富士山は10月・11月・12月、山頂登山道が閉鎖されるため、一般の観光登山では登れません。
2026年も山頂を目指せるのは、原則として7月上旬から9月10日までの開山期間です。閉山後は山小屋や救護所がほぼ終了し、道路法に基づいて通行が禁止される登山道区間もあります。
富士山は10月・11月・12月に登れる?2026年の結論
10月・11月・12月は、富士山の公式な山頂登山シーズンではありません。
富士登山オフィシャルサイトは、開山期以外について「富士山山頂への登山道はすべて通行止め」と案内しています。2026年の山頂登山道の開通期間は、ルートごとに次のように設定されています。
ルート 2026年の山頂登山道開通期間 10月以降の扱い 五合目への主なアクセス道路
吉田ルート 7月1日~9月10日 五合目以上の登山道は閉鎖 富士スバルライン
須走ルート 7月1日午前9時~9月10日午後5時 五合目以上は閉鎖 ふじあざみライン
御殿場ルート 7月10日午前9時~9月10日午後5時 新五合目以上は閉鎖 県道富士公園太郎坊線
富士宮ルート 六合目以上は7月10日午前9時~9月10日午後5時 六合目以上は閉鎖 富士山スカイライン
富士宮ルートだけは、五合目から六合目までが2026年11月上旬まで開通予定です。しかし、これは六合目から山頂へ進めるという意味ではありません。
2026年の開通期間や施設供用期間は、残雪、降雪、凍結、大雨、工事などによって変更される可能性があります。とくに閉山後は、予定日より早く道路が冬季閉鎖されることも想定しなければなりません。富士登山+1
僕が富士山へ向かう前に必ず確認するのが、次の「三つのゲート」です。
- 五合目へ向かう自動車道路が通れるか
- 五合目から先の登山道が開いているか
- 山小屋、救護所、案内所、トイレが使えるか
この三つは、それぞれ管理者も目的も異なります。
五合目まで車で行けても、山頂登山道が通行止めになっていることがあります。五合目のトイレが開いていても、上部の山小屋や救護所は営業を終えている場合があります。
「五合目へ行ける」と「富士山へ登れる」は、まったく別の情報です。
閉山後の通行止めは法律上どう扱われる?
閉山後の富士山は、単に登山をおすすめしていない状態ではありません。指定された登山道区間が道路法に基づいて通行禁止になります。
静岡県は、富士宮、御殿場、須走の各登山道について、冬期閉鎖中は道路法により通行が禁止されると案内しています。
道路法第46条は、道路の破損や気象状況などによって交通が危険であると認められる場合、道路管理者が区間を定めて通行を禁止または制限できる制度です。
同法の罰則規定では、第46条による禁止または制限に違反して道路を通行した場合、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象となる可能性があります。静岡県公式サイト+1
ただし、ここは正確に理解する必要があります。
罰則の対象として示されているのは、「冬に富士山のどこかへ行く行為」すべてではありません。道路管理者が道路法に基づいて通行禁止とした登山道の区間に入り、禁止または制限に違反して通行する行為です。
つまり、次の四つは別の制度です。
- 道路法に基づく登山道の通行禁止
- 登山道や施設の管理上の閉鎖
- 夏山期間外の登山に関する安全ガイドライン
- 自治体条例に基づく登山計画書制度
この違いが曖昧だと、「自己責任なら登れる」「登山届を出せば入れる」といった誤解につながります。
夏山期間外ガイドラインは通行許可ではない
富士登山オフィシャルサイトが紹介する「富士登山における安全確保のためのガイドライン」では、夏山期間外について、万全な準備をしない登山者の登山を禁止するとともに、登山計画書の作成・提出や携帯トイレの持参を求めています。
しかし、このガイドラインを守ったからといって、道路法による通行禁止が解除されるわけではありません。
十分な冬山経験や装備があることも、閉鎖された登山道への通行許可にはなりません。富士登山+1
山梨県の登山計画書も許可証ではない
山梨県では、「山梨県登山の安全の確保に関する条例」により、富士山の標高3,000メートル以上を12月1日から翌年3月31日まで登る場合、登山計画書の提出が義務付けられています。
また、富士山の概ね六合目以上では、年間を通じて登山計画書提出の努力義務があります。
この制度は、登山者の行程、装備、緊急連絡先などを明らかにし、遭難時の捜索や救助に役立てるためのものです。
計画書を提出しても、通行止め区間へ入る権利は得られません。
「登山届が受理されたから登ってよい」という考え方は誤りです。登山計画書の制度と登山道の開閉状況は、必ず分けて確認してください。山梨県公式サイト+1
10月・11月・12月の富士山は何が危険?
