富士山の温泉水には、食品として飲める商品と、入浴用の温泉があり、同じ基準では比べられません。
2026年7月31日時点の公開情報では、静岡県裾野市の飲用商品はpH9.8・硬度16.5mg/L、山梨県富士吉田市のホテル鐘山苑は温泉をpH10.3の硫酸塩泉と案内しています。
この記事では、何が飲めるのか、成分をどう読むのか、温泉の適応症をどう確認するのかを、飲用水と入浴用温泉に分けて解説します。
富士山の温泉水とは?飲用商品と入浴用温泉の違い
「富士山の温泉水」という名称だけでは、飲用できる水なのか、入浴する温泉なのかは判断できません。
今回の主な比較対象は、静岡県裾野市で採水される「飲むプレミアム温泉水 富士山温泉」と、山梨県富士吉田市にある「富士山温泉ホテル鐘山苑」の温泉です。
両者の違いを先に整理します。
<div class=”table-scroll”>
<table>
<thead>
<tr>
<th>確認項目</th>
<th>飲むプレミアム温泉水 富士山温泉</th>
<th>ホテル鐘山苑の富士山温泉</th>
</tr>
</thead>
<tbody>
<tr>
<td>主な用途</td>
<td>飲用・料理</td>
<td>入浴</td>
</tr>
<tr>
<td>場所</td>
<td>静岡県裾野市で採水</td>
<td>山梨県富士吉田市で湧出・利用</td>
</tr>
<tr>
<td>分類</td>
<td>ナチュラルミネラルウォーター</td>
<td>カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉</td>
</tr>
<tr>
<td>pH</td>
<td>9.8</td>
<td>10.3</td>
</tr>
<tr>
<td>硬度</td>
<td>16.5mg/L</td>
<td>飲料水の硬度ではなく温泉分析書で評価</td>
</tr>
<tr>
<td>確認すべき資料</td>
<td>商品ラベル・栄養成分表示・水質検査情報</td>
<td>温泉分析書・温泉利用に関する掲示</td>
</tr>
<tr>
<td>情報確認日</td>
<td>2026年7月31日</td>
<td>2026年7月31日</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
飲用商品は、食品として成分表示や保存方法を確認します。
入浴用温泉は、泉質、源泉温度、適応症、禁忌症、加水・加温・循環・消毒の有無などを確認するものです。
したがって、pH9.8とpH10.3を並べ、数字の大きいほうが優れていると判断することはできません。用途も評価基準も異なる水だからです。
ナチュラルミネラルウォーターと温泉は同じ分類ではない
農林水産省の「ミネラルウォーター類(容器入り飲用水)の品質表示ガイドライン」では、ナチュラルミネラルウォーターは、特定の水源から採取された地下水のうち、地中で無機塩類が溶け込んだ水を原水とする飲料として整理されています。
処理方法も、ろ過、沈殿、加熱殺菌など、認められた範囲に限られます。
一方、温泉法では、地中から湧き出す温水、鉱水、水蒸気などのうち、源泉で摂氏25度以上あるもの、または温泉法別表で定められた成分のいずれかを基準値以上含むものが「温泉」に該当します。
つまり、温度が25度未満の冷たい鉱泉でも、指定成分の条件を満たせば法律上は温泉です。
温泉を原水とした水が、食品としてナチュラルミネラルウォーターに分類される場合はあります。しかし、温泉法上の温泉と、食品表示上のナチュラルミネラルウォーターは別の制度です。
本記事で確認した主な資料
出典は、本文の途中に不完全な名称を置かず、次のように発行主体と資料名を統一して扱います。
- やすらぎショップ公式ストア「飲むプレミアム温泉水 富士山温泉」商品ページ
- 富士山温泉ホテル鐘山苑公式サイト「温泉」案内ページ
- 農林水産省「ミネラルウォーター類(容器入り飲用水)の品質表示ガイドライン」
- e-Gov法令検索「温泉法」および同法別表
