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富士山登山のプリンスルート攻略|特徴・難易度・ほかのルートとの違いを解説

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富士宮口から宝永火口を越えて富士山頂へ向かうプリンスルートの壮大な風景 登山ガイド

富士山のプリンスルートは、宝永火口の大景観と御殿場ルートの静けさを一度に味わえる、経験者向きの変化に富んだ登山コースです。

2008年に当時の皇太子殿下、現在の天皇陛下が富士山初登頂で歩かれたことから「プリンスルート」と呼ばれるようになりました。富士宮口五合目から宝永火口を通り、御殿場ルートへ合流して山頂を目指すのが基本です。

吉田ルートのような混雑を避けながら、約300年前の噴火が残した宝永火口を間近に歩けるのが大きな魅力です。

ただし、「人が少ない=初心者でも簡単」という意味ではありません。山小屋やトイレが少ない区間、砂礫の急登、分岐、標高3,000mを超える高所への対応が必要で、富士登山が初めてなら十分な準備が求められます。

僕は、プリンスルートを「富士山を頂上だけでなく、火山そのものとして感じるための道」だと考えています。

霧に隠れる富士は、人の心の迷いに似ています。その霧の中でも現在地を見失わず、一歩ずつ登る力が、このルートでは試されます。

富士山登山のプリンスルートとは?2008年に生まれた「第5のルート」

プリンスルートは、富士宮口五合目を出発し、宝永火口・宝永山周辺を経て御殿場ルートへ合流するコースです。

富士山には公式な主要登山道として、吉田・須走・御殿場・富士宮の4ルートがあります。プリンスルートはそれらとは別の登山道が山頂まで新設されているわけではなく、富士宮ルートと御殿場ルートを宝永山周辺でつなぐルートの通称です。

名前の由来は2008年8月。当時の皇太子殿下、現在の天皇陛下が富士山に初登頂された際、このルートを歩かれたことから「プリンスルート」と呼ばれるようになりました。

スタート地点となる富士宮口五合目は標高約2,400m。富士山の主要登山口の中でも高い位置から歩き始められるのが特徴です。

富士宮口六合目へ登った後、そのまま富士宮ルートで山頂へ向かわず、宝永山方面へ横移動します。宝永第一火口付近を通過し、火山砂礫の斜面を越えて御殿場ルートへ入り、そこから山頂へ向かいます。

代表的な流れは次の通りです。

  • 富士宮口五合目:約2,400m
  • 富士宮口六合目:約2,490m
  • 宝永第一火口:約2,600m付近
  • 宝永山周辺
  • 御殿場ルート六合目付近:約3,000m
  • 御殿場ルート七合目
  • 七合五勺・砂走館:約3,090m
  • 七合九勺・赤岩八合館:約3,300m
  • 御殿場口頂上:約3,710m
  • 富士宮口頂上:約3,740m
  • 剣ヶ峰:3,776m

重要なのは、「プリンスルート」という言葉が必ずしも一つの下山方法だけを指していないことです。

一般的なプリンスルートでは、山頂から御殿場ルートを下り、有名な「大砂走り」を経由して標高約1,440mの御殿場口新五合目へ下山します。

一方、旅行会社や登山ツアーの中には安全性や参加者の体力を考慮し、御殿場口へ下り切らず、登ってきたルートを戻って富士宮口五合目へ下山するアレンジもあります。

たとえば紹介されているヤマトリップのコースでは、富士宮口五合目から宝永火口、御殿場ルートを経て登頂した後、同じ系統のルートを戻って富士宮口五合目へ下山します。

総歩行距離は約14.5km、目安として五合目から山頂までの登りが約5時間45分、山頂から五合目までの下りが約3時間25分とされています。

対して、御殿場口へ大砂走りで下る一般的なモデルコースでは、YAMAP MAGAZINEで歩行距離16.4km、コースタイム10時間50分、累積標高差は上り1,584m、下り2,513mというデータが紹介されています。