閉山後の富士山は、月が進むほど単純に雪が増えるだけではありません。
低温、強風、再凍結、日没の早まり、道路閉鎖、支援施設の終了が重なり、登山を成立させる条件そのものが失われていきます。
気象庁の1991~2020年の平年値では、富士山頂の気温と平均風速は次のようになっています。
月 月平均気温 日最高気温の月平均 日最低気温の月平均 月平均風速
10月 -2.0℃ 0.7℃ -5.1℃ 10.9m/s
11月 -8.7℃ -5.9℃ -11.8℃ 13.2m/s
12月 -15.1℃ -12.2℃ -18.3℃ 15.3m/s
ここに示されている風速は突風の最大値ではなく、月間の平均です。穏やかに見える山麓と、風が直接ぶつかる山頂部では、同じ日の体感が大きく異なります。気象庁データ
10月は「冬山に見えないこと」が危険
10月の山麓では、紅葉や観光を楽しめる日が続きます。
青空の下では山肌に雪がほとんど見えず、夏山と大きく変わらないように感じることもあるでしょう。しかし、山頂の平年平均気温はすでに氷点下です。
10月の危険は、全面的な積雪よりも、部分的な凍結にあります。
日向の砂礫が乾いていても、日陰、岩陰、朝夕の登山道には薄い氷が残る可能性があります。乾いた地面から凍結面へ突然変われば、夏山と同じ歩き方では転倒を防げません。
僕が閉山後の富士山を考える際、積雪の多さだけで危険度を判断しないのはこのためです。
雪が少ないことは、安全を意味しません。薄い氷は雪より見つけにくく、足を置く直前まで気づけないことがあります。
さらに、10月は日没が早くなります。
夏と同じ感覚で行動すると、下山中に暗くなる可能性が高まります。山小屋や救護所が閉まった状態では、低体温症や負傷が起きても、すぐに休める場所や相談できる人はいません。
11月は硬くなった雪と道路閉鎖が重なる
11月の山頂は、平年の月平均気温がマイナス8.7度です。
降った雪が昼間に緩み、夜間や寒気の流入で再び凍ると、表面が硬い斜面へ変わります。柔らかな雪なら足が沈んで止まることがありますが、硬い雪面では滑り始めた身体を止めることが難しくなります。
富士山上部には、滑落した人を止める樹木がほとんどありません。
独立峰の広い斜面では、転倒が長距離の滑落につながるおそれがあります。ピッケルやアイゼンを持っているだけでは不十分で、転倒を避ける歩行技術や、滑落停止、雪面状態の判断が必要です。
11月上旬から中旬にかけては、五合目へ向かう道路も冬季閉鎖へ移っていきます。
2026年の予定では、富士山スカイラインは11月上旬、御殿場口へ向かう県道富士公園太郎坊線と須走口へ向かうふじあざみラインは11月上旬から中旬ごろまでが開通期間とされています。
ただし、降雪や凍結、大雨があれば予定より早く通行止めとなる可能性があります。富士登山+1
五合目道路が閉鎖されれば、登山開始地点は低い場所へ移ります。
その結果、標高差、歩行距離、行動時間、必要な水や食料が増え、下山時の疲労も大きくなります。夏に五合目から登頂できた経験を、そのまま11月の安全材料にはできません。
12月は一般登山の対象外となる厳冬期
12月の富士山頂は、平年の月平均気温がマイナス15.1度、日最低気温の月平均がマイナス18.3度です。
平均風速も15.3メートル毎秒に達します。実際の山では、これを上回る風や突風、吹雪、視界不良が発生する可能性があります。
12月は「防寒着を増やせば登れる」という環境ではありません。
- 硬く凍った長い斜面
- 強風による転倒や滑落
- 雪や霧による道迷い
- 手足の感覚低下
- 水分や食料の凍結
- 電子機器の電池消耗
- 救助隊が現場へ到達するまでの長時間化
こうした危険が同時に起こります。
冬山用の靴、アイゼン、ピッケル、ゴーグルなどは重要ですが、装備は危険を消す道具ではありません。
使い方を習得し、斜面の状態を読み、状況が悪くなる前に撤退できて初めて機能します。装備品の一覧をそろえることと、厳冬期の富士山で安全に行動できることは別です。
閉山後には実際にどんな遭難事故が起きている?
