忍野八海を経由して山中湖へドライブ

河口湖をあとに、湧水の村・忍野八海へ
午後前半でロープウェイや美術館を楽しんだら、いよいよ車を山中湖方面へ走らせます。ここからがまた楽しいんですよ。せっかくなので、ただ移動するだけじゃなくて、「寄り道込みのドライブ」にしてしまいましょう。
その寄り道先として、僕が毎回のように組み込むのが、富士山の湧水がつくる八つの池からなる忍野八海(おしのはっかい)です。
初めて来た人がだいたい同じリアクションをします。
池をのぞき込んだ瞬間の、
「え、底までこんなにはっきり見えるの?」
本当にそのくらい透明度が高くて、水の色も深い青やエメラルドグリーンに見えたりします。池の向こうに富士山が顔を出してくれる日もあれば、雲に隠れてしまう日もありますが、どちらにしても、水の音と古い民家の雰囲気だけで「来てよかったな」と思える場所です。
ここでは、ソフトクリームや団子を片手に、ちょっとだけ“今日の振り返りタイム”を作ってみてください。
午前の河口湖、大石公園での逆さ富士。お昼のほうとうや湖畔カフェ。午後のロープウェイや美術館。そして今、湧水の村・忍野八海。
スマホの写真フォルダをスクロールしながら、「あ、もうけっこう濃い1日になってきたな」と実感してもらえるはずです。僕はこの“間の時間”が好きで、ガイドのときもいつもここで一息入れます。
峠を越えて、山中湖へ
忍野から山中湖までは、車で約10〜15分ほど。ここからの道がまた気持ちいいんです。なだらかなカーブを抜けていって、ふっと視界が開ける瞬間があります。
その先に、ぱっと青い湖面が現れて、その奥に富士山のシルエットがどん、と構えている。
この景色が見えてくる瞬間は、ガイドとして何度も通っている僕でも、毎回ちょっとワクっとします。
「よし、今日の後半戦がここから始まるぞ」
そんなスイッチが勝手に入る感じです。
朝は河口湖、昼はグルメとロープウェイ、午後は忍野八海、そしてこれから山中湖。
たった1日の中に、まったく違う表情の富士山と湖が次々と出てきます。
この流れを実際に走ってもらえたら、きっと車の中で、誰かがポツリと「また来たいね」と言うはずです。僕はその瞬間を想像しながら、このルートを書いていて、正直ちょっとニヤニヤしています。
夕方〜夜|山中湖で静かな湖畔時間と温泉を楽しむ

富士五湖のなかでも、“富士に一番近い湖”へ
さあ、今日のラストステージは山中湖です。ここまで来たら、僕はいつも「よし、ここからがクライマックスだぞ」と心の中でニヤッとします。
山中湖は、富士五湖の中で一番大きくて、一番標高が高い湖です。富士山との距離も近くて、冬には湖が凍るくらい冷え込むこともある場所。公式の観光情報でも、四季それぞれの絶景とリゾート感を併せ持つエリアとして紹介されていて、「ちょっと特別な湖」という扱いをされています。
おすすめしたい時間帯は、まさに夕方〜夜にかけて。日中のにぎわいが落ち着きはじめて、湖面が少しずつオレンジ色に染まっていくタイミングで、湖畔の遊歩道をゆっくり歩いてみてください。
対岸には、ペンションや別荘地の明かりがぽつぽつと灯りはじめます。その手前で、湖面が静かに揺れて、奥には富士山のシルエット。ここまでの移動や観光で、頭の中がちょっと忙しくなっていたとしても、気づけば呼吸がゆっくりになっているはずです。
僕がガイドでここを歩くと、誰かしらがぽろっと言います。
「次は、いつ来られるだろうね?」
その一言を聞くたびに、「ああ、このコースにしてよかった」と心の中でガッツポーズしています。ここまでの流れを全部受け止めてくれる場所が、山中湖の夕方なんです。
温泉で、今日見た景色をゆっくり思い返す
そして、締めくくりはやっぱり温泉です。山中湖周辺には、日帰り利用ができる温泉施設がいくつかあって、中には露天風呂から富士山を望めるところもあります。
「富士山と一緒に一日を締める」なんて、よく考えたらだいぶ贅沢ですよね。でも、このエリアだとそれが普通にできてしまうから怖い(笑)。
湯船につかりながら、今日の流れを頭の中でなぞってみてください。
- 朝の、大石公園で見た逆さ富士
- 河口湖のほとりで食べたほうとうやランチ
- ロープウェイや美術館から眺めた「上からの富士山」