- 環境省「鉱泉分析法指針(平成26年改訂)」
- 環境省の温泉利用基準および温泉療養に関する資料
- 産業技術総合研究所・地質調査総合センターが公開する富士山地下水研究資料
- 静岡県が公開する東富士地域の地下水調査資料
- 株式会社十里木温泉が公開する温泉掘削の記録
商品ページや施設案内は、いずれも2026年7月31日に確認しました。
本記事は新発売や施設リニューアルを伝えるニュースではなく、同じ「富士山の温泉水」という言葉で混同されやすい飲用商品と入浴用温泉を、公開情報に基づいて整理した比較解説です。
商品提供を受けた記事や広告・PRではなく、味の実飲評価も行っていません。
飲む富士山温泉水の成分は?pH9.8・硬度16.5mg/L
「飲むプレミアム温泉水 富士山温泉」は、静岡県裾野市で採水された飲用商品です。
販売元の商品表示では、名称は「ナチュラルミネラルウォーター」、原材料名は「水(温泉水)」とされています。
内容量は500ミリリットルで、製造者は株式会社エムアイファクトリー伊豆工場です。
公開されている成分表示
100ミリリットル当たりの表示値は次のとおりです。
<div class=”table-scroll”>
<table>
<thead>
<tr>
<th>成分・項目</th>
<th>100ミリリットル当たり</th>
<th>1リットル換算</th>
</tr>
</thead>
<tbody>
<tr>
<td>エネルギー</td>
<td>0キロカロリー</td>
<td>0キロカロリー</td>
</tr>
<tr>
<td>たんぱく質</td>
<td>0グラム</td>
<td>0グラム</td>
</tr>
<tr>
<td>脂質</td>
<td>0グラム</td>
<td>0グラム</td>
</tr>
<tr>
<td>炭水化物</td>
<td>0グラム</td>
<td>0グラム</td>
</tr>
<tr>
<td>カルシウム</td>
<td>0.65ミリグラム</td>
<td>6.5ミリグラム</td>
</tr>
<tr>
<td>マグネシウム</td>
<td>0.005ミリグラム</td>
<td>0.05ミリグラム</td>
</tr>
<tr>
<td>カリウム</td>
<td>0.005ミリグラム</td>
<td>0.05ミリグラム</td>
</tr>
<tr>
<td>ナトリウム</td>
<td>3.64ミリグラム</td>
<td>36.4ミリグラム</td>
</tr>
<tr>
<td>食塩相当量</td>
<td>0.01グラム</td>
<td>0.1グラム</td>
</tr>
<tr>
<td>硫酸イオン</td>
<td>4.91ミリグラム</td>
<td>49.1ミリグラム</td>
</tr>
<tr>
<td>メタケイ酸</td>
<td>3.48ミリグラム</td>
<td>34.8ミリグラム</td>
</tr>
<tr>
<td>pH</td>
<td colspan=”2″>9.8</td>
</tr>
<tr>
<td>硬度</td>
<td colspan=”2″>16.5mg/L</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
これらは販売元の商品ページで確認した表示値です。
成分は再分析やラベル改定によって変更される可能性があるため、購入時には手元の商品ラベルを優先してください。
硬度16.5mg/Lはミネラルの少ない軟水
水の硬度は、主にカルシウムとマグネシウムの量から算出されます。
公開値を1リットル当たりに直すと、カルシウムは6.5ミリグラム、マグネシウムは0.05ミリグラムです。
一般的に用いられる概算式で計算すると、次のようになります。
- カルシウム6.5×約2.5=約16.25
- マグネシウム0.05×約4.1=約0.21
- 合計=約16.46mg/L
端数処理を考慮すれば、販売元が表示する硬度16.5mg/Lとほぼ一致します。