閉山後の危険は、想像上の話ではありません。
2024年10月14日には、富士宮口から登った59歳の男性が山頂到着後の下山中、九合目付近で意識を失いました。山岳遭難救助隊などに救助されましたが、搬送後に死亡が確認されています。
同行者は警察に対し、登山道が通行止めになっていることを知らなかったという趣旨の説明をしていました。ライブドアニュース
2025年12月29日には、閉山中の富士宮口新七合目付近で、44歳の男性が下山中に約200メートル滑落し、死亡する事故が発生しました。
同年12月31日にも、御殿場口六合目付近で38歳の男性が突風にあおられて滑落し、救助されています。テレ朝NEWS+1
これらの事故から読み取れるのは、「冬山初心者だけが危険なのではない」ということです。
複数人で行動していても、登山用の服装をしていても、山岳会などで経験を積んでいても、突風、体調急変、滑落を完全には防げません。
閉山後は、救助する側の負担も夏山とは異なります。
山小屋や救護所が閉まり、道路が冬季閉鎖されれば、救助隊員自身も低温、強風、凍結斜面にさらされながら長距離を移動しなければなりません。
遭難者が「自己責任で登った」と考えていても、救助要請があれば、現場へ向かう隊員の生命も危険にさらされます。
ここに、閉山を単なる営業期間の終了として扱えない理由があります。
五合目の道路やトイレが使えれば登ってよい?
五合目へ行ける日があっても、山頂へ登ってよいという意味ではありません。
2026年の富士宮口では、富士山スカイラインが4月24日から11月上旬まで開通する予定です。
富士宮口五合目の公衆トイレは6月22日から10月13日まで、仮設トイレは富士山スカイラインの開通期間中に利用できる予定です。
一方、六合目から山頂までの登山道は9月10日午後5時で閉鎖されます。富士登山
須走口でも、五合目の公衆トイレや案内施設が10月下旬まで利用できる予定ですが、五合目から山頂への登山道は9月10日で閉鎖されます。
吉田口五合目の案内施設も10月31日まで開設予定ですが、吉田ルートの山頂登山道は9月10日までです。
この日付のずれは、施設ごとに目的が違うために起こります。
五合目の道路やトイレは、観光客、施設関係者、道路管理などにも使われます。山頂登山道は、残雪や凍結、落石、気象条件、維持管理、安全体制を踏まえて開閉が判断されます。

僕は、この違いを「自然条件」と「社会的な安全網」の二層で考えています。
自然条件とは、低温、雪、氷、風、落石などです。
社会的な安全網とは、山小屋、救護所、案内所、トイレ、補給場所、登山道の整備、巡回する関係者、周囲の登山者などを指します。
閉山後は自然条件が厳しくなるだけでなく、社会的な安全網も大幅に縮小します。
同じ斜面でも、山小屋の灯りがあり、救護所が開き、登山道が整備されている夏と、それらが失われた秋冬では、登山の難易度は同じではありません。
閉山後の富士山を安全に楽しむ方法と筆者の考察
10月から12月に富士山を訪れたいなら、目的を登頂から山麓観光や展望へ切り替えるのが現実的です。
富士五湖周辺、朝霧高原、御殿場市内、富士宮市内など、山麓には冠雪した富士山を望める場所があります。登山道へ入らなくても、季節によって変わる雪線や雲、夕景を観察できます。
五合目を訪れる場合は、当日の道路状況と施設営業を確認してください。
2026年8月1日時点で、確認先は次のように整理できます。
- 登山道と山小屋・トイレの期間:富士登山オフィシャルサイト
- 富士宮・御殿場・須走口の道路:静岡県道路通行規制情報提供システム
- 吉田口の登山道:山梨県道路管理課の発表
- 富士スバルライン:山梨県道路公社の営業・規制情報
- 気温や警報:気象庁
- 火山活動:気象庁の富士山火山情報
閉山後の情報発信で改善すべき点は、僕は「閉山」という一語だけで案内を終わらせないことだと考えています。
旅行者が知りたいのは、単に山が閉まっているかどうかではありません。
「どの道路が通れるのか」「どの区間から通行禁止なのか」「トイレは使えるのか」「観光だけなら可能なのか」を知りたいのです。
道路、登山道、施設を同じ画面で確認できる仕組みが広がれば、「五合目まで行けたので山頂にも行けると思った」という誤解を減らせるでしょう。