- 忍野八海の澄んだ水と、古い家並み
- そして今、夕暮れの山中湖と、湯気越しの富士山
こうやって並べてみると、たった1日とは思えないくらい、いろんな表情の富士五湖と出会っていることに気づくと思います。
僕はこの「温泉で一日を振り返る時間」が好きすぎて、正直このパートを書いているだけでちょっとニヤニヤしています。
あなたにとっても、「ああ、また富士五湖に行きたいな」とふと思い出すきっかけになるシーンになってくれたら嬉しいです。
車なしでも行ける?電車&バスで回す場合のアレンジ案

ここまで、主に車・レンタカー前提で話してきましたが、「運転ちょっと苦手なんだよな…」「そもそも車持ってない」という人もいますよね。大丈夫です、富士五湖は“車なし勢”にもやさしいエリアです。
むしろ電車やバスで行くと、「移動時間=のんびり窓の外の富士山を眺める時間」になるので、それはそれで最高です。僕も取材では電車+バスで動くことがけっこう多くて、毎回ちょっとした旅気分を味わっています。
河口湖までは、特急 or 高速バスでサクッとワープ
東京方面からなら、アクセスの選択肢はシンプルです。
- 新宿駅から特急列車で河口湖駅まで一気にアクセス
- 新宿・東京・渋谷などから高速バスで河口湖駅 or 富士山駅へ直行
どちらも本数がそれなりにあって、「寝てたら着いてた」くらいの感覚で行けてしまいます。
車の運転に気を遣わなくていいぶん、車窓から富士山が見えた瞬間に素直にワクワクできるのが、公共交通派の特権です。
現地では、周遊バスと路線バスを“うまくサボるため”に使う
河口湖駅周辺まで来てしまえば、あとは周遊バスと路線バスの出番です。
- 河口湖の湖畔をくるっと回ってくれる周遊バス
- 忍野八海や山中湖方面へ走る路線バス
これらを組み合わせるだけで、「河口湖 → 大石公園 → 忍野八海 → 山中湖」という、ほぼこの記事のモデルコースに近い動き方ができます。
正直な話、電車&バス旅でいちばん大事なのは、「全部を完璧にこなそう」としないことです。そこで、僕からのおすすめルールがこれ。
- 回るスポットは3〜4カ所くらいに絞る(欲張りすぎない)
- バスの本数と所要時間は、前日までにざっくりチェックしておく
- 「今日はこのエリアをじっくり楽しめたらOK」と最初に決めておく
この3つを守るだけで、「バスの時間に追われて終わった…」旅から、「いいとこだけしっかり味わえた」旅に変わります。
車がなくても大丈夫。むしろ、帰りの電車やバスで「今日のベストショットはどれかな」と写真を選びながら帰れるのは、公共交通旅ならではの楽しみ方です。
僕もこの書いている今、「次は電車で富士五湖行くプラン、また組み直したいな…」と本気でワクワクしています。
季節別のおすすめ&注意点|春夏秋冬でどう変わる?服装・混雑・道路事情

富士五湖の面白いところは、季節が変わるたびに「別の旅先」みたいになることです。同じ大石公園、同じ山中湖でも、行く時期が違うだけで、ぜんぜん違う表情を見せてくれます。
その一方で、服装や道路状況を読み間違えると、「寒すぎてつらい」「渋滞でぐったり…」なんてことにもなりがちです。ここでは、僕が何度も失敗しながら学んできた季節ごとのポイントを、ぎゅっとまとめておきます。
春(3〜5月)|桜と残雪の富士を一度に楽しめる季節
- 河口湖の桜と、山頂に残る雪のコントラストは「これぞ日本の春×富士山」という景色
- 日中はポカポカでも、朝晩は「え、まだこんなに寒いの?」となることが多い
- 薄手ダウンやフリースが一枚あると、「持ってきてよかった…」と必ず思います
春の富士五湖は、写真だけ見ると完全に“お花見モード”ですが、現地の空気はまだ高原のひんやり感が残っています。僕も何度か「油断して薄着で来て震える」という失敗をしているので、ぜひ一枚多めに持ってきてください。
夏(6〜8月)|ラベンダーと高原の涼しさ、でも日差しは本気
- 河口湖や山中湖のラベンダーや花畑が見頃で、色とりどりの写真が撮れるベストシーズン
- 湖畔は市街地より涼しいとはいえ、日中の日差しはかなり強い
- 帽子・サングラス・日焼け止めは「持ってたほうがいい」ではなく「必須」レベル