これは公開されたカルシウム、マグネシウム、硬度の数値に、計算上の整合性があることを示しています。
硬度16.5mg/Lは、カルシウムやマグネシウムが比較的少ない軟水です。一般に軟水は、硬水よりもミネラル由来の苦味や重さが目立ちにくい傾向があります。
ただし、僕は実際に商品を飲んで比較していないため、「甘い」「口当たりがよい」といった味覚表現は断定しません。
水の味には、硬度だけでなく、ナトリウム、硫酸イオン、炭酸水素イオン、温度、においなども関係します。
pH9.8は医療効果を示す数値ではない
pHは、水が酸性、中性、アルカリ性のどこに位置するかを表す指標です。
pH7付近が中性で、7より高くなるほどアルカリ性側に位置します。この商品のpH9.8は、アルカリ性の水であることを示す情報です。
一方、pH9.8だから病気を予防できる、体質が変わる、美容に特別な効果があるとは判断できません。
ペットボトル入りの飲用水は食品であり、医薬品ではありません。
体内には血液などの状態を一定範囲に保つ仕組みがあるため、「アルカリ性の水を飲めば体全体がそのままアルカリ性になる」という単純な説明も適切ではありません。
pHは水質を知る指標の一つとして確認し、健康上の効果とは分けて考える必要があります。
500ミリリットル当たりのナトリウム量
ナトリウムは、100ミリリットル当たり3.64ミリグラムです。
500ミリリットルを1本飲む場合、単純計算では約18.2ミリグラムになります。
食塩相当量は100ミリリットル当たり0.01グラムと表示されているため、1本では表示上約0.05グラムです。
ただし、食品表示には一定の丸め処理が含まれる場合があります。腎臓病や心臓病などで、水分量やナトリウム量を厳密に管理している人は、計算値だけで判断せず、医師や管理栄養士に確認してください。
メタケイ酸や硫酸イオンはどう読む?
メタケイ酸は1リットル換算で34.8ミリグラム、硫酸イオンは49.1ミリグラムです。
これらの成分が含まれていることは商品表示から確認できますが、含有量だけを根拠に、特定の美容作用や治療作用があるとはいえません。
とくに注意したいのは、入浴用温泉に示される適応症を、ボトル入り飲料の効能として読み替えないことです。
飲用商品の成分表示と、温泉療養で使われる泉質別適応症は、制度も利用方法も異なります。

ホテル鐘山苑の富士山温泉は?泉質と適応症の読み方
山梨県富士吉田市の富士山温泉ホテル鐘山苑は、施設の温泉をpH10.3の高アルカリ性の湯として案内しています。
公式サイトに掲載されている泉質は、カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉です。旧泉質名を含む説明として、「含芒硝-石膏泉・高アルカリ性」とも記載されています。
館内には、富士山を望む「露天風呂 富士山」と「大浴場 赤富士」があります。
露天風呂 富士山は3段の湯船で構成され、水深約90センチメートルの深湯や、横になりながら景色を楽しめる寝湯が設けられています。
利用時間や男女の割り当ては、月、季節、清掃予定などによって変更されるため、宿泊前の確認が必要です。
施設掲載の適応症と環境省の分類は分けて確認する
ホテル鐘山苑の公式ページには、高血圧症、動脈硬化症、外傷、火傷、慢性関節リウマチ、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、冷え性、疲労回復、健康増進などが掲載されています。
ただし、施設ページに並ぶ言葉と、環境省の現在の温泉利用基準に示される表現は、完全には同じではありません。
<div class=”table-scroll”>
<table>
<thead>
<tr>
<th>区分</th>
<th>主な掲載・分類例</th>
<th>読む際の注意</th>
</tr>
</thead>
<tbody>
<tr>
<td>ホテル公式ページの掲載項目</td>
<td>高血圧症、動脈硬化症、外傷、火傷、慢性関節リウマチ、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、冷え性、疲労回復、健康増進など</td>