登山者側にも、確認の順番を変える必要があります。
最初に天気や装備を調べるのではなく、まず登山道が正式に開いているかを確認する。その後に道路、施設、気象を調べるのが正しい順番です。
閉鎖中であれば、装備の検討へ進む前に計画を中止できます。
僕が最も危険だと感じるのは、「六合目まで」「雪が出るまで」「風が強くなるまで」と、現地で限界を決めようとする心理です。
現地で青空や他人の足跡を見ると、人は予定より先へ進みたくなります。だからこそ、撤退地点ではなく、入らない条件を出発前に決めることが重要です。
富士山との関係は、一度の登頂で終わるものではありません。
閉じられた道を前に引き返し、次の開山を待つ判断も、長く山を楽しむための立派な登山技術だと僕は考えます。
まとめ
富士山の10月・11月・12月は、一般の観光登山者が山頂を目指す時期ではありません。
2026年の山頂登山道は、吉田・須走ルートが7月1日、御殿場・富士宮ルートが7月10日に開き、いずれも9月10日で閉山します。
10月の山頂は平年平均でマイナス2.0度、11月はマイナス8.7度、12月はマイナス15.1度です。月が進むにつれて、凍結、強風、滑落、道路閉鎖、救助困難の危険が増します。
閉山後の指定登山道は、道路法に基づいて通行禁止となる区間があります。登山計画書や夏山期間外ガイドラインは、通行止めを解除する許可制度ではありません。
出発前には、次の順番で確認してください。
1. 山頂登山道が正式に開いているか
2. 五合目までの道路が通れるか
3. トイレや案内所などの施設が使えるか
4. 気象警報や火山情報が出ていないか
道路が開いていること、雪が少なく見えること、登山届を出したことは、山頂まで登れる根拠にはなりません。
霧に隠れる富士は、人の判断を迷わせます。
けれど、通行止めの日付と標識は明確です。その境界を守ることが、富士山と安全に付き合い続けるための第一歩です。
よくある質問
富士山は10月上旬なら山頂まで登れますか?
一般の観光登山では登れません。
2026年の山頂登山道は9月10日で閉鎖されます。10月上旬に五合目への道路や一部施設が利用できても、山頂登山道の開通を意味するものではありません。
富士宮ルートは11月まで登れるのですか?
2026年は五合目から六合目までが11月上旬まで開通予定ですが、六合目から山頂までの区間は9月10日午後5時で閉鎖されます。
五合目から六合目の開通期間も、降雪や凍結などで変更される可能性があります。
11月に車で富士山五合目へ行けますか?
道路と天候によっては行ける日があります。
静岡県側の五合目道路は、2026年も11月上旬から中旬ごろまでの開通予定が示されています。ただし、降雪、凍結、大雨などで早く通行止めになる場合があるため、出発当日に道路規制情報を確認してください。
12月は登山計画書を出せば登れますか?
登山計画書は通行許可証ではありません。
山梨県側では12月1日から翌年3月31日まで、標高3,000メートル以上の登山計画書提出が義務付けられていますが、閉鎖中の登山道を通れるようにする制度ではありません。
冬山装備があれば閉山後も登れますか?
装備を持っていることと、閉鎖された登山道を通行できることは別です。
また、冬山装備は滑落や低体温症などの危険を消すものではありません。厳冬期の富士山では、装備を使いこなす技術、気象判断、撤退判断、救助が難しい状況への対応力まで求められます。
本記事は、富士登山オフィシャルサイト「登山シーズン:各施設の供用期間」「開山期以外の富士山」、静岡県「富士山登山道周辺の道路情報」、山梨県「令和8年度の富士登山について」「山梨の登山・山岳情報ポータル」、気象庁「富士山の平年値」、e-Gov法令検索「道路法」を2026年8月1日に確認し、事故例については静岡県警の発表内容を伝えた報道を参照しました。
開通期間、道路状況、施設の供用期間は天候や工事によって変わるため、訪問当日は必ず各管理機関の最新発表を確認してください。
執筆:神楽 岳志(登山エッセイスト|富士山研究家|自然体験ストーリーテラー)


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