- 連休やお盆は渋滞しやすいので、早出&早帰りを意識するだけで快適度がかなり変わります
夏の富士五湖は、本当にテンションが上がります。ラベンダー越しの富士山なんて、何回撮っても「ちょっと待って、今のももう一枚」とシャッターが止まりません。ただ、高速道路と湖畔の渋滞は確実に増えるので、「朝は早く出て、夕方前に帰路に乗る」くらいのイメージで組むのがおすすめです。
秋(9〜11月)|紅葉と澄んだ空気で、写真好き大歓喜
- 湖畔の木々が色づいて、どこを切り取っても絵になる季節
- 空気が澄んでくるので、富士山もくっきり見える日が増えてくる
- 朝晩の冷え込みが目に見えて強くなるので、重ね着で調整できる服装が安心
秋は、僕の中で「撮影意欲が一番爆発する季節」です。紅葉と富士山と湖が揃うと、もうそれだけでカメラの電池がみるみる減っていきます(笑)。ただ、日中との寒暖差が大きいので、薄手の上着を脱ぎ着しながらうまく調整してください。
冬(12〜2月)|雪化粧の富士と、ピンと張りつめた空気
- 空気がキンと澄んで、富士山が一年でいちばんくっきり見えることが多いシーズン
- 山中湖周辺は路面凍結の可能性が高く、スタッドレスタイヤはほぼ必須
- 防寒具・手袋・帽子・ネックウォーマーなど、街より一段階上の冬装備を
冬の富士五湖は、とにかく「空気の透明度」が別世界です。朝一番の富士山なんて、輪郭がシャープすぎてCGみたいに見える日もあります。その代わり、寒さも本気です。特に山中湖は風が吹くと体感温度が一気に下がるので、「ちょっと着すぎかな?」くらいでちょうどいいと思ってください。
春夏秋冬、それぞれの季節に「その時じゃないと見られない富士五湖」があります。
この記事を読みながら、「次はどの季節でこのコースを試そうかな」と考えてもらえたら、書いている側としてもニヤニヤが止まりません。
よくある質問(FAQ)
Q1:富士五湖の観光、日帰りでも楽しめますか?
A:全然いけます。むしろ十分楽しめます。ポイントは「全部回ろうとしないこと」。五つの湖を制覇しようとすると、どうしても移動メインになってしまいますが、この記事のように河口湖+山中湖にギュッと絞ると、絶景もグルメも温泉も、ちゃんと味わう時間を取りながら1日に詰め込めます。
僕もガイドのときはこの組み方をよく使いますが、「日帰りとは思えない充実感だった」と言われることが多くて、内心ニヤニヤしています。
Q2:レンタカーとマイカー、どちらがいいですか?
A:どちらでも大丈夫ですが、スタイルに合わせて選ぶのがコツです。
- 首都圏の高速道路や山道の運転に慣れている → マイカーでそのまま現地入りでもOK
- 高速道路はちょっと不安… → 電車やバスで河口湖駅・富士山駅まで行き、現地でレンタカーがおすすめ
「現地だけ運転する」という選び方は本当に使い勝手がよくて、僕も取材でよくやります。渋滞の心配を減らしつつ、富士五湖エリアではしっかり自由に動ける、いいとこ取りのスタイルです。
Q3:雨の日でも楽しめるスポットはありますか?
A:あります。しかもけっこうたくさんあります。
美術館・博物館・屋内型ミュージアム、カフェ、温泉施設など、「外が悪天候でも大丈夫」な場所がしっかり揃っています。天気が崩れてきたら、無理に屋外の絶景を追いかけず、
- 美術館で「富士山をテーマにした作品」をじっくり眺める
- カフェでゆっくり温かい飲み物を飲みながら外の雨音を楽しむ
- 思い切って温泉に早めに入って、のんびり過ごす
こんなふうに、「物語としての富士山」を味わう日に切り替えるのもアリです。ガイド目線で言うと、「雨だからこそ印象に残る旅」になったケースもかなり多いです。
Q4:富士山はいつが一番よく見えますか?
A:一般的には、空気が澄む冬〜早春の、特に朝の時間帯が見えやすいと言われています。僕の体感としても、冬の朝イチに「今日は完璧だな…」と思う日が多いです。
ただ、これはあくまで“傾向”であって、天気や雲の具合次第であっさり裏切られます。なので、「見えたらラッキー!その分ちゃんと感動しよう」くらいの心構えでいると、旅そのものを楽しみやすくなります。
Q5:外国人の友人を連れていくのに、このコースは向いていますか?