<td>分析年月日や掲示更新日がページ上で確認できない項目がある</td>
</tr>
<tr>
<td>環境省の一般的適応症</td>
<td>筋肉・関節の慢性的な痛みやこわばり、冷え性、末梢循環障害、軽症高血圧、疲労回復、健康増進など</td>
<td>泉質を問わず、温泉浴全般について示される分類</td>
</tr>
<tr>
<td>硫酸塩泉の泉質別適応症</td>
<td>きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症</td>
<td>カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉として確認する項目</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
たとえば、施設掲載の「高血圧症」と、現在の一般的適応症にある「軽症高血圧」は、表現も対象範囲も同一とは限りません。
「動脈硬化症」「外傷」「火傷」といった表現についても、現在の公的分類へ機械的に置き換えず、現地に掲示されている最新の温泉分析書と温泉利用に関する注意事項を確認するのが適切です。
適応症は、一度入浴すれば病気や症状が治るという意味ではありません。
温泉浴では、湯の成分だけでなく、温熱作用、休養、周辺環境、気候などが総合的に関係します。治療中の病気がある場合は、温泉だけに頼らず医療機関の指示を優先してください。
温泉分析書で確認したい8項目
温泉を成分から理解したい場合、pHだけを見るのでは不十分です。
現地の脱衣所などに掲示される温泉分析書では、次の項目を確認します。
- 源泉名と湧出地
- 温泉分析書の分析年月日
- 登録分析機関の名称
- 源泉温度
- pHと溶存物質の合計
- 主要な陽イオン・陰イオン
- 泉質名、一般的適応症、泉質別適応症、禁忌症
- 加水、加温、循環ろ過、消毒の有無
今回確認したホテル公式ページだけでは、分析年月日、成分総量、源泉温度、加水・加温・循環・消毒の詳細をすべて確定できませんでした。
そのため、本記事では施設の公開情報を紹介する範囲にとどめ、温泉分析書の未確認項目を推測で補っていません。
pH10.3の温泉で注意したいこと
アルカリ性の温泉では、入浴中に肌がすべすべしたように感じられることがあります。
一方で、皮脂が落ちやすくなり、入浴後に乾燥を感じる人もいます。数値が高いほど、すべての人の肌に適するわけではありません。
敏感肌の人、皮膚に炎症がある人、治療中の人は、長湯を避け、入浴後の保湿や医師への相談を検討してください。
また、施設に飲泉専用の設備や許可表示がない限り、浴槽の湯を自己判断で飲んではいけません。
富士山麓の水はなぜ場所によって成分が違う?
富士山麓の水質が場所ごとに異なるのは、地下水が通る地層、深さ、流れる方向、岩石と接触する時間が同じではないからです。
富士山に降った雨や雪の一部は、スコリア、火山砂、玄武岩質溶岩などの隙間や割れ目から地下へ浸透します。
産業技術総合研究所・地質調査総合センターの富士山地下水研究でも、降水や融雪水が山体内部へ浸透し、山麓の地下水や湧水を支える仕組みが研究されています。
溶岩は一枚の均一なフィルターではない
「富士山の溶岩が水をろ過する」という説明は、地下水の仕組みをイメージするには分かりやすい表現です。
しかし、実際の地下に一枚の均質な溶岩層が広がっているわけではありません。
溶岩流の内部には、割れ目が多く水を通しやすい部分、多数の気泡跡が残る部分、緻密で水を通しにくい部分があります。
さらに、スコリア、火山砂、泥流堆積物、粘土質の層、古い火山体などが複雑に重なっています。
水を通しやすい層は帯水層となり、水を通しにくい層は地下水の流れをせき止めたり、別の方向へ導いたりします。
静岡県の東富士地域に関する地下水調査でも、新富士火山噴出物、古富士火山噴出物、愛鷹火山噴出物では、地下水を通す性質が一様ではないことが示されています。