つまり「プリンスルートに登りたい」と考えたときは、どこから登るかだけでなく、どこへ下山する計画なのかまで確認することが非常に重要です。

ここを理解せずに交通手段や駐車場を決めると、下山後に車のある場所へ戻れないという問題も起こり得ます。


プリンスルート最大の特徴は?宝永火口と静かな御殿場ルート

プリンスルートを選ぶ最大の理由は、僕なら迷わず宝永火口の景観を挙げます。

宝永火口は1707年、江戸時代の宝永4年に起きた宝永大噴火によって誕生しました。大きな第一火口を中心に、その下には第二火口、第三火口が連なっています。

とくに第一火口のスケールは圧倒的です。

資料では直径約1kmとされる巨大な火口で、赤褐色や黒色の火山性の地面が広がり、植物の多い一般的な山とはまったく違う景観になります。

※画像はAIによるイメージ

初めてここを歩く人は、距離感をつかみにくく感じるかもしれません。

目の前に斜面が見えているのに、なかなか近づかない。風が砂をさらい、山肌には火山活動が刻んだ色の違いが残る。

富士山が「美しい円錐形の山」である以前に、今も火山として存在していることを実感させられる場所です。

通常の吉田ルートだけを歩いていると、この景観には出会いません。富士宮ルートからそのまま山頂へ向かう場合とも体験が大きく異なります。

さらに宝永山周辺を越えると、御殿場ルートへ合流します。

御殿場ルートは富士山の主要4ルートの中でも登山者が比較的少なく、吉田ルートのような混雑になりにくいのが特徴です。

とくに御来光前の山頂直下では、吉田ルートの混雑が話題になることがありますが、御殿場側は比較的流れやすい傾向があります。

もちろん週末やお盆などには登山者が増えます。「プリンスルートなら必ず空いている」と思い込むのは禁物です。

しかし、富士山を静かに歩きたい人にとって、この人口密度の差は大きな魅力でしょう。

個人的には、プリンスルートの価値は「空いている」という一点だけではないと思っています。

富士山の華やかな観光面ではなく、火山としての荒々しさ、広さ、孤独感を体で理解できることに、この道ならではの深さがあります。

宝永火口を越えたあと振り返ると、自分が歩いてきた火山地形の大きさが分かります。

富士はただの山ではない。その言葉の意味を、地面から教えてくれる場所です。


富士山プリンスルートの難易度は?初心者が注意したい4つの理由

結論から言えば、プリンスルートは整備された夏山シーズンであっても、完全な登山初心者が何の準備もなく挑むコースには向きません

技術的に高度な岩壁を登るルートではありませんが、体力、標高、道迷い、補給環境という複数の要素が重なるからです。

難易度を考えるうえで、特に重要なのは次の4点です。

宝永火口からの砂礫登りが想像以上に疲れる

宝永第一火口から先は、柔らかな砂礫の斜面を登る区間があります。

一歩踏み出しても足元が沈み、舗装路のように歩いた距離がそのまま前進につながりません。

見た目以上に脚を使うため、序盤だからとペースを上げ過ぎると、その後の標高3,000m以上の区間で体力が残らなくなります。

プリンスルートは標高の高い富士宮口から始められる一方、「スタート地点が高いから楽」と単純には言えないのです。

宝永山周辺には分岐がある

宝永山周辺は、富士宮口、宝永火口、宝永山、御殿場ルート、大砂走り方面などへの分岐があります。

晴れていれば地形を把握しやすい場所ですが、富士山では短時間で霧が出ることがあります。

濃霧になると景色が消え、広い火山砂礫地では方向感覚を失いやすくなります。

実際、プリンスルートを紹介する登山ガイドも、分岐が多く道を間違える可能性があるため、経験者やガイドとの登山を勧めています。

案内標識を確認し、現在地を把握できる登山地図を準備しておくことが基本です。

山小屋とトイレが少ない区間がある

富士宮口六合目を離れ、御殿場ルート七合目方面へ進むまで、山小屋のない区間があります。

紹介されているコースでも、宝永第一火口、宝永山周辺、御殿場ルート六合目付近にはトイレがありません。

富士宮口五合目には無料トイレがありますが、山小屋のトイレは基本的に有料です。

他ルートより「次の山小屋で休めばいい」と考えにくい区間があるため、水分や行動食、トイレのタイミングを先に考えておく必要があります。

標高3,000mを超えてから高山病リスクが増す

御殿場ルート六合目付近まで進むと、標高はおよそ3,000mに達します。

ここから上は酸素の薄さを体感する人も増えます。

富士山では、速く登ることよりも、ゆっくり登り続けることのほうが重要です。

寝不足を避け、五合目で高度に体を慣らし、水分を取りながら歩くことが基本になります。

激しい頭痛、強い吐き気、ふらつきなどが出た場合は、「せっかくここまで来たから」と山頂に固執しないことも大切です。

高度を下げる判断は敗北ではありません。

僕は富士山を何度歩いても、登頂そのものより「無事に帰ること」のほうが大きな成功だと感じます。


プリンスルートは吉田・富士宮・須走・御殿場ルートと何が違う?