A:かなり向いています。安心して連れて行ってあげてください。
このコースには、
- 「これぞ日本の富士山」という王道の絶景
- 山梨名物のほうとうなどの郷土料理
- 温泉文化を体験できる日帰り温泉
- 美術館や湧水の村などで触れられる歴史・文化の要素
…がバランスよく詰まっています。僕も海外から来た友人を案内するときは、このルートをベースに組み立てることが多いです。
「一日でここまで日本と富士山を感じられるのか」と驚かれることが多くて、そのリアクションを思い出しながら、このFAQを書いている今も密かにワクワクしています。
まとめ:たった1日でも、「また富士五湖に帰ってきたくなる」ルートに

ここまで読んでくれて、ありがとうございます。頭の中で、今日の1日がだいぶ形になってきたんじゃないでしょうか。
改めて、このプランで体験してほしいシーンを並べると──
- 河口湖北岸で、息をのむような朝の逆さ富士を眺める時間
- 湖畔ランチとカフェで、富士山を見ながら過ごすちょっと特別なごほうび時間
- ロープウェイや美術館から眺める、上から&物語としての“立体的な富士山”
- 忍野八海で出会う、澄みきった湧水とどこか懐かしい家並み
- 山中湖の湖畔でゆっくり迎える、夕景と温泉で締めくくるラストシーン
こんな1日をイメージしながら、僕が何度も何度も組み直してきた「富士五湖エリアの王道モデルコース」を、できるだけリアルにお伝えしてきました。
正直、このルートは僕にとっても“お気に入りの一枚”みたいな存在です。取材でもプライベートでも何度も走って、そのたびに「やっぱりこの流れは気持ちいいな」と実感してきました。
ガイドブックの“人気ランキング”を上から順に追いかける旅も悪くないけれど、せっかくなら、「自分の中にオリジナルの富士五湖地図を作る旅」にしてほしいなと思っています。
今日紹介した河口湖〜山中湖の1日プランは、そのためのスタートラインです。
まずはこのルートをベースに歩いてみて、「次はもう少しここを長く歩こう」「今度は西湖や本栖湖も組み込んでみよう」と、自分なりにアレンジしていってください。
この記事を書きながら、僕自身も「またこのコースを走りたいな」と本気でうずうずしていました。
いつかどこかの湖畔で、あなたの「今日、あのルート試してみましたよ」という一言が聞けたら、それ以上にうれしいことはありません。
参考・引用情報ソース
この記事は、僕自身が何度も現地を歩き回って確かめてきた体験に加えて、ちゃんと「公式の裏どり」もしています。
せっかくここまで読んでもらったので、どんな情報をベースにこのモデルコースを組み立てたのかも、きちんと共有しておきますね。
Japan National Tourism Organization|Fuji Five Lakes Area
(富士五湖エリア全体の公式紹介・英語)
─ 富士五湖が「日本を代表する観光エリア」として世界にどう紹介されているかを確認するために参照しました。
JNTO パンフレット「MT. FUJI and The FUJI FIVE LAKES AREA」
(富士五湖広域の観光情報・交通アクセス)
─ モデルコース全体の動線や、公共交通の組み立て方を考えるときの「公式地図」として活用しています。
山梨県公式観光サイト|Fujisan (Mt. Fuji) and Fujigoko (Fuji Five Lakes) Area
(富士五湖の基本解説・四季の見どころ)
─ 各季節のおすすめポイントや、エリア全体の位置づけを整理するためのベース情報として参照しました。
Yamanashi Official Travel Guide|Lake Kawaguchiko
(河口湖エリアの概要・気候など)
─ 「なぜ河口湖をスタート地点にするのか?」を説明するために、公式なデータや特徴を確認しています。
Yamanashi Official Travel Guide|Lake Yamanakako
(山中湖エリアの特徴・自然環境)
─ 山中湖の標高や気候、四季の表情を整理するために使用しました。夕方〜夜の過ごし方を組み立てるヒントにもなっています。
Fujikawaguchiko Town Tourism Information Site
(河口湖周辺の観光スポット・グルメ・イベント情報)
─ 実際のスポット選びや、イベント・最新情報のチェックのために、現地の公式目線を確認する用途で参照しています。
Visit Lake Yamanaka Area|Yamanakako Tourist Association
(山中湖周辺の観光・イベント・温泉情報)
─ 山中湖での過ごし方や、温泉・季節のイベントの情報を把握するために利用しています。
ここに挙げた情報を土台に、実際に何度も現地を歩きながら「旅として気持ちいい流れ」を組み直したものが、この記事のモデルコースです。
最新のイベント情報・営業時間・交通ダイヤは変わることがあるので、旅の前には必ず各公式サイトもチェックしてみてくださいね。


コメント