この違いが、同じ富士山麓でもカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、硫酸イオン、pHなどに差が生まれる理由です。

地下1,500メートルだから高品質とは限らない
「飲むプレミアム温泉水 富士山温泉」の販売元は、標高約900メートルの地点から地下約1,500メートルまで掘削し、源泉へ到達したと説明しています。
株式会社十里木温泉が公開する記録では、2009年に調査を始め、掘削中の問題を乗り越えながら、2012年9月29日に深度1,500メートルへ到達した経緯が紹介されています。
一方、山梨県富士河口湖町で採水される別の「富士山の天然水」には、標高1,030メートル地点の地下223メートルから採水し、pH8.1、硬度24mg/Lと案内されている例があります。
地下1,500メートルと地下223メートルでは、接触する地層、圧力、水温、地下水の流れが異なる可能性があります。
ただし、深い井戸ほど必ずおいしい、安全、希少、高品質になるわけではありません。
飲用水の安全性は、採水深度だけでなく、水質検査、採水設備の衛生管理、殺菌方法、充填工程、容器、保管状態まで含めて判断します。
「数万年かけて浸透した」は共通の確定年代ではない
販売元は、裾野市の飲用温泉水について、長い時間をかけて地下へ浸透した水であると説明しています。
別の富士山麓の天然水では、採水地点までの移動に約100年前後かかるという事業者説明もあります。
しかし、これらの年数は、富士山周辺の地下水すべてに共通する確定年代ではありません。
地下水の年代は、トリチウム、炭素や塩素の放射性同位体、クロロフルオロカーボン、水素・酸素安定同位体、希ガスなどを利用して推定されます。
採水地点や分析手法が違えば、推定結果も変わります。数年から数十年、さらに長い時間を示す水が、同じ山麓に混在する可能性もあります。
事業者が語る水の物語には魅力がありますが、科学的な年代測定結果と同じ確度で断定することはできません。
富士山研究家が考える飲用水と温泉の選び方
僕が富士山麓の水を見るとき、最初に確認するのはpHの高さではありません。
誰が、どこで、何を測り、いつ公開した数値なのかを見ます。
飲用水を選ぶときは、次の順序で確認すると情報を整理しやすくなります。
1. 商品が食品として飲用できるものか
2. 採水地と製造者が表示されているか
3. 硬度、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムはいくつか
4. 成分表示と硬度の計算に大きな矛盾がないか
5. 保存方法と開栓後の注意が書かれているか
6. 水質検査や分析日の情報を確認できるか
温泉では、次の順序が基本です。
1. 泉質名を確認する
2. 最新の温泉分析書を見る
3. 一般的適応症と泉質別適応症を分ける
4. 禁忌症と入浴上の注意を確認する
5. 加水、加温、循環ろ過、消毒の有無を見る
6. 自分の体調や肌質に合う入り方を選ぶ
この二つの確認手順を混ぜないことが大切です。
飲料水のpHと、入浴用温泉のpHを同じ順位表に並べても、利用者にとって本当に必要な答えは得られません。
今回、飲用商品のカルシウムとマグネシウムから硬度を再計算したところ、販売元表示の16.5mg/Lとほぼ一致しました。
これは「富士山だからよい」という印象論ではなく、公開された数値同士を照合した結果です。小さな確認ですが、商品の信頼性を見るうえでは重要な作業だと僕は考えます。
一方、ホテル鐘山苑の温泉については、公式サイトから泉質やpH、施設掲載の適応症を確認できましたが、温泉分析書の分析年月日や成分総量など、ページ上では確定できない項目も残りました。
筆者としては、今後の商品や温泉施設には、魅力的な物語だけでなく、次の情報をより分かりやすく公開してほしいと感じます。
- 分析年月日
- 分析機関
- 採水地または源泉地
- 主要成分と成分総量
- 水質検査の考え方
- 加水・加温・循環・消毒の有無
- 商品表示や温泉分析書の更新日