富士山登山でプリンスルートを選ぶべきか迷ったら、主要4ルートとの違いを理解すると判断しやすくなります。

ルート 主な特徴 混雑傾向 プリンスルートとの違い
吉田ルート 山小屋が多く利用者も多い 最も混雑しやすい 宝永火口を通らず、登山者が多い
富士宮ルート 標高約2,400mから始まり山頂まで短い 比較的多い プリンスルートは六合目から宝永山方面へ外れる
須走ルート 樹林帯から始まり変化が大きい 吉田より少なめ 宝永火口は経由しない
御殿場ルート 距離が長く登山者が少ない 少ない プリンスルートは高い富士宮口から御殿場ルートへ途中合流
プリンスルート 宝永火口を経由し御殿場ルートへ合流 比較的少ない 2ルートをつなぎ火山景観を楽しめる

初心者が初めて富士山に登る場合、山小屋や案内の多さを重視して吉田ルートを選ぶ人は少なくありません。

富士宮ルートは出発地点が約2,400mと高く、山頂までの距離を短くしたい人に向きます。ただし急勾配が多く、登りと下りで同じ登山道を利用する区間が多いことにも注意が必要です。

御殿場ルートは登山者が少ない一方、標高の低い御殿場口から山頂まで登るため、歩行距離と標高差が大きく、相応の体力が必要です。

プリンスルートはその中間のような性格を持ちます。

標高の高い富士宮口から出発しながら、途中から静かな御殿場ルートを利用できる。

これがプリンスルート最大の合理性です。

一方、単純に「楽なルート」ではありません。

宝永火口周辺の砂礫、ルート判断、少ない山小屋、そして下山に大砂走りを選ぶ場合の長い高低差があります。

僕が特におすすめしたいのは、すでに吉田ルートなどで一度富士山に登った経験があり、「2回目は頂上だけではなく違う富士山を見たい」と感じている人です。

一度目の富士登山では、「山頂に立てるだろうか」という気持ちが大きくなります。

二度目になると、道そのものを見る余裕が生まれます。

そこでプリンスルートを選ぶと、「富士山とは何なのか」という問いへの答えが少し変わってくるはずです。


下山はどうする?大砂走りルートと富士宮口へ戻るルートの違い

プリンスルートを計画するとき、登り以上に注意したいのが下山方法です。

本来知られているプリンスルートでは、富士宮口五合目から登り始め、宝永山を経て御殿場ルートへ合流し、登頂後は御殿場ルートを下って御殿場口新五合目へ抜けます。

その最大の見どころが大砂走りです。

御殿場ルートでは七合目付近から御殿場口方面へ、火山灰や砂礫に覆われた長大な下山道が続きます。

約7kmに及ぶとされる火山灰地帯で、柔らかな状態なら通常の登山道より大きな歩幅で下れるのが特徴です。

天候が良ければ宝永火口だけでなく、箱根方面や駿河湾などを望めることもあります。

※画像はAIによるイメージ

しかし、大砂走りは単純な「楽しい下り」ではありません。

下り始めには岩が露出しているところがあり、砂が締まって硬くなっている日は滑りやすくなります。

長時間歩いて疲労した状態で一気に下ると、転倒につながることもあります。

砂ぼこり対策としてゲイターや口元を覆える装備を用意しておくと便利です。

一方、ヤマトリップが紹介しているアレンジでは、大砂走りで御殿場口まで下り切らず、富士宮口五合目へ戻ります。

理由として挙げられているのが、登山終盤に長い大砂走りを歩く負担です。

登山経験の浅い参加者にとって、疲れが最大になる後半の長い下山は決して軽いものではありません。

こちらのアレンジでは総歩行距離約14.5kmとされ、登りと下りの発着地点が同じ富士宮口になるため、交通計画も立てやすくなります。

対して一般的なプリンスルートは登山口と下山口が異なります。

自家用車の場合、下山地点となる御殿場口五合目側へ車を置き、公共交通やシャトルバスなどを組み合わせて富士宮口へ移動する方法など、事前の計画が必要です。

富士宮口では夏山期間にマイカー規制が行われるため、車で自由に五合目まで上がれるわけではありません。

紹介された情報では、御殿場口新五合目にはマイカー規制がなく、富士宮口側では水ヶ塚公園などを利用してシャトルバスへ乗り換える方法が案内されています。

こうした交通・規制は年度によって変更される可能性があるため、登山する年の富士山オフィシャルサイトで必ず最新情報を確認してください。


2026年のプリンスルート登山で知っておきたい入山料と山小屋

2026年に静岡県側から富士山へ登る場合、入山手続きも準備の一部です。

元資料では、富士宮・御殿場・須走など静岡県側のルートについて、入山料は1人4,000円と案内されています。

静岡県側では専用アプリ「静岡県FUJI NAVI」を利用した事前登録の仕組みが導入されています。

登山日や氏名などを登録し、入山料を決済、安全登山に関する動画の視聴や必要な手続きを済ませると、入山証となるQRコードが発行される仕組みです。

現地で手続きを行えるケースも案内されていますが、制度は変更される可能性があります。登山前にはその年度の富士山オフィシャルサイトや静岡県の案内を確認することが欠かせません。