富士山は、遠くから見ると一つの美しい山です。
しかし地下には、年代も性質も異なる溶岩、スコリア、泥流堆積物、帯水層が重なっています。透明な一滴にも、それぞれ違う地下の道筋があるのです。
だからこそ、「富士山の水」という名前だけで一括りにせず、その水が歩いてきた地層と、公開されている根拠を確かめることが大切だと僕は考えています。
飲用・入浴時の実用的な注意点
飲用商品は、開栓前には直射日光や高温を避け、開栓後は冷蔵庫で保管して早めに飲みます。
口を付けたボトルには微生物が入り得るため、透明で見た目に変化がなくても、長期間の保存には向きません。
販売元は、加熱や冷凍によって天然ミネラル由来の白い結晶が見られる場合があると説明しています。
ただし、異臭、通常とは異なる濁り、容器の膨張、キャップの破損などがある場合は、ミネラルだと自己判断せず飲用を中止してください。
温泉入浴では、発熱時、強い体調不良時、飲酒直後などの入浴を避けます。
心臓や肺の重い病気、治療中の疾患がある人は、必要に応じて医師へ相談してください。
2026年7月31日の確認時点では、飲用商品の500ミリリットル24本入りは税込4,800円で掲載され、売り切れ表示となっていました。
48本入り9,000円、96本入り17,000円も売り切れ表示でしたが、価格、在庫、送料、販売単位は変動します。購入時には販売元の最新表示を確認してください。
ホテル鐘山苑の入浴時間や男女の割り当ても、季節、清掃、天候などで変更される可能性があります。
まとめ
富士山の温泉水には、食品として飲めるナチュラルミネラルウォーターと、施設で入浴する温泉があります。
静岡県裾野市の「飲むプレミアム温泉水 富士山温泉」は、販売元表示でpH9.8、硬度16.5mg/Lの軟水です。公開されたカルシウムとマグネシウムから硬度を再計算しても、表示値とほぼ一致します。
山梨県富士吉田市のホテル鐘山苑は、温泉をpH10.3のカルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉と案内しています。
ただし、施設掲載の適応症と、環境省が示す一般的適応症・泉質別適応症は分けて読む必要があります。正確な成分や利用条件は、現地の最新の温泉分析書で確認してください。
飲用水では商品ラベルと水質情報を、温泉では分析書と利用掲示を見る。
この違いを押さえれば、「富士山」「高アルカリ」「深層水」といった印象的な言葉だけに流されず、自分の目的に合う水を選べます。
よくある質問
富士山の温泉水はそのまま飲めますか?
食品として製造・販売され、商品ラベルに飲用水として表示されているものは飲めます。
一方、温泉旅館や日帰り温泉の浴槽の湯は、飲泉専用設備と許可表示がない限り、自己判断で飲んではいけません。
富士山の温泉水と天然水は何が違いますか?
「温泉」は温泉法の温度または成分基準による分類です。
「ナチュラルミネラルウォーター」は、容器入り飲用水に用いられる食品上の分類です。温泉を原水とした商品がナチュラルミネラルウォーターとして販売される場合はありますが、二つの言葉は同義ではありません。
飲む富士山温泉水に入浴用温泉と同じ適応症はありますか?
同じとは判断できません。
ボトル入りの飲用水は食品であり、入浴用温泉の適応症を、そのまま飲用商品の効能として当てはめることはできません。
pHが高い水や温泉ほど優れているのですか?
pHの高さだけで優劣は決まりません。
飲用水では成分、味、衛生管理、保存方法を、温泉では泉質、分析書、肌質、体調、入浴方法を含めて判断します。
ホテル鐘山苑の温泉分析書はどこを見ればよいですか?
一般に、温泉分析書や温泉利用に関する掲示は、浴場入口や脱衣所付近で確認できます。
分析年月日、分析機関、源泉温度、pH、成分総量、泉質、適応症、禁忌症、加水・加温・循環・消毒の有無を確認してください。
執筆:神楽 岳志(登山エッセイスト|富士山研究家|自然体験ストーリーテラー)


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