宿泊場所としてよく利用されるのが、御殿場ルート七合目付近の山小屋です。

代表的なのは、わらじ館、砂走館、赤岩八合館です。

砂走館は七合五勺、標高約3,090mに位置します。

赤岩八合館は七合九勺、標高約3,300mにあり、現天皇陛下が皇太子時代に宿泊された山小屋としても紹介されています。

赤岩八合館周辺では、条件がそろうと夕方に「影富士」を見ることがあります。

太陽が傾くにつれて富士山の巨大な影が地上へ伸びていく光景です。

僕はこの時間帯の富士山に、山頂の御来光とは別の価値があると思っています。

御来光が「これから始まる光」なら、影富士は「一日を閉じていく富士」です。

山の時間は、頂上だけに流れているのではありません。

なお、山小屋の営業期間、宿泊方法、食事、トイレ利用料などは年によって変わる可能性があります。予約前と出発直前の両方で最新情報を確認してください。


プリンスルート攻略で大切なのは「速さ」より体力配分

プリンスルートを安全に歩くうえで、僕が最も重要だと考えるのは、歩く速度ではなく最後まで余力を残すペース配分です。

富士宮口五合目は標高約2,400mあります。

平地から一気に移動した人の体にとって、登山開始地点の時点ですでに高所です。

到着してすぐ勢いよく登り始めるより、五合目で準備をしながら高度に体を慣らし、最初の六合目まで意識してゆっくり歩くほうが、その後につながります。

プリンスルートでは宝永火口を通過したあと、砂礫の斜面を越えて御殿場ルートへ入ります。

ここで体力を使い切ると、標高3,000mを超えてから苦しくなります。

富士山を初めて目指す人なら、本番前に標高差300m程度の山から練習を始め、徐々に長い登山へ慣れておく方法が現実的です。

紹介されている登山ガイドも、最終的に標高差1,000m程度の日帰り登山をこなせる体力を一つの準備目安として挙げています。

装備では、滑りにくい登山靴、上下セパレート型のレインウェア、防寒着、ヘッドライトなどが基本になります。

夏でも富士山頂付近は朝方に5℃前後まで冷え込むことがあります。

麓で真夏でも、山頂では冬に近い寒さになる。

この温度差を知らずに登ると、御来光を待つ時間が非常につらくなります。

とくにプリンスルートで山頂御来光を狙う場合、山小屋を深夜に出発する行程になりやすいため、ヘッドライトと防寒対策は欠かせません。

また、下山時こそ油断しないことです。

山頂に立つと、人は心理的に「終わった」と感じます。

しかし登山は五合目へ戻るまで続いています。

疲労した脚で大砂走りや砂礫斜面を下る時間こそ、転倒を防ぐために集中したい場面です。


神楽岳志が考えるプリンスルートの本当の価値

ここからは、富士山を長く見続けてきた僕自身の考えです。

プリンスルートが注目される理由として、「混雑が少ない」「宝永火口が見られる」「富士宮口から登れて効率がいい」といった利点は確かにあります。

しかし、このルートの本当の価値は、富士山を見る視点が変わることにあると僕は思います。

多くの人が思い浮かべる富士山は、雪を頂いた左右対称の美しい山です。

新幹線の窓から見える富士。

湖面に映る逆さ富士。

朝日に染まる赤富士。

それらは確かに富士山です。

けれど、宝永火口へ入ると印象は変わります。

黒い砂礫、赤茶けた地層、強い風、巨大な火口壁。

そこには観光ポスターの富士とは別の顔があります。

1707年の宝永大噴火は、山の形そのものを変えました。

その痕跡の中を自分の足で歩き、そのまま日本最高地点3,776mを目指す。

この「噴火の記憶から山頂へ」という流れこそ、プリンスルートの物語です。

もう一つ、僕が重要だと思うのが、人の少なさです。

混雑が少ないことは歩きやすさにつながりますが、それ以上に、自分と山との距離が近くなります。

人の列についていくだけではなく、自分で標識を確認し、自分の呼吸を聞き、風向きを感じる。

登山という行為の原点に近い時間になります。

その反面、自分で判断しなければならない場面も増えます。

山小屋が少ない。

霧が出れば分岐が分かりにくい。

登りと下りの発着地点が異なる計画なら交通手段も考えなければならない。

だからこそ僕は、プリンスルートを「初心者には危険だから避けるべき」と一括りにはしませんが、初心者向けの最も手軽なルートとも評価しません

登山経験が浅いなら、経験者やガイドと歩く。

単独で計画するなら、地図、天候、装備、山小屋、交通、下山方法まで事前に把握する。

そうした準備ができて初めて、このルートの魅力を存分に味わえます。

そしてもう一つ、今後プリンスルートの人気が高まれば、「空いているルート」という現在の特徴も変わる可能性があります。

吉田ルートへの登山者集中が問題になるほど、別ルートへ関心が移るのは自然な流れです。

その意味でも、プリンスルートは単なる穴場ではなく、富士山登山の混雑分散という視点でも注目される存在になると考えられます。

ただし登山者が増えれば、宝永山周辺の自然環境への負荷や、道迷い、軽装登山など別の課題も増えるでしょう。

静かな道を静かなまま次の世代へ残せるか。

登山者一人ひとりの歩き方も問われています。


まとめ|富士山プリンスルートは「火山としての富士」を歩く道

富士山のプリンスルートは、富士宮口五合目から宝永火口を経由し、御殿場ルートへ合流して山頂を目指す変化に富んだコースです。

2008年、現在の天皇陛下が皇太子時代に富士山へ登られたルートとして知られ、「プリンスルート」の名が広まりました。

最大の魅力は、1707年の宝永大噴火が生んだ巨大な宝永火口を間近に歩けることと、比較的登山者の少ない御殿場ルートを利用できることです。

一方で、宝永山周辺には分岐があり、山小屋やトイレの少ない区間もあります。砂礫の登りや3,000mを超える高所への対応も必要なため、十分な装備と体力、ルート把握が欠かせません。

また、一般的なプリンスルートは大砂走りを経て御殿場口へ下山しますが、富士宮口へ戻るアレンジコースもあります。

登山口と下山口が同じなのか、それとも異なるのか。

この違いは歩行距離だけでなく、駐車場やバスなどの交通計画にも直結します。申し込みや登山計画の段階で必ず確認しておきましょう。

吉田ルートですでに富士山へ登った経験があり、二度目はもっと火山地形を感じたい人には、とても魅力的な選択肢です。

山頂だけを目指して歩いていると、富士山は「3,776m」という数字になります。

けれど宝永火口を越え、砂礫の斜面に自分の足跡を残し、振り返ったとき、富士山は数字ではなく物語になります。

僕にとってプリンスルートとは、山頂への近道ではありません。

美しい富士の内側に残された、火の記憶をたどる道です。


よくある質問

富士山のプリンスルートは初心者でも登れますか?

登山道そのものに高度なクライミング技術は必要ありませんが、完全な初心者には簡単とは言えません。

宝永山周辺の分岐、砂礫の登り、山小屋が少ない区間、標高3,000m以上での行動があるため、事前の練習登山と装備準備が重要です。経験が少ない場合はガイドや経験者との登山が安心です。

プリンスルートでは必ず大砂走りを通りますか?

必ずではありません。

一般的なプリンスルートは山頂から御殿場ルートを下り、大砂走りを経て御殿場口新五合目へ下山しますが、ツアーによっては富士宮口五合目へ戻るアレンジもあります。予約時や登山計画時に下山口を必ず確認してください。

プリンスルートと富士宮ルートの一番大きな違いは何ですか?

富士宮口五合目から出発する点は同じですが、富士宮ルートが基本的にそのまま山頂方向へ登るのに対し、プリンスルートは六合目付近から宝永火口方面へ進み、御殿場ルートへ合流します。

そのため、プリンスルートでは宝永火口の火山景観と、比較的静かな御殿場ルートの両方を楽しめるのが大きな違いです。

筆者:神楽 岳志(登山エッセイスト|富士山研究家|自然体験ストーリーテラー)

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